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白と黒の特異点〜互いの家族を殺した2人が出会うまで〜  作者: 福岡へむ
第五章 革命の光
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55 譲れない物(白)

「それは本当ですか!?」


「あぁ、副団長と2人で話し合って決定した。明日、我々『革命派』は帝国の東軍を攻める!」


 後日、約束の時間にヒューラの元へ来たヴァルスはその決定に驚愕していた。


「先日の話では、リスクとリターンが釣り合ってないから今回は見送ると…」


「状況が変わったのよ、どうやら極道たちが東軍を攻めるらしい。革命派(俺たち)もそれに便乗して東軍を攻める事にした。」


「極道が東軍を!?それに革命派まで動くんですね…」


「ねぇ、それはちょっと卑怯なんじゃない?極道だけでも手一杯なのに…」


 リシェルは少し焦ったような表情でそう言った。


「卑怯もクソもあるか、俺たちがやってるのは戦争なんだぜ、アンドレの娘っ子。」


 イズカンは少し煽るようにリシェルに答えた。


「何よ、高尚な目標を掲げてもやる事は結局帝国と大差ないじゃない。正々堂々と戦いなさいよ。」


 それを聞いたナルキも腕を組みながら話す。


「嬢ちゃん、それはちょっと暴論だな。言いたい事は分かるが、戦争ってのはそんなモンだ。」


「それは分かってるけど…」


 リシェルは何も言えなくなってしまった。それを見たヒューラが優しく肩を触りながら話す。


「リシェル、お前は東軍にいる友人たちが心配なんだろう?だが我々が狙うのは一般兵士たちではなく、来訪している皇帝の側近だ。極道たちとは連携を取れない故に、お前の友人の安全は保証できないが、お前が何とか説得するんだ。我々の仲間になるのであれば、全員無事に保護すると約束しよう。」


「ホントに!?…分かったわ。明日、何とか皆んなを説得してみる。」


「ああ…では、作戦を伝えるぞ。先ほども言った通り、今回の我々の目的は皇帝の側近及び東軍の将軍を暗殺する事。極道の襲撃に便乗して少数精鋭で東軍に乗り込み、対象の2人を暗殺する。当日、私たち3人を含めた革命派の精鋭10人が敷地の周辺で待機しておく。ヴァルスとリシェルは我々に襲撃のタイミングを知らせる事。タイミングは極道が敷地内に入った瞬間だ。2人はその後、可能なら対象の場所を我々に伝達しつつ戦線から離脱し裏口で我々と合流せよ。」


「了解しました。当日はどうなるか分かりませんが、何とか対象の動向を把握してみせます。」


「私もやるわよ、柏木組の極道とは少し面識があるわ。もしかしたら連携を取れるかもしれないしね。」


「よし!では2人とも任せたぞ。」


 そうしてヴァルスとリシェルは会合場所を出た。



「いよいよだな、リシェル。」


「そうね、私は殆ど何も知らないけど貴方とお姉様を信頼するわ。」


「…皆んなを説得出来るといいな。」


「やって見せるわ、そうじゃなきゃ皆んな死んじゃうかもしれないし…」


「俺も皆んなに死んで欲しくない。俺も手伝うよ。」


「ありがとう、でも大丈夫。私1人でやるわ。」


「どうしてだ?」


「貴方はそんな心配をする程の余裕が無いって言ってるの。貴方はこの世界の戦争を終わらせるんでしょ?なら小さな事に構ってる暇なんか無いわ、時には仲間を切り捨てる無情さも必要よ。もちろん、私の事もね。とにかく貴方は自分のやるべき事だけを全力でやりなさい、細かい事は私が頑張るから。」


「…分かった。皆んなの事はお前に任せる。」


「ええ、任せて。」


 そう言ってリシェルはヴァルスに拳を突き出した。


「男ってこう言うのが好きなんでしょ?」


「ふっ、そうだな。ああ、2人で絶対やりきるぞ。」


 ヴァルスもそれに応えて拳を合わせた。



ーー襲撃当日ーー


「おいおい、こんな所まで連れて来て、何がしたいんだヴァルス、リシェル。」


「そうだよー、そんなに神妙な顔してー。あっ、もしかして私と逢瀬を…」


「そんなワケないでしょう。リシェル、朝から何か言いたげでしたが何かありましたか?」


「俺にもティーチしてくれ。」


 集められた4人はリシェルとヴァルスに詰め寄る。


「ふぅ…今から言うことは他言しないと約束して欲しいんです、皆さんの事を信じて。」


 リシェルは真剣な表情でそう告げた。4人もそれを受けて真剣に聞く姿勢を取る。


「柄にもない顔だな、いいぜ言ってみ。」


「では話します。今日、おそらく極道がここに攻めてきます。目的は東軍の壊滅、アチラは相当な戦力を揃えてきていると聞きました。」


 それを聞いた4人は驚愕する。


「そりゃマジか!?」


「オーマイガー!」


「うーへー…しんどー。」


「リシェル、それは一体どこで手に入れた情報なのですか!?」


「実は…私とヴァルスは最近『革命派』と接触しました。そこで『革命派』の幹部の方から聞きました。間違いない情報だと。」


「『革命派』ですって!?リシェル、ヴァルスくん、いつの間に彼らと…」


「黙っていてすみません、革命派(彼ら)の思想は俺とリミ姉の思想と近しいモノがありました。他にもいくつか理由がありますが、俺は彼らに協力することを約束しました。」


「私もです、だから皆さんにも仲間になって欲しいんです!」


 それを聞いたモルモンは神妙な顔で話し始める。


「…前にも言いましたね、『革命派』は敵であり悪です。彼らのせいでどれだけの帝国臣民が犠牲になっているか想像も付きません。思想は立派でも、結局はただの反逆者です。私は生まれてからこれまで、この国で生き続けて来ました。帝国の侵略が悪である事も分かっています。ですが…私はこの国を裏切れません。」


「悪いが俺もだ。ソーリーだなリシェルガール。」


「珍しく意見が一致したな。俺も世話になったこの国をそう簡単に裏切る事は出来ねぇ。」


「私は戦争とか正直どうでも良くてぇー、今が楽しければそれでいいのー。」


 4人からの当然の反応にリシェルも食い下がる。


「そんな悠長な事言ってられないんです!極道たちに攻められたらここはメチャクチャになります!!皆さんだってもしかしたら…」


「俺たちが死ぬってか。…はっ、それがどうした?俺たちは軍人だ、入ったばっかのお前らには分からんだろうが、先達から受け取ってきた想いと国を背負ってるっていうプライドがある。死ぬのが怖くて軍人なんかやってられるか、ここで逃げたら男じゃねぇよ。」


「ダッツライトだ。エスケイプするくらいなら最期までダーティに足掻くさ。」


「それこそが私たちの誇りであり、忠義なんです。リシェルが私たちを心配してくれているのはよく分かりました。本当にありがとう、でも私たちは其方へは行けません。」


「姉さん…何でよ!?皆んな戦争が憎いんじゃないの!?リミエルって人もそれを望んでたんでしょ?軍人なんかじゃ戦争は止められない!だから!」


 涙を流して訴えるリシェルをヴァルスが止めた。


「リシェル、もういい…俺たちは皆さんのことを侮っていた。俺たちにも譲れない物があるように、皆さんにも譲れない物がある。考えてみれば当たり前の事だったんだ。…皆さん、変なことを言ってすみませんでした。」


 ヴァルスはその場で頭を下げた。



「あっ、私は別にプライドとか無いからやっぱり『革命派』入ってもいいかもー。」


 ンレナは雰囲気をぶち壊してそう告げた。


「ンレナさん、少しは空気読んでください。殴りますよ?」


「だってぇー、ここは極道に攻められちゃうんでしょー?そしたら私も死んじゃうかもしれないしー、生きてたとしてもこれから復旧が大変なワケじゃーん。それなら辞めてもいいかなーって。」


「何言ってんだ副隊長、『革命派』なんか入っちまったら一生国から追われる身だぞ。それでもいいのか?」


「うーん、でも実際に捕まってる革命派の構成員って殆どいないんだよねー。情報管理してる人が相当優秀なんだろうねー。そんな組織なら私が捕まる事もないかなーって。」


「流石は我らのサブリーダーだ!リーダーと同じくクレイジーである!」


「いやぁそれほどでもー、それじゃあ私だけでも一緒に逃げて…」



キィイイイイイン!!



 その瞬間、基地全体に爆音の警報が鳴り響いた。


「おいおい、マジか。」


「これは敵襲の警告音!」


「うわぁ…タイミング悪ぅ…」


 人間を不快にするその警報は鳴り続けている。


「ほら、言ったでしょう!今ならまだ間に合います!私と一緒に裏口から脱出を…」


 しかし4人はリシェルについて行こうとしない。


「くどいぞリシェル、俺はここで戦う。例えお前らが逃げようとな。」


「私もです。リシェルとヴァルスくんは逃げてください。貴方たちはリミエル隊長の夢を追いかけなさい。私たちとはここでお別れです。」


「もうここまで攻め込まれてたら、私も逃げられないよねー。仕方ないから頑張ろうかなー。」


「レッツゴー。」


「皆んな!待って…」


 リシェルの最後の頼みを受け入れることなく4人はヴァルスとリシェルを残して部屋を出て行った。

 残されたリシェルはその場にへたり込む。


「…皆んな…私は…」


「リシェル、お前は良くやったよ。皆さんの力を信じよう。皆さんは強いから簡単に死んだりしない。だから、俺たちは俺たちのやる事をやりぬくぞ。」


 ヴァルスはリシェルの肩を掴んだ。


「…うん。行きましょう、お姉様にも連絡しないと。」


 警報が鳴り響く中、ヴァルスとリシェルは2人で動き出した。



ーー第二軍基地のとある部屋ーー


「敵襲だと!?一体誰です?」


「…はい、極道どもですね。ヤツら、こんなところにまで攻めてくるとは…」


 豪華な会議室に腰掛ける2人は、宰相と東軍の将軍である。宰相の後ろにはバルガムが控え、扉にはマレンが立つ。そして近くの椅子に座って、明後日の方を見ているのがレムナだ。


「チッ、やはり先手を打ってきましたか。陛下のあの宣言によって、大陸中の国々からのヘイトは一気に帝国へ向いた。これから防衛を強化していくつもりでしたが…少しヤツらを甘く見ていましたね。」


「宰相閣下、ここは危険です。今すぐにここから避難してください。敵の狙いは貴方やもしれません。」


「そうですね…東軍(ここ)にもスパイはある程度紛れ込んでいるでしょうからね。私がいる事がバレているかもしれません。この件が片付いたら、陛下に頼んで全軍から確実に消してもらいましょうかね。」


「では、お早くお逃げを。護衛の皆さんもついてきて下さい。」


 将軍は立ち上がって扉へ近寄った。


「そうですね、西側ならば敵はまだいないはず。さっさと脱出しましょうか。…レムナ殿、ついてきてくださいますか?」


「…うん。分かった。」


 レムナは意味ありげに返事をし、立ち上がった。そうして部屋を出た5人は脱出する為に裏口へ向かった。


 元いた建物を離れて少し歩いたあと、レムナは急に足を止める。


「レムナ殿、どうしましたか?」


「……ここからはただ脱出するだけ…3人もいるし、私は不要だと思う。だから…ごめん。私は強い人と闘いたい。」


 そう言ってレムナは不器用に頭を下げてから、4人を置いて逆方向に走って行ってしまった。


「レムナ様ぁ!!お待ちを!!…って、もう行ってしまった…宰相閣下、いかがしましょうか?」


「連れ戻したいところですが、確かに彼女の言う通り後は脱出するだけです。我々だけで十分でしょう。それに彼女は『十傑』であり、私の指揮下には無い。彼女の行動を制限する事は出来ません。このまま行きますよ。」


 レムナが抜けた4人は予定通り裏口へ向かって歩き始めた。しかし、彼らは知らなかった。極道の襲撃に紛れて『革命派』が攻めてきている事に。

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