『五年後の鉛筆』第2回 ✲城を持たない大名 ――歯は、六十七年間消えなかった僕の信用ログだった――
✦『五年後の鉛筆』第2回
✲ 城を持たない大名
――歯は、
六十七年間消えなかった
僕の信用ログだった――
………
若い頃、
僕の言葉は、
いつもこう止められた。
「まだ早い」
六十七歳になった今、
僕の挑戦は、
今度はこう笑われる。
「もう遅い」
では人生には、
いつなら始めていい時間が
あったのだろう。
僕はその答えを、
投資の本にも、
成功者の名言にも、
AIの画面にも探した。
けれど、
いちばん静かに答えていたのは、
毎朝、
僕の口の中で
働き続けていた
二十八本の歯だった。
一本も抜けていない。
それは、
僕が偉かったからではない。
ただ、
噛めた。
しゃべれた。
笑えた。
歌えた。
人の前で、
まだ口を開けることができた。
六十七歳の僕は、
城を持っていない。
領地もない。
家臣もいない。
金の蔵もない。
あるのは、
スマホと、
歯ブラシと、
少し短くなった鉛筆と、
一本も抜けていない歯だけだった。
でも、今なら分かる。
歯は、
ただ食べるための道具ではない。
人に近づくため。
自分の言葉を渡すため。
まだ終わっていない人生を、
もう一度噛みしめるため。
歯は、
白い骨ではなかった。
歯は、
人生の信用残高だった。
………
★目次
■第一章
城を持たない大名
■第二章
日本人は目を見る。
欧米人は歯を見る。
■第三章
歯は美容ではない。
会話資本である。
■第四章
まだ早いと言われた僕の口
■第五章
まだ発電している人間は、
終わっていない
■第六章
Xは言った。
「笑顔はキャリアのOSだ」
❥Z世代のあなたへ
★あとがき
ホームズとワトソンの
やすきよ漫才風
………
★本文
■第一章
城を持たない大名
六十七歳の僕は、
城を持っていない。
昔の大名なら、
城があった。
石垣があった。
堀があった。
家臣がいた。
米蔵があった。
領地があった。
でも僕には、
そんなものはない。
定年後の通帳。
少し古くなったスマホ。
チョコザップの記録。
カラオケの履歴。
AIとの会話。
そして、
洗面台に置かれた歯ブラシ。
これが僕の城だった。
笑う人もいるだろう。
「歯ブラシが城か」
そう思うかもしれない。
でも六十七歳になると分かる。
本当に大切な城は、
外側にはない。
毎朝起きる体。
食べられる歯。
しゃべれる口。
歩ける脚。
考え直せる頭。
そして、
今日も何かを始めようとする心。
それらが残っていれば、
人間はまだ負けていない。
僕は大名ではない。
だが、
城を持たない大名なら、
まだ名乗れるかもしれない。
土地ではなく、
信用を貯める。
金の蔵ではなく、
行動ログを貯める。
家臣ではなく、
習慣を味方にする。
その第一歩が、
歯磨きだった。
■第二章
日本人は目を見る。
欧米人は歯を見る。
日本人は、
人と話す時、
相手の目を見る。
目が泳いでいないか。
嘘をついていないか。
誠実そうか。
怒っていないか。
僕もそうだった。
証券会社にいた頃、
客の目を見た。
迷っている目。
欲で光る目。
損を恐れる目。
まだ買いたいのに、
家族の顔が浮かんで止まる目。
目は、
相場より早く動く。
そう思っていた。
ところが、
海外のビジネス文化を
知る人は言った。
「欧米では、歯も見られる」
歯。
僕は少し驚いた。
歯など、
虫歯がなければいい。
痛くなければいい。
朝晩磨けばいい。
そう思っていた。
でも、
海外では違うらしい。
白いか。
整っているか。
口臭はないか。
笑った時に
清潔感があるか。
自分の体を
管理している人間か。
歯は、
ただの歯ではなかった。
相手の目を見る日本。
相手の歯を見る欧米。
どちらが
正しいという話ではない。
ただ、
人間は近づくほど、
口元から逃げられない。
商談も、
面接も、
恋愛も、
介護も、
会話も、
最後は、
口から出る。
言葉も。
匂いも。
信用も。
■第三章
歯は美容ではない。
会話資本である。
若い頃の僕は、
歯を美容だと思っていた。
芸能人の白い歯。
モデルの歯並び。
ホワイトニング。
笑顔の広告。
自分には
関係ないと思っていた。
僕は
証券会社の人間だった。
必要なのは、
相場を読む力。
数字を説明する力。
営業力。
ノルマ達成 推進力。
客の不安を受け止める力。
歯など、
おまけだと思っていた。
でも六十七歳になって、
考えが変わった。
歯は、
会話資本である。
食べるためだけではない。
話すため。
笑うため。
歌うため。
説得するため。
謝るため。
励ますため。
若者に何かを渡すため。
歯があるから、
僕はまだしゃべれる。
歯があるから、
僕はまだ歌える。
歯があるから、
僕はまだ人前で笑える。
一本も抜けていないと
いうことは、
僕の人生に、
まだ会話の道が
残っているということだった。
Xに、
こんな短い投稿があった。
《笑顔は飾りではない。
それはアクセス権だ》
僕はその言葉に、
少し胸を突かれた。
歯は、
人生のログイン画面なのかも
しれない。
■第四章
まだ早いと言われた僕の口
若い頃、
僕は何かを言おうとするたびに、
止められた。
「まだ早い」
相場について意見を言えば、
先輩は笑った。
「お前にはまだ早い。
まずは黙って数字を拾え」
客への提案を変えたいと言えば、
上司は言った。
「経験を積んでからにしろ。
若い時の正義感は、
だいたい客に迷惑をかける」
その頃の僕は、
早すぎた。
そして
六十七歳になった僕は、
今度は遅すぎる人間になった。
小説を書きたいと言えば、
知人は言った。
「じいさんが小説?
誰が読むの?」
英語を学びたいと言えば、
別の知人は笑った。
「今さら英語?
田舎に戻ったんでしょ?
外国人と話す予定あるの?」
AIを使って
小説を書くと言えば、
もっと分かりやすく笑われた。
「それ、
若い人がやるやつでしょ」
Xを読んで
世界経済を考えていると言えば、
こう言われた。
「陰謀論のおじいちゃんに
ならんようにね(笑)」
悪気はない。
たぶん、
本当に悪気はない。
でも、
その軽い笑いの中には、
こういう文字が透けて見えた。
――その年で、
まだ何者かに
なろうとしてるの?
――もう人生の結果は
出たでしょ?
――今さら鉛筆を持って、
どこへ答案を
書き直しに行くの?
僕は笑い返した。
「まあ、そうじゃな」
そう言いながら、
胸の奥では、
何かが小さく鳴っていた。
カチッ。
短くなった鉛筆の芯が、
まだ折れていない音だった。
僕の口は、
若い頃からずっと、
誰かの言葉で閉じられてきた。
言うな。
待て。
黙れ。
順番を守れ。
空気を読め。
余計なことを言うな。
もっと経験を積めば、
いつか言ってもいい日が来る。
そう思って待った。
けれど、
その日は来なかった。
若い頃は、
まだ早い。
年を取れば、
もう遅い。
その二つの言葉の間で、
僕が
自由に話してよかった時間は、
いつの間にか消えていた。
ある夜、
NHKのラジオ深夜便で、
田嶋陽子さんの声を聞いた。
正直に言えば、
僕は彼女が苦手だった。
テレビで見れば、
きついことを言う。
戦争反対だ。
女性の権利だ。
男社会がおかしい。
また始まった。
そう思っていた。
けれどその夜、
ラジオから聞こえてきたのは、
テレビの中の強い人ではなかった。
子どもの頃から、
母親の期待を背負わされ、
勉強しろ。
ちゃんとしろ。
女はこうあれ。
でしゃばるな。
そう言われ続けた、
一人の人間の声だった。
彼女は言った。
自由が欲しかった。
その一言で、
僕は黙った。
ああ、
この人も、
口を閉じられてきた人
だったのか。
僕は田嶋陽子さんを、
少し見直した。
いや、
見直したというより、
自分の中にあった冷笑を、
少し恥じた。
僕も同じだったからだ。
僕も、
言いたいことを笑われるのが
怖かった。
父親に否定されるのが
怖かった。
会社で若造扱いされるのが
怖かった。
年を取ってからは、
じいさんが何を今さら、
と言われるのが
嫌だった。
だから、自分より先に
叫んでいる人を見て、
うるさい人だと決めつけていた。
本当は、
うらやましかったのかも
しれない。
言える人が。
叩かれても、
避けられても、
笑われても、
それでも口を開ける人が。
人は、
大勢に好かれるために
言葉を持つのではない。
たった一人でも、
「それ、
私も言いたかった」
と言ってくれる人へ届くために、
言葉を持つのかもしれない。
田嶋さんにとって、
それがフェミニズムだったのなら、
僕にとっては、六十七歳からの
小説なのかもしれない。
フェミニストとは、
女だけの名前ではない。
「黙れ」と
言われてきた人が、
自分の声を取り戻そうとする
姿勢のことかもしれない。
ならば僕も、
少しだけ、
その仲間なのかもしれない。
僕は洗面台の鏡を見た。
まだ歯はある。
まだ口は開く。
まだ、
自分の言葉で
世界に噛みつける。
そしてたぶん、
どこかに一人くらいはいる。
僕の小説を読んで、
「じいさん、
それ、分かるよ」
と、
小さくうなずいてくれる人が。
■第五章
まだ発電している人間は、
終わっていない
六十七歳になって、
僕はAIで小説を書き始めた。
同時に 英語の勉強も
もう一度始めた。
小学生の基礎英語
中学生の基礎英語
英会話 トラベル…
もう3年になるね。
Xで世界経済を読み、
カラオケで七十年代の洋楽を
英語で歌う練習まで始めた。
すると、
まわりの反応は分かりやすかった。
「今さら?」
「もう覚えられんじゃろ」
「無理ゲー…」
長女にカラオケの話をすると、
笑われた。
「何、その踊り…」
「乃木坂46?
バカじゃない?」
「今度は
郷ひろみでも歌ったら?」
たしかに、
笑われているのだろう。
六十七歳のじいさんが、
スマホを片手にAIと相談し、
Xの投稿を読み、
英語の歌詞まで追いかけて、
鏡の前で舌を動かしている。
若者から見れば、
古い機械が急に
アップデートを始めたように
見えるのかもしれない。
でも、
僕は思った。
古い機械でも、
まだ電気が流れているなら、
捨てるには早い。
人間も、
同じではないか。
人は、
ただ歳を取る生き物ではない。
毎日、
何かを発電している。
怒りの電気。
不安の電気。
やさしさの電気。
嫉妬の電気。
希望の電気。
人を傷つける電波。
人を少し楽にする周波数。
人間は、
歩く発電機なのかもしれない。
朝起きて、
誰かに不機嫌をぶつける人は、
不機嫌の電波を出している。
人の挑戦を笑う人は、
冷笑の電気を流している。
「無理、無理」
「今さら遅いわ」
「歳取ったね」
「もう引退しなよ」
そういう言葉も、
小さな電波になる。
その電波を浴びた人は、
少しずつ
自分のスイッチを切っていく。
僕も、
何度も切られかけた。
けれど、
完全には止まっていなかった。
カチッ。
短くなった鉛筆の芯が、
まだ折れていない音。
それは、
僕の中で、
小さな発電機が
まだ回っている音だった。
イーロン・マスクなら、
たぶんこう考える。
年齢を見るな。
出力を見ろ。
肩書きを見るな。
まだ何を生み出せるかを
見ろ。
過去を見るな。
今も電気が流れているかを
見ろ。
僕の体は、
新品ではない。
白髪はある。
しわもある。
目も少し垂れている。
膝も昔ほど軽くない。
けれど、
口はまだ動く。
歯は一本も抜けていない。
舌はまだ歌詞を追える。
喉はまだ震える。
耳はまだ音楽を拾う。
指はまだスマホを動かす。
脳はまだ、
知らない言葉に反応する。
なら、
このシステムは
まだ終了していない。
六十七歳の僕は、
もう出世競争で勝つための
発電機ではない。
誰かを論破するための
送信機でもない。
若い世代に、
自分の失敗ログを渡すための
小さな発電所だ。
人間は、
新品である必要はない。
まだ発電している場所を見つけて、
そこからもう一度、
自分の周波数を出せばいい。
僕に残っていた発電所は、
歯だった。
口だった。
声だった。
短くなった鉛筆だった。
そして、
まだ何かを書きたいという
小さな電流だった。
僕は歯ブラシを持った。
これは、
歯を磨く道具であり、
自分の中に
まだ電気が流れているかを
確かめるセンサーでもあった。
まだ噛める。
まだ歌える。
まだ笑える。
まだ、
自分の言葉で
世界に噛みつける。
なら、
遅くない。
人生は、
年齢で終わるんじゃない。
自分の中の発電機を、
もう動かないと決めつけた時に、
本当に終わるのだ。
その夜、
僕は七十年代の洋楽を流し、
英語の歌詞を追いながら、
たどたどしく口を開いた。
発音は下手だった。
音程も揺れた。
でも、
僕の中の小さな発電機は、
確かに回り始めていた。
ブーン。
それは、
誰にも聞こえないくらい
小さな音だった。
けれど、
僕には分かった。
六十七歳の僕は、
まだ止まっていない。
■第六章
Xは言った。
「笑顔はキャリアのOSだ」
ある朝、
僕はXで
「teeth career smile」
と検索した。
世界中の投稿が流れてきた。
《笑顔は、最初の握手だ》
《健康な口は、
話す前に自信をくれる》
《歯は虚栄ではない。
自尊心である》
もちろん、
Xは大げさだ。
広告もある。
美容商売もある。
不安をあおる投稿もある。
変な投資話もある。
怒りだけを燃料にした
投稿もある。
でも、
全部がゴミではない。
その奥には、
一つの本音がある。
人は、
近くで話す相手の
口元を見る。
歯が白いから成功する、
などという単純な話ではない。
でも、
口元には、
日々の習慣が出る。
寝る前に
何をしたか。
自分の体を
どう扱ってきたか。
人と近づく
準備をしているか。
歯は、
毎日の小さな選択の
記録だった。
僕は思った。
Xの投稿は、
ただ眺めるものではない。
拾う。
並べる。
疑う。
AIに聞く。
自分の人生に戻す。
そうすると、
ニュースではなく、
トレンドが見えてくる。
歯の投稿を集めると、
美容の話に見えたものが、
信用の話に変わる。
笑顔の投稿を集めると、
好感度の話に見えたものが、
キャリアの話に変わる。
口臭の投稿を集めると、
マナーの話に見えたものが、
健康と生活ログの話に変わる。
つまり、
Xはゴミ箱ではない。
ゴミも多い。
でも、
未来の破片も混じっている。
大事なのは、
そのまま信じることではない。
拾って、
比べて、
AIに整理させて、
自分の生活に戻すことだ。
気になる言葉を一つ検索する。
歯。
笑顔。
信用。
AI。
仕事。
英語。
健康。
節電。
物流。
口臭。
流れてきた投稿を、
そのまま怒ったり信じたりせず、
一度並べてみる。
同じ方向を向いた言葉が、
何度も出てきたら、
それは新しいトレンドの
芽かもしれない。
僕はそこで、
岡田斗司夫さんが語る
評価経済の話を思い出した。
これからの時代は、
お金だけではなく、
信用が見られる。
支払い。
行動。
人間関係。
購買履歴。
発信。
マナー。
約束を守る力。
そういうものが、
知らないうちに
スコアボードとして
積み上がっていく。
五年後の日本でも、
それに近い世界が
静かに広がるかもしれない。
怖い話だ。
でも、
見方を変えれば、
こちらから
仕掛けることもできる。
どうせ記録されるなら、
自分から良いログを
残せばいい。
歯を磨く。
約束を守る。
学び直す。
発信する。
人を傷つけない。
小さな善意を見える形にする。
できないことは、
できないと言う。
分からないことは、
AIに聞いて調べる。
最初は、
少し偽善でもいい。
人の目を気にして、
マナーを守る。
評価を気にして、
嘘を減らす。
信用を意識して、
約束を守る。
その繰り返しが、
本物の習慣になることもある。
歯磨きも同じだ。
最初は、
口臭が怖いから
磨く。
人に嫌われたくないから
磨く。
歯医者に怒られたくないから
磨く。
それでも続けていれば、
いつかそれは、
自分を大切にする
習慣に変わる。
偽善から始まっても、
善い習慣になれば、
それはもう人生の資産だ。
そして僕は今、
もう一つの実験をしている。
AIで小説を書くことによって、
新しいトレンドを
見つけられないか。
Xの投稿を拾う。
AIに聞く。
自分の体験に重ねる。
小説にする。
すると、
見えなかった線が
見えてくる。
歯の話から、
信用社会が見える。
口臭の話から、
健康産業が見える。
ナフサ不足の話から、
包装材や衛生用品の
未来が見える。
下水の話から、
出口インフラの
時代が見える。
町工場の話から、
作り直し経済が見える。
小説は、
ただの空想ではなかった。
未来の産業地図を、
人間の暮らしに翻訳する
道具だった。
成長株は、
数字だけから
生まれるのではない。
人間の困りごとから
生まれる。
不安から
生まれる。
不便から
生まれる。
誰も見たくない場所から
生まれる。
歯間。
下水。
冷凍庫。
修繕。
物流。
介護。
口臭。
電力。
水。
在庫。
そこを小説で掘ると、
次の社会に必要な会社が
少しだけ見えてくる。
もちろん、
株はそう簡単には当たらない。
けれど最近、
物語の奥に、
二倍株の匂いが
少しだけ混じるようになった。
その時、
僕は少し嬉しくなる。
金儲けだけではない。
でも、
きれいごとだけを並べて、
現実の暮らしが
少しも良くならないなら、
それはただの
能書きで終わってしまう。
二宮尊徳は、
道徳と経済を
別々のものとして
見なかったという。
人のために生きる心があり、
その心が田畑を耕し、
仕事を生み、
暮らしを支え、
やがてお金の流れにもなる。
道徳だけで貧しくなるなら、
続かない。
お金だけで人を失うなら、
残らない。
本物は、
人の役に立つことと、
経済が回ることが、
どこかでつながっている。
僕がAIで小説を書くのも、
そこを確かめたいからだった。
不安を
あおるためではない。
ただの評論家に
なるためでもない。
人間の困りごとを
見つける。
そこから新しい仕事を
見つける。
その仕事をする会社を
応援する。
株主として、
ほんの少しだけ
参加する。
もしそれができるなら、
小説は空想ではなくなる。
物語は、
未来の産業地図になる。
道徳を
語るだけで終わらず、
経済にもつなげる。
経済を
追いかけるだけで終わらず、
誰かの暮らしを少し楽にする。
その線が見えた時、
僕は少し嬉しくなる。
自分の小説が、
現実の経済と
ほんの少し
つながった気がするからだ。
僕はZ世代の君に、
そっと胸の内を明かす。
これは、
ただの趣味ではない。
ただの
老後の暇つぶしでもない。
僕は、
自分の人生を使って、
小さな実験をしている。
Xを読む。
AIに聞く。
小説にする。
生活に戻す。
投資の仮説にする。
また外れる。
また考える。
また書く。
その繰り返しで、
僕自身の信用ログも
少しずつ積み上がっていく。
真似しなくていい。
いや、
そのまま真似してはいけない。
株も、
人生も、
人の答えをコピペした瞬間に
弱くなる。
でも、
やり方は盗める。
気になる言葉を拾う。
AIに聞く。
自分の体験に重ねる。
物語にする。
そこから、
自分だけの未来地図を作る。
これなら、
君にもできる。
若くてもできる。
六十七歳でもできる。
歯を磨くこと。
言葉を磨くこと。
信用を磨くこと。
トレンドを読むこと。
小説を書くこと。
投資を考えること。
その全部は、
別々に見えて、
同じ場所につながっている。
笑顔は、
キャリアのOSだ。
でも、
そのOSは、一晩では
インストールできない。
毎日の小さな更新で、
少しずつ動くようになる。
僕のOSは、
六十七歳になってから、
ようやく
アップデートを始めた。
だから僕は今日も、
歯を磨く。
Xを開く。
AIに聞く。
僕だけの鉛筆を持つ。
そして、
まだ誰も気づいていない
小さなトレンドの芽を、
小説の中にそっと植える。
………
❥Z世代のあなたへ
君は、
まだ若い。
だから、
何でもできると
言われるかもしれない。
でも実際には、
若い君もきっと、
何度も止められている。
まだ早い。
経験がない。
失敗する。
空気を読め。
調子に乗るな。
そして、
少し年を取ったら、
今度はこう言われる。
もう遅い。
今さら無理。
若い人に任せろ。
僕は六十七歳になって、
やっと分かった。
人の許可を待っていたら、
人生の始め時は、
永遠に来ない。
だから、
小さく始めればいい。
歯を磨くように。
一行書くように。
一曲歌うように。
一つ調べるように。
大きな夢より、
小さな更新だ。
人間は、
新品でなくてもいい。
まだ発電している場所を見つけて、
そこからもう一度、
自分の周波数を出せばいい。
君の毎日は、
未来の信用ログになる。
誰かに見せるためではなく、
未来の自分が困らないために、
今日の自分を少しだけ整える。
それが、
城を持たない時代の
生き方だと思う。
歯を磨け。
言葉を磨け。
信用を磨け。
そして、
君だけの鉛筆を捨てるな。
………
★あとがき
ホームズとワトソンの
やすきよ漫才風
ホームズ:
ワトソン君、
今回の事件は深い。
ワトソン:
また始まりましたな。
今度は何ですか?
ホルムズ海峡ですか?
AIですか?
ナフサですか?
ホームズ:
犯人は、歯だ。
ワトソン:
歯?
スケール小さっ!
ホームズ:
甘いな、ワトソン君。
歯は小さいが、
人生の信用残高が
詰まっている。
ワトソン:
信用残高?
銀行より怖い言葉
出てきましたな。
ホームズ:
人は目を見る。
しかし近づけば、
口元から逃げられない。
ワトソン:
たしかに。
名言を言っても
口臭がすごかったら、
名言が避難しますわ。
ホームズ:
だから歯は、
美容ではない。
会話資本だ。
ワトソン:
また資本主義に
持っていくなあ。
ホームズ:
しかも今回の主人公は、
六十七歳で
歯が一本も抜けていない。
ワトソン:
それはすごい。
預金より大事かも
しれませんな。
ホームズ:
預金があっても、
噛めなければ
ステーキは遠い。
ワトソン:
急に食い意地!
ホームズ:
さらに彼はAIを使い、
Xを読み、
英語で七十年代の
洋楽を歌う。
ワトソン:
ちょっと待って。
じいさん、若返りすぎやろ。
ホームズ:
いや、若返ったのではない。
発電を再開したのだ。
ワトソン:
発電?
ホームズ:
人間は発電機だ。
怒りの電気を出す人もいる。
冷笑の電波を出す人もいる。
希望の周波数を出す人もいる。
ワトソン:
なるほど。
じゃあ主人公は?
ホームズ:
六十七歳から、
若者に向けて
小さな電気を出し始めた。
ワトソン:
ええ話やないですか。
ホームズ:
歯ブラシを持て。
鉛筆を持て。
スマホを持て。
AIに聞け。
そして
自分の言葉で噛みつけ。
ワトソン:
最後だけちょっと物騒やな。
ホームズ:
人生は年齢で終わらない。
自分の中の発電機を、
もう動かないと
決めつけた時に終わる。
ワトソン:
……今回は
泣かせに来ましたな。
ホームズ:
ただし、
歯石だけは早めに取れ。
ワトソン:
台無しや!
でも正しい!
笑いながら
歯医者予約するやつや!
ホームズ:
事件解決だ。
ワトソン:
いや、
まだ続きがあるんでしょう?
ホームズ:
次回は、
歯間と文明の配管だ。
ワトソン:
奥歯から
世界経済へ行くんかい!
ホームズ:
それが
おじいちゃんワールドだ。
ワトソン:
ほな読者のみなさん、
歯を磨いてから
次回へどうぞ!




