59話 今日は一日中怠惰に過ごすのじゃ!
ようやく全部終わったのじゃぁあ!!
我は我の部屋の氷の台座で寝っ転がっておる。
理由だと?
疲れたのじゃ!!!
それだけよ!!!
あっち行ってはこっち行っては何方でも問題が起こる上に対処も迫られる。
無事帰還できた者達、そして防衛に参加した獣達に我のありがたい労いの言葉を渡し、解散後ご馳走を配ってやったのだ。
そして落ち込んだエレナを我は抱きしめて慰めたり、孔雀にも泣きながらお願いされ抱きしめたのじゃ!
もう後半は自棄ぞ。
はぁ、この氷の台座ひんやりする上に柔らかさも自由自在。
最高じゃ〜!
獣をダメにする台座じゃ〜!
よし、決めたぞ。
今日は一日中怠惰に過ごすのじゃ!!
うむ、それが良い!
因みに小竜は狸と遊びに行ったぞ。
つまり、久方ぶりの一頭だ!
何しようかのぉ、何しようかのぉ。
流石にゴロゴロばかりしてるのも前脚持ち無沙汰ではつまらぬ。
鞄の中の物でも見てみるか?
うむ、そうするとしようかの。
まずは、おお!
宝石じゃ!
まだあったのか!
すまぬな綺麗な宝石よ。
ちゃんと我の宝箱に入れておくからの。
未だに城の謎の場所で見つかる事が多々ある我の落とし物。
なぜあの様な場所にあるのか未だ分からぬ。
どうやって行ったのかすら分からぬ故、もう一度行くのは不可能ではあるのだが。
ふむ、謎じゃ。
まぁ良い。
ちゃんと落とし物は拾ってやれねば。
我の落とし物じゃからな!!
そして次は、これよ!
これは、木の棒?
なんだったかのぉ、確かにどっかで拾った様な・・・
ああ!洞窟の餓鬼共の一匹が持っておったやつだ!
なんか一匹だけ持っておるのが不思議で持って帰って来たが、なんじゃろな。
取り敢えず加えて見るか。
内なる力を通せば何か起きるかも知れぬ。
おお!
いっぱい吸収しよる!!
これは何かが起き──どひゃぁ!?
は、破裂しよった…
うぅ、やってしまったのだ。
あの木の棒、もう無いのじゃ…
破裂すると言う物が能力だったのかのう?
うぬぅ、分からぬ。
何にしても“これくたー”として確保出来ないとなれば、悲しいのじゃ。
うぅ、気をつけよう。
─コンコン
ぬ?
『主よ、わっちでありんす。妙な音が聞こえたゆえ、安全を確認しに来たでありんす』
狐か。
『う、うむ、大丈夫だ。・・・そんな大きな音がしたか?』
『主の部屋の前であれば聞こえるくらいの大きさでありんす』
『そうか、心配をかけたの』
狐は内なる力による感知や操作に長ける故、気になったのであろう。
そうじゃ、であれば我の持つ不思議な道具について聞いてみるのも良いのでは無いか?
うむ、そうしてみるとしよう。
『狐よ、今は暇かの?』
『?今は主の側付きのため、部屋前で待機していりんす』
『そうか、では少し手伝ってもらいたい事がある。入って参れ』
『・・・、わっちが、主の部屋に?』
『うむ、手伝って貰いたい事がある故な』
『少し、お待ちなさってくれなんし』
『む?うむ』
別に急ぎでは無い故問題無いが、何か用意があるのかの。
『主、入っても良いでありんす?』
『うむ、良いぞ』
『では、ご免なんし・・・』
む?
狐の様子が何時もと違うの。
いつも我をも目を見張る程の美しい姿勢で佇み、歩く美しい狐ではあったが、更に磨きがかかっておる。
何より、耳にかかる花が美しい。
振り撒く香りも、薄く良い香りがする。
自分が最も美しくなる様研究した姿だ。
『いつにも増して綺麗だ、狐よ』
『・・・嬉しうありんす』
狐は優雅に尻尾を振る。
毎度思うが良く手入れされた尻尾よ。
我の尻尾も美しいが、柔らかそうにふわふわして揺らす狐の尻尾も素晴らしい。
『うむ、我は美しいモノを好ましく思う故、お主が眷族である事に改めて嬉しく思うぞ』
『・・・わっちも、わっちも主の眷族で嬉しうありんす』
『うむ、では手伝ってくれるか』
『はい、ただ・・・主よ。恥ずかしながら、わっちは初めてで、ありんす』
ぬ、なぜ照れる?
『む?そうか、緊張しておるのか。案ずるな。痛くは、無いかも知れぬが、物による』
ちょっと衝撃があったからの。
目に入っては危ないのじゃ。
『覚悟はできてありんす』
『うぬ。では、これを見てくれぬか?』
『・・・これは?』
『これはの。さっき破裂した木の棒と似た経緯で手に入った良く分からぬ棒だ』
これは一匹の犬頭が持っていた謎の棒だ。
材質は良く分からぬ。
『これを・・・まさかわっちに?』
ぬ、なぜその様な顔をする。
もしや苦手だったか?
『うぬ、この棒の使い方を教えてもらいたいのだ。先ほど力を込め過ぎて破裂したのか、また別の効果があるのか試したくての』
『・・・そう言う事でありんすか』
・・・何やら勘違いさせた様じゃ。
得心行った後に残念な顔に変わった。
そして赤くなりよる。
『・・・大丈夫か?』
『何でもありんせん!』
狐は美しい尾を一瞬逆立て、我を睨んだ。
怒らせた様だ。
『何か、怒らせた様だ。すまぬ』
それを聞いて、狐はいつもの調子に戻ってくれおった。
良かったのじゃ。
だが、少しだけ明後日の方に顔を赤くし背けておる。
『主のいけず』
『んぐっ、すまぬ』
何か、別にまた詫びるとしよう。
『改めて、これはどう言うものか分かるか?』
我は前後に穴が空いた棒を狐に見せた。
『これは、ここの穴に魔力を通しんす』
まりょく?
『ぬ、”まりょく“とな?』
『主、普段から纏わせている力の事でありんす』
『これか、この内なる力の事を魔力と言うのじゃな』
『でありんす』
なるほどの、これにはちゃんと名前があったのじゃな。
『狐は博識じゃのぉ』
『それが、先に災いしたでありんすが』
『ん?何かと勘違いした時か。すまぬ、また教えてくれんかの』
『教えッ、い、嫌で、も無いでありんす』
狐は顔を赤らめながらも我の願いに応えてくれようとしておる。
うぬ、愛いのう。
『うむ、また教えよ』
『コ、コン!取り敢えずこの棒の事でありんすが、これはこの穴に魔力を通し、効果が発揮されりんす』
『ふむ、やってみてはくれぬか?我じゃと魔力が強すぎるやも知れぬ』
『任せなんし』
狐から我と比べればほんの些細な力が穴を通り、反対の穴からモクモクと煙が出て来よった。
『これは、煙か』
『・・・これは、この煙はわっちの魔力が宿っていりんす』
『ほう、何が出来るのじゃ?』
『わっちの術をその場で発動できる様でありんす』
狐が言う様に煙は我に様々な物を映し出す。
これは、我か!
うむ、美しいぞ我!
『ほう!面白い!狐よ!我にもやらせてくれたもう!!』
『ふふ、暫し待ちなんし』
待ちきれぬ!
我もやってみたいぞ!
狐の視線が少し暖かくなった様な気がしよったが、我は棒に夢中だ!
気にならぬ!
『では早速ッ!?』
我は普段よりずっと少ない魔力を棒に流したつもりが、穴から大量の煙が出よった!!!
「コンっ!?」
「ヒュイ!ヒュイ!」
咳が、止まらぬ!
「コン!コン!」
狐も同じ様に咳をしておる。
すまぬ。
『部屋が霧で埋め尽くされたかの様じゃ・・・』
『主よ、力を込めすぎでありんす』
『またもやすまぬ狐。これはどうやら我に使えそうに無い。狐はいるか?』
『貰って良いんでありんす?』
『ぬぅ、本当は持っておくだけでも良いのだが、狐は先上手に使ってみせた。使える獣が持つべきであろう。それに、ここまで手伝ってくれた礼と詫びだ。どうだ?』
『嬉しうありんす』
我が渡すと、先ほどの様に棒を美しく咥えてみせた。
『うむ、やはり似合っておる』
我がそう言えば狐は笑顔を我に向けた。
『主、照れりんす』
『愛いのう狐よ』
うむ、愛い愛い。
『コ、コン!貰ってばかりでは眷族として恥ずべきでありんす。主よ、あの戦いからずっと渡そうと思っていた物がありんす』
なんじゃと!?
それを先に我に見せぬか!!
『ほう!是非、我に見せてみよ!』
『こちらでありんす』
狐はそう言うと先の棒で煙を吐き出し、術を使い、そこに姿を現す。
我の鞄の様じゃのぉ。
前に似た物を持っておるのかと聞いてみたが、全く別の物であるらしいがの。
じゃが、今はそれよりも現れたそれよ!
これは、黒い剣か?




