↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
56/57

56話 ワタシノユメ

凶狼の爪が、城の壁を一筋刻み、破く。


『嬢ちゃん普段より見境ないなぁ!』


『今、奴は本能のまま暴れる獣だ!!手加減に期待するなよ!』


ただ身体を回し、脚を振るだけでその凶爪は辺り一体を薙ぎ払う。


『首と心臓やられてしもうたら、いくら孔雀の嬢ちゃんでも治せんやろうからな!首と心臓だけしっかり守らなや!』


「グルォオオ!!!」


『ッ来るぞ!』


そしてまた、二頭に恐るべき凶爪を向ける。


辛うじて避けた二頭は怒りのまま、本能のまま暴れる凶狼の一挙手一投足を警戒する。


『はぁもう身体持たんでこんなん』


『無駄口を叩くな。奴の注意を引いて外に連れ出す。そしてギレーヌにぶつける』


『その注意を引いて外に連れ出すんがいっちゃんムズイんやけどな』


『今我は奴と戦う準備が無い。奴と真正面からぶつかれる現戦力はギレーヌのみだ』


納得しない顔で影狼は事実を述べた。


『他獣任せっちゅうのも癪やが、それが最短や!もう早よ終わらせたいししゃーない!』


『ああ、宝具を手に入れた今この城に用はない。さっさとあの娘を寝かして帰るぞ』


「グルァアア!!!」


『あらよっと!!』


再度振るわれた凶狼の爪は、サイの太い角によって轟音と共に弾かれた。


『おぉ、いちち。角折れる思うたわ』


サイは頭を振り、弾いた角をから感じる衝撃に顔をしかめた。


『形を成せ、影の写し身(ドッペルゲンガー)』


体制を崩した凶狼の元に、影狼と同じ姿をした影が十体現れ、凶狼の意識を誘導する。


注意は影狼に向かい、凶狼は周囲を傷付けながら追いかけた。


『よし釣れとんで!このまま外でよか!』


『貴様は少しでも我の影を保たせろ!片っ端から薙ぎ払われては釣れもせん!』


『わーっとるわ!』


上手く避ける影狼に合わせ、振り抜かれる凶爪を弾くサイ。


状況が変わらない事に凶狼は痺れを切らした。


「アオォオォン!!!」


掲げるは誇り。


『ッ、おい!アレ使うてくるぞ!』


『自我がないのにどうして発動出来る!?』


『知らんわ!あの嬢ちゃんなら自我なくても身体が覚えとんねやろ!』


『ふざけている!!』


自我を失い、己の心は未だ見えず。


だが、魂に刻んだ狼の誇りに翳り無し。


誇りは羨望へ。


己の魂に刻んだ憧景に、己はいつか喰らい付く。


『凶狼の氷爪舞(ワタシノユメ)』


何処かで見た吹雪の技を、凶狼は己のやり方で発現する。


『いくらワシでも捌ききれんッ!!』


振り撒く数多の氷爪の吹雪は、城の一角を覆い尽くす。


やがて吹雪は過ぎ去り、辺り一体に凍りついた爪痕が帝国の城に深く刻まれた。


そこに、四本の足で立つ獣が一頭。


『生きとるか、影の』


『、グッ、問題、ない』


『おんしはちょっと柔らかすぎんねや』


『貴様が、タフ過ぎるだけだ!』


『そんくらい元気があんねやったら、だいじょうぶやな』


四本の足が崩れる音がした。


『、サイ!!』


『へへ、嬢ちゃん受け切ったったで。次の縄張り争い楽しみに、し──』


『ックソ!』


倒れたサイに赤い水溜りが生まれる。


「グルルルル」


凶狼の眼は未だ戦意は衰えない。


サイを咥えて外へ出るには距離も遠く、凶狼は逃す気はない。


『なれば、使うしかあるまい。お互い生きて帰れると──』


言い切る前に、地震がなった。


『やっと来たか』


崩れかけていた帝国の城が、地震と共に少しずつ崩れていく。


凶狼もまた、目の前の存在とは違う、圧倒的な存在感に警戒した。


そして、崩れかけていた城の扉が上から吹き飛んだ。


『よく頑張ったわね、サイ。黒ちゃん。後は任せなさい』


ギレーヌが、城を破壊しながら影狼の元へゆっくりと行く。


『ギレーヌ!宝具はここだ!だが、術者を殺しても止まらん!』


影狼は殺した術者から喰らい奪った宝具を見せつける。


『なら、本格的に止めないとダメね。黒ちゃん、サイを外の孔雀ちゃんの所へ連れて行ってちょうだい』


『殺す事も貴様が死ぬ事も王は望んでいない。その上で娘を止めろ』


『分かってるわよ、誰に言ってるのかしら。アタシ達象は仲間の暴走を止める事なんて日常茶飯よ』


ギレーヌは、いつも自分の群れの暴れる象達に声をかける様に言う。


『エレナちゃん、もう誰にも、誰もアナタに傷付けさせないわ』


いつも通り、その言葉を違えない様に自信を持って言った。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。