55話 なぁんでこんな事になるんですわぁ!?
あわわわわ!?
『み、皆で一旦考えますわよ!!』
妾は慌てて仲間達へ現状の打開の助けを求めましたわ。
「ピョピョ」
「ピーヨピョ」
「ピィヨ」
『ふむふむ、今まで培った舞台芸で敵を魅せて逃げると・・・。それ妾が囮になるのではなくて!?』
「「「「ピヨ」」」」
『任せたではありませんわ!!それにあれはこの様な場で披露する為ではなく、わ、わが、我が君の為に・・・』
ああでも無いこうでも無いと仲間内で相談していた孔雀の元に人間の足音が大きくなっていた。
「この鳥も魔物か!?」
「「「「ピョ!?」」」」
『ば、バレましたわぁ!どうしましょう!?』
「ピゥヨ!」
「ピヨ!」
「ピピョ!」
『任せたではありませんわ!一体どうすれば・・・!?わ、妾達危ない獣ではございませんわ〜、う、うふ〜ん♡』
妾渾身のウィンクも合わせればこれで堕ちない獣は居ませんわ!
「「「「ピギョ!?」」」」
「なんだこの魔物気持ち悪りぃ。皆、やっちまうぞ!」
「「「「おう!」」」」
なんでですわぁ!?
「ピヨォ!」
「ピィ!!」
「ピヨヨ!」
『ご、ごめんなさいですわ!ってどさくさに紛れて残念孔雀って聞こえましたわ!!誰が言ったんですの!?』
「そっち行ったぞ!!」
「焼き鳥にして食ってやる!」
『なぁんでこんな事になるんですわぁ!?』
とある一室では慌ただしく人が動いていた。
「宝物庫の鍵が無い!?」
「は、はい!だ、誰かが持ち出したかと」
「無いならそれしか無いだろう!?記録は誰が付けている!!」
「そ、それが皆魔物の対処に集中していた為、管理する者も離れてしまい」
その報告に男は拳を怒りのまま机に叩きつける。
「馬鹿か!?何があっても宝物庫の管理は任された者の最優先事項だ!まさかそんな無能に管理を任せていたなんて、そいつは一体誰だ!」
「き、騎士エルマー・メロー殿です!」
「エルマー?奴は何処に行った!!」
「そ、それが、騎士として魔物の討伐に行くと言い出て行ったっきり・・・」
男は怒りがもはや過ぎ去り、白くなった思考で言う。
「・・・。連れ戻せ」
「「は、はい!!」」
その様子を見ていた二人の兵士は決死の覚悟でエルマーを探しに行った。
「宝物庫・・・手綱・・・」
男は微睡のまま、扉に手をかけ、中に入った。
『ご苦労でありんす。ゆるりと寝やんし』
─コン
「──」
狐の鳴き声に、太鼓が重なった音が響いて、男が崩れ落ちた。
『手綱は──無いでありんすか』
宝物庫の中は何個か持ち去られた様な痕を残して、お目当ての物は見つからなかった。
『であれば、お手上げでありんす』
狐は気怠けに、息を吐きながら肩を落とす。
そして再度辺りを見回し気付く。
痕跡から持ち去られたのはつい最近。
今の状況から思考能力が上がった狐は一つの可能性に辿り着く。
『エレナはんが危ないでありんす』
「グルァアア!!!」
『ここの人間中途半端に強くてやりにくいったらないわ!』
「シルバーウルフの討伐を優先しろ!フェンリルは時間を稼げばどうとでもなる!シルバーウルフが邪魔だ!」
『もう殺して良いんじゃ無いかしら!?』
『・・・やむをえん。なるべく殺すなと王は言ったが、もはやそんな状況ではない。殺せ』
『アンタに命令される筋合いは無いわ!でも、悔しいけど同意見よ!!氷爪一掃!!』
「なんだコイツ!?急に魔力が──」
振るわれたその凶爪は、氷の斬撃を纏い、周囲を一掃する。
『ふぅ、スッキリしたわ』
『ふざけた技だ。王に真似て技の名前を付けるのは良いが、やるならしっかり命名しろ』
言われたエレナは白銀の毛並みの耳を赤く染めた。
『はぁ!?私の身振り脚振りがそれだけで必殺技なんだからそれで良いじゃない!!それに、べ、別に我が主人を真似たとかしてないし!というかそんなの烏滸がましいというか』
『次が来るぞ。想い獣の話に興が乗るのも良いが乗りすぎるな』
『想い獣じゃないわよ!種族違うし!!』
『そもそも王は雄と明言したか?』
『え──』
『我等は世界を旅した種族の獣だが、王の種は見た事ない。生態がまるで分からんのだ。それに我は陰──』
『うるさい!聞きたく無いわ!戦闘に集中しなさいよ!!』
また来る敵を薙ぎ払いながら狼は妙な気配を察知する。
「あれがフェンリルか!」
『何、このちょっと強そうな服着た弱そうな人間』
『っ、待て、気をつけろ。異様な気配の物を持っている』
「フェンリルが手に入ればエルフ王国など取るに足らん!下等種族を滅ぼすのはこの私、将軍エルマー・メローだ!!宝具[神馬の手綱]!」
男の手にした手綱の様な紐が、白銀の巨狼へ絡みつく。
『─ぁ、──』
「ガルルゥ・・・」
「ふ、ふはははは!凶狼フェンリルと恐れられていようと英雄ワーヴォルグの宝具には抗えまい!これで、これで私は──」
男は言い切る前に、エレナの影から這い出た影狼の牙によって事切れていた。
『欲に溺れた愚図が』
『──』
明滅する視界の中、血が見えた。
『王の保険が活きたか』
『──』
喉が、渇く。
『目的は果たした』
『──』
口から滴る血が、心が落ち着かない。
『撤収するぞ』
『─逃──』
言葉は続かない。
「アオォオォン!!!」
白銀の凶狼の凶牙が、殺意を込めて影狼に剥く。
『これは、不味いな』
壁を壊し突き進んでいたサイの目の前に壁を壊して現れた影狼に目を丸くする。
そしてその奥から白銀の巨狼が姿を現す。
『チィッ、好き勝手暴れよって』
『影の!?なんでこんな時に狼の娘と乳くりあっとんや!!』
『宝具は手に入れた!だが、あの娘がその術にハマり、暴走したままだ!手を貸せサイ!!』
巨狼の目は、白く、光がなくなっている。
サイは思わぬ事態に口をヒクつかせた。
『こんな時にあの嬢ちゃんとやり合うなんてなぁ!!縄張り争いでもあんま勝率よう無いぞワシ等は!!』
『あの娘に今真っ向からやれるのはあの象だけだろうよ。ギレーヌの所まで誘導する』
『それしか無いわな!空駆けて行かれたら堪らへんで!!』
己に立ち向かう二頭の気配を本能で感じ取った巨狼は、牙を剥き出し仕掛ける。
「グルァアア!!!」
『来るぞ!』
「アオォオォン!!!」
『二度目の遠吠え、失敗、では無さそうね』
事前に決めていた合図から、状況を判断するが、続く遠吠えが聞こえない。
つまり、全員の意にそぐわない遠吠え。
ギレーヌは己も介入しなければならない事態になっている可能性を考えた。
『帰り道、作っておかないとだけど、どうしようかしら』
城の正門を眺め、考えていたギレーヌの眼に、自分からすれば圧倒的に小さな虹色の鳥が出てくるのが見えた。
『あっ!ママ!ママぁー!!!』
『あら、孔雀ちゃん。涙一杯にしてどうしたのかしら』
『わ、妾、人間が、ぐずっ、ごわぐで、ぶぴー!』
『はいはい、ちーんして良いわよ。中の子達はどう?』
孔雀はギレーヌの足に張り付き鼻を擦らせた。
『そ、そうですわ!マ、ギレーヌ殿大変なのですわ!宝具は手に入れたんですわ!でも中でエレナが!!』
考えうる最悪の可能性に至ってしまったことを察したギレーヌは焦りを見せる。
『っ、皆、ここで皆の帰り道ちゃんと用意してあげてね。私はエレナちゃん見てくるからぁ』
「「「「パォオ!」」」」
『孔雀ちゃんもここで待って、怪我してくる子を治してあげて』
『は、はいですわ!!!』
『オォオラァアアアアアアア!!!』
覚悟を決めたギレーヌは城壁に体諸共ぶつけ、粉砕した。
『皆、もう少しよ。エレナちゃんも頑張ってね』




