50話 我らの森は、何人たりとて冒させぬ。
『皆、良く急遽集まってくれた』
我の目の前には十三の眷族達が謁見の間で佇み、我の話に耳を澄ませている。
『此度、エルフの王から我らの森に多くの人間が侵入する情報が入ったのじゃ』
事前にこれを聞いてるため、驚きこそ無いが嫌な顔をする眷族が大体である。
我の顔も気を抜けば歪むであろう。
『戦の準備をした人間が我らの森に入り、冒す。我らには許せぬ行為だ。だが、こちらはあくまで本題では無い。人間の縄張りの一つに我らを縛り、操る道具があると言う情報が入ったのじゃ』
『『『『っ』』』』
これは先ほど聞いた話。
猿から教えてもらっている獣は更に顔を渋くし、知らぬ獣は驚きと怒りで顔を染めておる。
全く、英雄とは言え厄介な物を遺してくれた物じゃ。
『我ら森の獣達に非常に都合が悪い道具じゃ。故に我はこれの入手、そして出来るのであれば破壊を考えておる。異議のある者はおらぬな?』
『『『『はっ!』』』』
『良い、では戦の準備が必要じゃ。森の侵入を止める為、我、子竜、熊、鷲獅子、鹿、狸の獣で防衛に当たる。何も変わらなければの。そしてかの道具が有る縄張りに交渉、もしくは潜入、侵攻の役割に狼、象、狐、サイ、二角獣、影狼に任せる。交渉は主に狐に任せる事になるであろう。孔雀は二つに別れて癒し手としての活躍を期待する。猿は森全体に散らばりそれぞれの連絡役を。ウリはこの城の防衛。と言う事になるであろう。各々の役割をしかと把握し、準備を進めよ』
『『『『はっ!』』』』
大雑把で未だ分からぬ事も多いが、今はこれしか無い。
[神馬の手綱]の発動条件も分からぬままだ。
ただ見るだけなどと言うふざけた条件であった場合、我が直接すぐ行くのは不味い。
眷族の獣であれば我の[王権]で対処出来よう。
『細かい所は各々で煮詰めよ。特に攻め入る組に我はおらぬ。正直に言うと心配じゃ。じゃが、我の眷族達ならばやってのけると信じておる。皆、力を合わせ、我らの森を守ろうぞ』
『『『『はっ!!!』』』』
我らの森は、何人たりとて冒させぬ。
翌日、我はまた昨日と同じ配置でエルフの王と話を始める。
『疲れは取れたか、エルフの王よ』
「はい、神獣様。ここで得た食事は我がエルフ王国をも凌ぐ素晴らしい食で御座いました。若返るかの様な気分で御座います」
『そうか、こちらの食が口にあって良かったぞ。では、本題へ移る』
我は緩む空気を消し、厳かな空気を場に作る。
「お聞きします」
『我らは竜王国の侵攻を止め、帝国へ交渉、叶わぬならば侵略する事になった』
「──承知しました」
『・・・止めはせぬのだな』
「我らエルフも色々考え、結果こうするのが良いだろうと先んじて考えておりました。そしてその熟考の末、我らエルフも協力させて頂きたく思います」
エルフの協力が得られるのか!
なるほど、何も我らだけで当たる必要はないか。
だが──
『ほう、それは助かるが』
「我らエルフは北に位置し、神獣様の森より帝国へは近くございます。故に我らエルフが先んじて帝国へ交渉、注意喚起を致しましょう。如何でしょう」
もし、宝具がエルフの手に渡ればまた考えねばならぬと思っておったが、その程度の干渉ならば良い。
『それは助かるが、何を求める。我はただの獣では無い。貰うばかりでは我の威光に翳りが見えよう』
「でしたら、我らに神獣様の森で取れる木の実やキノコ、山菜の採取を許されればと」
その程度であれば良い。
じゃが、釘は必要であろう。
『良い。エルフが我が森に入り、恵みに手を出すのは許そう。じゃが、頻度や量はしかと考えよ。今の所、我はお主らエルフに友好的では有るが、度が過ぎれば考えよう』
「─はっ、はい。慎重に考えさせて頂きます」
『ならば良い。では、これで解散としよう。帰りはまたギレーヌに送ってもらうが良い。外で待たせておる』
「神獣様、感謝致します」
『良い、気を付けて帰るが良い』
では、我らは準備をするとしよう。




