49話 見よ、これが我の最強装備じゃ!!
「それでは、このままお待ちください」
城の門に触れるとすかさず開けられた扉から俺達を迎えたのは、執事服を着こなす白い猿。
そして門と同じ程大きな扉の前で俺たちは待っていた。
「陛下、ご無事に到着なされなによりです」
「サシャ、問題無かったか」
「はい、神獣様とこの城の皆様に大変良くして頂きました」
「それは良かった。神獣・・・神獣様は何処へおられる」
「この扉の先で後ほど話そうとのことです。私に陛下と話す時間を頂きました」
「そうか、ならこの城での事を聞かせてくれ」
「はい」
そして俺たちはサシャにここでの事を聞き、謁見の間へ入った。
「王が入られます」
我はその声と共にいつもの入り口から入る。
見えるのは十五人ものエルフ。
その中で一人、白いエルフを更に陶器の様な白さの肌を持つ金の髪のエルフを見た。
あれがこの者達の王であろう。
中々美しいのぉ。
じゃが、ここは我の美しさを何よりも象徴する場、我が主役である。
分からせる必要があるのじゃ。
我は荘厳且つ優美に降りる。
子竜にも雪を降らせたのじゃ。
空間を凍らせ、我の紋章を左右に浮かせ、我は天から降りる。
見よ、これが我の最強装備じゃ!!
うむうむ、我の美しさに皆心奪われ立ち尽くしておる。
実に気分が良い!!!
皆、事前に聞いていた為我が玉座に立つとサシャに釣られる様に跪く。
『良く来た。エルフの皆、そしてエルフの王よ。我はお主らを歓迎する』
「神獣様、我らエルフにここまでの歓待、どの様な言葉をお伝えして良いか分からぬ程のこの胸で高まる感動。神獣様、幸甚の至りで御座います」
エルフの王は跪いたまま我を褒め称える。
うぬ、気分は良い。
だが、その姿勢は王としてはどうなのじゃ。
『王よ、余り謙り過ぎるな。お主は王であろう』
「神獣様、我らはとうとう神をこの眼で拝めたのです。対等に神獣様に余が語りかければ、全てのエルフに末代まで愚王と罵らます。どうかこのままで」
そこまで言うならそうするとしよう。
『サシャから聞いておったが、それほど森はお主らにとっては大事か』
「我らの故郷は森にあり、死にゆく場所もまた森へ。我らの先祖から受け継ぐ血が、そう訴え続けるのです。我らは木を植え、育み、その恵みを頂き、そしてまた育む。そして我らは種を束ね、存続して来ました。エルフは常に森と共にあったのです。その森を瞬く間に作り出す御身の御業、まさに精霊王の如き業、大変素晴らしく思います」
そ、そうか。
そこまでの物か。
思わず他のエルフに目を向ければ皆、その言葉に偽りが無い様に見える。
『そうか、森とはお主らにとってそれほど大事か。良い話を聞いた。感謝しよう。だが、この場にエルフの王、スーニャ・ヴァン・ヴィクトリアをここに呼んだのは、我を敬わせ、心地良い言葉を我に囁かせる為ではない。サシャから聞いたか?』
「竜王国の帝国への侵攻の話であればサシャからお聞きしております」
ここからが本題じゃ。
ここまでの言葉も心地良かったが、それとこれとはまた別。
この竜王国と言うのが厄介そうなのじゃ。
『うぬ、南の竜王国は我が森を中継し、北西の帝国へ侵攻する話を我は聞いた。これは事実か』
「事実で御座います。我らの方でも武器と兵量を集め、戦の準備をしている情報が集まっています」
『この侵攻の目的はなんだ。距離的には随分と離れておろう。得られる物も少ないと思うが』
「恐らく、帝国の宝具を狙ったものかと思われます」
『宝具?それはどんなものだ』
まさか我の持つ鞄の様な物か?
「その宝具は人族以外のものを操り、従わせるものとされています。宝具の名は[神馬の手綱]。かの英雄、百獣一騎のワーヴォルグが遺したモノと伝えられております」
『ほう!獣に心を通わせ、祖国を守る為力を借り、一騎当千を果たした英雄の手綱か!我もその話はそこそこに好きでな。獣に心を通わせる良い英雄かと思うたが、我の思う美しさとは少し──』
「我が主人、話が逸れております」
ぬ、サシャから聞いた英雄の話が出てしまい、思わず・・・。
見ればエルフの皆、目を丸くしておる。
まずい、荘厳且つ優美にじゃ!
『む、う、うむ。そうであるな。それでその宝具が帝国にあると。それが本当だとして、何故、竜王国がそれを狙う』
「申し訳ございません。諜報に出てるものでも噂にしか聞いた事がなく、信ぴょう性に欠ける物で」
『良い、聞かせてみよ』
「では、眠った真竜が竜王国の遺跡で見つかったと噂が流れております」
『真竜、それは獣か?』
「種族的には獣に分類される物ではあります。が、遺跡で見つかったとなれば、魔物に属する可能性もあり、判断がつきません」
『魔物、邪気のある獣の事か?』
「そうで御座います」
『その真竜を宝具で飼い慣らすつもりか』
「全てが事実であるなら、その様になります」
我はずっと思っていた事を口にする。
『難しいところよの。恐らくその宝具、我にも通用しよう』
「っ、誠ですか!?」
『実物を見ぬうちははっきりとした事は言えぬが、我にも通用してもなんらおかしくはない。ならば、通用する前提で話した方が話は前へ進む。その宝具、帝国にも竜王国にも持たれるのは我らにとって都合が悪い。真竜がいようとも、いなかろうともだ』
この鞄や剣がそれと似た類の物であり、竜王国が狙うとなれば、我に通用してもおかしくは無い。
叶うならば我に効かぬと良いが。
「っ、もし仮に御身が囚われた場合の想定をお聞きしても?」
『我が囚われた場合、我の眷族は我の持つ[王権]に縛られ、言う事を聞かされるであろう。エレナやギレーヌがその他の国に侵攻してもおかしくはない』
だが、裏道はある。
これは、誰にも知られる訳にはいかぬ。
「神獣様の眷族達が、外へ・・・。あまり、考えたくは無いです」
『我らも早急に動かねばならぬようだ。また、明日ここで話そう。我らの方でも話がしたい』
これは一度、眷族の皆を集める必要があるじゃろう。




