48話 エルフの王と象の王
『じゃあアタシに乗ってくれる?これだけなら私だけで運べるわ』
「よ、良いのか?」
『ええ、主ちゃんにも言われてるの。鷲獅子達に乗せるのは人間にとっては怖いって聞いてたから。アタシの乗り心地もいいかは分からないけどね』
鷲獅子には確かに乗ったことはない。
だが恐らくこの象に乗るか鷲獅子に乗って空を飛ぶか、比べても何方も大して変わらない恐怖を味わうだろう。
「そ、そうか。では、乗せてくれるか?」
『えぇ、鼻に掴まってくれるかしら』
そして十五人もの人間を乗せてまだ余裕のある象は忠告する。
『しっかり毛を握ってないと落ちちゃいそうだから、しっかり握ってね。落ちても死にさえしなければなんとかしてあげるから』
「あ、ああ。では頼んだ」
『はぁ〜い、それじゃ行くわよ〜』
大きな地響きを鳴らしながら反転し、目的の場所へ向かう象。
俺達の視線の高さは既にそこらに生える木々よりも高くなり、森全体を見渡した。
そして、余裕ができ、王と共に気付く。
「これは、動物同士の喧嘩か・・・?」
動物の雄叫びが幾つも重なり、激しい音がなる。
ただその激しい音が、動物らしくはなかった。
『喧嘩じゃないわ。喧嘩はもう皆随分しなくなったの。今あの子達は縄張り争いをしてるのよ』
俺たちを運ぶ象が答えてくれる。
「先ほどの猿達とギレーヌ殿を見れば、森の者達は皆仲良くしておるとは想像は付く。その上でも縄張り争いは続くのだな」
『それが主ちゃんのお願いだからね。皆頑張って縄張り争いを続けてるの』
どういう事だ。
その言い方じゃまるで動物達が皆協力して意図的に争っている様じゃないか。
そして遠くの丘の上にこちらに目を向け、気高く座る巨大な狼を見た。
「あ、あの方がこの森の王か?」
『ううん、彼女は違うわ。彼女もアタシと同じ主ちゃんの眷族、狼の王、エレナ・フィリルちゃんよ。気を付けてね。あの子、アタシと違って厳しいから』
「アオォーーン!!!」
姿勢正しく座る白き狼は、品性を感じる気高き遠吠えを森に響かせる。
それに続く様に狼達がそこら中で遠吠えをする。
あの狼ですら王ではなく、眷族。
この森は、一体どうなっている。
「眷族は、一体どれほどいるのか、聞いても良いか?」
『眷族は全員で十三頭いるわ。アタシとエレナちゃんを除いて後十一頭いるの』
「そ、そんなにいるのか・・・」
この象一体でも国を総出で上げて討伐に挑む程の強さをしている。
それが、十三・・・。
我らの王は敵対するつもりは元から無さそうではあったが、これで確実にその芽は絶たれたと思いたい。
そして、さらなる異変が起こった。
「お、王よ!目の前に精霊が!」
『──』
エルフの様長い耳を持ち、羽を生やした人型の精霊。
その精霊は俺達に無感情の眼を向けた。
「・・・精霊が自らここに結界を設けているのか」
「そ、そんな事が」
「それしか考えられまい。だが、どのような結界だ」
『あら、アタシはその子は初めましてね。気配が、ウリちゃんと似てるかしら』
象は視線だけを上に向け、鼻を寄せて挨拶する。
『──』
『ふふ、この人達を主ちゃんが見たいって言うの』
『──』
『あら、行っちゃったわ』
俺達に向ける無感情の視線よりは温かみのある眼で像を見ていた。
「・・・余達はあまり歓迎されておらぬ様だ」
『あら、そんな事ないわよ。主ちゃんもそうだし坊ややアタシだって気になってたんだから』
「であるなら良いが」
『それじゃ進むわよ〜』
魔力濃度の高い精霊の結界を俺達は潜った。
そしてその先にある物に、体が震えた。
氷の柱を規則正しく削った様な塔が四本、壁で繋げていた。
その壁の中にはその柱よりも更に高く、太く、天を突き刺す様に聳え立つ。
見るだけで、そこに住む存在に平伏しそうになる。
余りの連続の出来事に、脳が、混乱して倒れそうだ。
『あら、大丈夫?』
後ろを見れば倒れそうになった他のエルフがギレーヌ殿の鼻によって支えられた。
「・・・すまぬな、余の者が」
『大丈夫よ。後もう少しだから頑張ってね』
「・・・やはりあの城が?」
『そう、主ちゃんの住処。他の城?を見た事無いから分からないけど、綺麗よね〜』
「あ、ああ。大変立派で素晴らしい城だな」
『アナタ達人間もそう思うのね。主ちゃんやっぱりスゴいわ〜』
凄いで済ませるな!!!
もはや可笑しいって言っていい程だ!!!
今までの事を思い浮かべ、その全てを更に凌駕する存在を目にして俺たちは心の中で揃って叫んだ。
『さぁ、着いたわよ』
外壁の門を抜け、恐ろしく高い階段を登り、正門の前で俺達は止まった。
「ギレーヌ殿、ここまでの道のり感謝する」
『良いのよ。人間とお喋りするの初めてで楽しかったわ。また送って欲しかったら言ってね』
「ああ、その時は任せよう」
象の王、ギレーヌは階段を降りていく。
「さぁ、皆の者。心せよ」
「「「「はっ!」」」」
もはやこの城を見た後に何を見ても心が動かないほど余裕がある。
皆の顔を合わせれば疲労はあるけど同じ気持ちだ。
どんな存在を見ようと、余裕を持って対処出来るだろう。
よし、行くぞ!




