45話 王との謁見
入れば遠い奥の高い台座から竜が胸を張ってこちらを見る。
「ピィ、ピィ!」
『人間よ、こっちに来るがいい』
竜に呼ばれ、ゆっくりとその場へ向かう。
豪華絢爛にも見えるように装飾が施された氷の部屋。
氷でこれほど美しく細工出来るとは、相当な技術力だ。
部屋を歩くだけで圧倒されそうな私は、やがて竜の元へ辿り着く。
気付けば周りには数多の白い狐に綺麗な列を組んで囲まれていた。
「ピィピィ!」
『長旅ご苦労であった。今日ここに呼んだのは理由があるのじゃ。じゃが、少し気圧されすぎておるな。もっと楽にせよ』
「は、はい!」
見たことの無い城に見た事が無い部屋、そして数多の狐の中一人でいる。
その事実が脳を一時ショートさせた。
「ピィ!」
『緊張しているなら我を見よ。特別に凝視する事を許そう。我の愛らしい玉体を見れば緊張などほぐれようぞ』
「は、はっ!」
その言葉に甘えて目の前の竜を見た。
森の王である白い竜はとても美しかった。
白い翼、白い四足の胴体、胸には赤い模様、細く長く鋭い尻尾。
顔は何処か鷲の様な面影を感じるもまだ幼い。
確かに王が語る様に愛らしい。
が、やはり竜とだけあって大きい。
先の鷲獅子と同じくらいだ。
「ピィ、ピィピィ、ピィピィピィピィ!」
『お主がここまで来る道中の事は聞いておる。人間には中々に過酷な道であったであろう。よくここまで辿りついた。褒めて遣わす』
「あ、ありがたき幸せ!」
そういえば、この声は何処から聞こえるのか。
今更になって考えた。
「ピィ、ピィ!」
『そこでの、少し聞きたい事があるのじゃ』
頭に直接響いているんだ。
「は、はい!答えられる事であれば・・・」
「ピィ、ピィ!」
『うぬ、感謝する。先日我が森に踏み入ったのはお主らだけか?』
「はい」
妙な質問だ。
まさか私達以外もこの森に入ったの?
『お主らは北から来たんじゃな?』
「え、ええ。その通りです。まさか他にこの森に?」
ようやく自分に余裕を取り戻す。
『いや、そうでは無い。先日のさらにその前、お主らの方から何か見られたと思うてな。その者は正しくお主らの者か?』
「はい。その者は間違いなく我らの同胞でございます。挨拶もアポイントもなく不躾に我らの同胞が御身の姿を視界に入れ、注視してしまい申し訳ございません。その者の名前は[遠目のカイナ]という者です。先日も私と共に勝手ながらも御身の森に侵入し、国に帰ったものの一人です」
森の王の声が僅かに上ずる。
『ほう![遠目のカイナ]!その者は有名か?どれほどの名を知られておる?いつからじゃ?その様な者はどれほどおるのじゃ?』
矢継ぎ早に質問が私に突き刺さり、慌てて答えていく。
「え、え、と、かの者は我がエルフの六英雄の一席に座する者で、その席に座ったのは二百年程前だと聞いております。他にも似た様な者が五名ほどおり、皆それぞれ我が国を代表する英雄でございます」
『二百年!?英雄!?六人!?ほうほう!猿よ、もう少しこの者の話を詳しく聞きたいぞ。場を設けよ』
『我が主人よ、それは構いませぬが限界でございます』
『ぬ?何がじゃ。その者限界か?』
『いえ我が主人、殿下がお疲れです』
「ぴぃ、ぴぃ」
そう、実はずっと前から胸を張ったまま鼻に提灯をつけ、首を揺らす白き竜が目の前にいた。
『・・・。バレたか?』
『はい我が主人、ずっと前からこの状態でございます』
『そうか、うむ。・・・すまぬな、そこの者よ』
謎の声は私に罰が悪そうに一言謝った。




