41話 我を魅せてみよ
行くぞ、子竜。
「ピィー!」
今日は安息日だ。
森の獣達も、城の者達も、側付きの象達も休ませた。
そして、今日は我と狸達で“ぴくにっく”である!
楽しみじゃ!
『我が主人、今日は私が随伴します』
狼の王、エレナが我らの後ろをついて来た。
『エレナよ、今日は皆休みじゃ。仕事などしなくて良い』
『御身が護衛もつけずに城の外へ出かけるなどあり得ません。私が付いて行きます』
『むぅ、我らが楽しくやってる隣でそう堅苦しくされたら十全に楽しめぬだろう!』
『ですが──』
『ですがでもああでもない!のぉ!子竜!』
「ピィ?」
『流石殿下でございます。我が主人、認めてもらいますね』
『ええい!では仕事としてでは無く普通にお主も来い!』
『準備します』
彼奴、最初からそれが目的ではないかの。
そんなエレナだが、見た目は大きく変わっておる。
エレナは名をもらい、シルバーウルフからさらに進化し、狼の最強種フェンリルへと進化した。
毛並みはより綺麗になり、体は我ほど大きくなり、爪牙はより鋭くなった。
目つきもより鋭くなり凶暴な面をしているかと思えば、普段の顔は進化前より柔らかくなっておる。
そして、その気高き姿の誇りが他の獣にもわかるくらいに溢れ出しておった。
素晴らしい。
うぬ、より美しくなっておる!
流石我が眷族、名を与えられし獣よ。
じゃが仕事に勤勉過ぎるのは良くないと我は思う。
休む時はよく休むのじゃ、エレナよ。
そう思うであろう?
子竜よ。
「ピィ?」
ま、まぁそうではあるが、うむ。
確かに皆で行ければ良いな。
・・・うぬ、余り邪険にし過ぎるのも意地悪でダメじゃな。
我が悪い。
そうこうしておるうちに狸が合流しおった。
「ポコー!」
『主様ー!お、お待たせしました!殿下も!』
『おお、狸よ。うぬ、よく来た。待っておらぬ。今日は休みじゃからな。少しの時間等誤差よ』
「ピィ!」
『それとエレナも来る事になった。狸よ、良いか?』
『え、エレナ様も!?も、もちろんです!!』
『お待たせしました、我が主人。狸殿、今日は私も一緒に行かせて頂いてもいいでしょうか?』
『え、エレナ様!もちろんです!』
我と同じ大きさをした狼が我らの前に姿を現す。
狸は頭を下げてエレナに言う。
『これ、狸よ。エレナは名こそ与えられたがお主も同じ立場である。余り謙る様では示しがつかぬぞ』
『で、でもエレナ様、お素敵です、ので』
『狸殿も可愛らしいですよ。私も狸様とお呼びした方がよろしいですか?』
そう言われた思わず狸は飛び上がった。
『そ、そんな!で、では・・・エ、エレナさん・・・』
慣れず、伺う様にエレナに言う狸。
うぬ、愛い愛い。
『はい、狸殿。今日はよろしくお願いします』
「ピィ!」
『うぬ、では案内よろしく頼むぞ。狸よ』
『は、はい!!!』
少し緊張しておったが、最後はほぐれ、堂々と我らを導いて行く。
そう、今日の“ぴくにっく”先は狸達の縄張り、決闘会場の建設地である!!!
『──ます!木材は縄張り争いの後にママ・・・象達と倒した木材を共同で運び、足りないという事は無い、です!以上です!』
まさかあの象に薙ぎ払われた木々はこっちで役に立っておったのか。
であれば奴等を木々の無い場所へ移せばこちらが困るか。
ぐぬぬ、森を再生する能力は慣れては来たが、大変ということには変わりはないんじゃ。
せっかく森の再生の難しさを名分に得たと思えばそのまま裏返しにされてしまったではないか・・・。
致し方あるまい。
『良い話を聞けた狸よ。これからもその様に励が良い』
『は、はっ!』
『狸殿、ここまで立派な物を作れるなんて・・・私狸という種族を見誤ってたかもしれないわ』
『い、いえ!主人様のお陰で皆賢く、器用になったおかげです!』
『それだけではあるまい。この意匠は中々に素晴らしい。こういう物は賢くなっただけでは備わらぬ才。一つ持って帰っても良いか』
『っ、ぜ、是非!!』
『うぬ、感謝する。他の狸達も良くやった。変わらず励め』
「「「「ポン!!!」」」」
遠巻きにチラチラと様子を伺っていた狸達に言葉を投げた。
『では堅苦しい話もここまでで良いだろう。改めて“ぴくにっく”再会じゃ!』
『そ、それでしたら良い所があります!こ、こちらへ!』
『うむ、では皆行くぞ!』
『はっ!』
「ピィ!」
『ほぅ!これはなんと面白き場所じゃ』
『不思議な場所、どういった場所なのでしょうか』
「ピィ!」
我達は狸の案内で連れてかれた武道館なる場所へ赴いておる。
『こ、こちらでは安息日の日に、元は私達狸が己の技を磨く場所だったんですが、その時にその、勢いで作ってしまったのがこの武道館です!』
勢いで狸はこの様な物を作るのか。
我や狼が入ってもまだまだ余裕があるこの箱を武道館というらしい。
これを勢いでか・・・。
狸達に任せた決闘会場は確かにこれの何倍もの大きさになる予定だが、それでも十年もからぬかもしれぬな。
恐らくさらに洗練された意匠を散りばめられ、我の好きな美しき物で溢れ返るやもしれん。
狸達にこの任を任せてよかったの。
『そ、それでこの場には私達狸だけじゃ無く、お猿さんもよく来て一緒に技と芸を磨いています。そ、その集大成を主人様に観ていただきたく、これがその今日の演目です!』
『ほう。狼暴、宝塚、虹橋とな。どれも気になるな。だが、我は姿勢などには厳しいぞ?』
『せ、精一杯主人様に楽しんでもらうため、努力を重ねた者達です!きっと楽しめるものになってます!では、始めても?』
『良い、我を魅せてみよ』
『で、では、皆んな!始めるよ!』
「「「「ポン!!!」」」」
大変面白かったのじゃ。
狸は技で狼に化け、縄張り争いで暴れ回っている様を美しく我に魅せた。
まだまだ拙い所もあるが、とても良い演劇であったぞ。
隣で誇らしくしておるエレナを見れば結果は大成功であろう。
そして最後の虹橋で出た孔雀はまるであの眷族の孔雀そのものの様であった。
最初に幕を上げた時に飛び跳ねたのも含め、本当に本獣かと見紛えたものじゃ。
『狸よ、大変楽しめたぞ。安息日に魅せてくれた獣達に感謝を伝えよ』
『は、はっ!』
『そうビクビクするでない。いつまでもその様であれば周りの眷族に示しがつかぬぞ。自信を持って我にあの者達が魅せた様に、お主も我に魅せてみよ。偽りでも良い。上手く仮面を被り我を騙して見せよ。その方がお主は面白い』
我は二又の尾でいつか象がやってくれた様に狸の頭を撫でたのだ。
『あ、主人様を騙すなんてそんな』
『良い、我が許す。表舞台は厳かに美しく飾り、裏では右往左往し、慌ただしく駆け回れ。お主達狸にはそれが出来よう』
我は舞台袖からこちらを伺う狸達を観た。
『良くやった。大変面白かったぞ』
「「「「ぽん!!!」」」」
それから我らは近くの泉に移動して弁当を用意し、皆で食べた。
我の作ったおにぎりなども用意し、皆に振る舞えば泣きながら食べよった時は大変気分を良くしたぞ。
途中何処から来たのか孔雀も入ってき、なんとも姦しく皆でご飯を食べたのだった。
皆んなで食べる弁当は大変美味しかったのじゃ。
皆でまた、“ぴくにっく”しようぞ!!!




