40話 荘厳且つ優美に。
我がこの城を築き、一年経った。
狼は我と共に数多の大地を我より先に駆け、獣を守り、ケダモノへは喰らい付いた。
我が豊穣の儀を行なっている時に襲い来るケダモノ達を片っ端から処理していった。
多くの洞窟はあの黒き者の様な者には出会わず、ケダモノを我のために倒していった。
大変助かったのじゃ。
故に我は決めた。
『狼よ、良く一年、側付きの任を全うした。我の行先で剣とし、盾として素晴らしい働きぶりであった。我はお主達狼に最大級の感謝を伝えよう』
『っ、はっ!』
「「「「アオォーーン!」」」」
『これからは我が森で縄張り争いに参加し、成長した姿を獣達に見せつけ、勝利を目指せ』
「はっ!」
『褒美としてお主に名を与えよう』
『『『『!』』』』
『っ、よろしいのですか?』
『本来は九年後の決闘で授けるつもりではあった。だがお主達の献身に報いるには九年先は些か長く感じると思ったのだ。我に、そう思わせたのだ。お主達は我から名を勝ち取ったのだ。誇れ』
『はっ!』
「「「「アオォーーン!」」」」
『では名を授ける。──エレナ。狼の王エレナ・フィリル。お主にこの名を授けよう』
『エレナ、我が主人から頂いた名前。しかと、頂戴、致します』
『これからこの名は最強の狼と同義。故に、その名に恥じぬ、強き力と誇りを背負い、我にこれからも仕えよ』
『はっ!』
「「「「アオォーーン!」」」」
『そして象よ。これから一年、狼に変わり我の側付きの任を任せる。見事果たしてみせよ。さすればお主にも名を授けよう』
『はっ!』
「「「「パォオ!」」」」
『ではこれで解散とする。皆また励が良い』
『『『『はっ!』』』』
我は謁見の間をいつかの様に退場していく。
「ピィー!」
子竜よ、お主も思えば立派になったな。
今の子竜は我の半分程の大きさとなった。
だが竜はまだまだ大きくなる。
竜の成体は象をも超える。
未だ我の半分であれば幼体と成体の半ばくらいであろう。
まだまだ成長が楽しみじゃ。
久しぶりに共に出かけるとするか、子竜よ。
まだ手付かずの洞窟があったのじゃ。
「ピィ!」
そうして我は子竜と象達と共に新たな洞窟へ赴いた。
「ピィー!」
子竜は戦闘面でも成長したのだ。
雪の技はその場で辺りをいっぺんに降らせる様になり、その状態でなら我の必殺技を扱える様になった。
『氷結魔弾』に続き覚えたのは『氷極光線』。
ブレスを一点に集中し、解き放つ我の技だ。
貫通力が高く、威力も相応に高い。
この技を空から放てば忽ち一帯は凍り、氷像と化す。
『あら、坊やもやるわね。アタシ達も負けないわよ〜!』
「「「「パォオ!」」」」
凍った氷像を破壊しながら象達は洞窟に進んでいく。
ただ、群れ全員が氷像をぶち壊し突き進む様は中々に迫力があった。
特に自称全種族のママこと、群れの長は凄いぞ。
『オォオラァアアア!!!』
「「「「グギャアアアアアアア!?」」」」
・・・うぬ、見てはならぬモノを見てしまったかもしれぬ。
「ピ、ピィ」
子竜がいつも優しく相談に乗ってくれる象がとんでもない暴れ方をして引いておる。
何度見てもあの怪力は凄まじい。
縄張り争いでもその大きな体と重量、そして怪力を持って木々を薙ぎ倒しながら暴れ回っておった。
下手な小細工はせず、正面からぶち込みに行く事が許されるのはあの種族だけであろう。
鹿の長も下手な小細工ではその“ふぃじかる”で簡単に壊滅させられる様に頭を抱えておった。
そんな中我は何しているか?
言わなくとも分かっておろう。
─キュイン
荘厳且つ優美に石を拾っておるんじゃよ。
『終わったわ主ちゃん。ここ凄いわね。みんなあっという間に力持ちになっちゃったわ』
『う、うぬ。ご苦労であった象よ』
まだ力を上げるのかこの種族は。
お主らが薙ぎ倒した木を再生させるのは我なんじゃぞ。
もうこの獣達が戦いやすい様木の無い場所を広げてやろうかの。
うぬ、そうしよう。
「ピィ!」
「ぱぁ!」
お、何時ぞやの子象では無いか。
二頭は尾と鼻で挨拶をし二人でお喋りを始めた。
『ふふ、懐かしいわね』
『我に挨拶に来た時だな、あの時の象達の愛情深さに我は心打たれたのだ』
『別に特別な事じゃ無いわ。アタシ達象にとってはね。それに胸を打たれたのは何も主ちゃんだけじゃ無いわ。アタシ達象もよ』
象は我の頭に鼻を乗せ撫でよった。
なんだこれは、妙に落ち着くの。
『初めての謁見の時、子を殺さないでって言ってくれてアタシ達とても感動したのよ?アタシ達象は大きな大人になれば命の危険がないけど子供は別。むしろ積極的に狙う種族が一杯いたの。だから嬉しかった』
頭を撫でた鼻は我の尾へ向かい我は絡めた。
『獣の未来のためだ。お主等に限った事ではない。各々の種族の子を他の種族も守るべきだと思ったまでよ。子は宝じゃ。大人から子へ様々な物を継ぎ、更に子へ。これはどの種族も変わらぬ。我ら獣は常にそうし、進化してきた。そしてそれを、我は美しいと思ったまでよ』
『ふふ、良かったわ。アタシ達の主はアタシ達と同じ考えを持っていて。それに子供だけじゃないわ。アタシ達象も獣。温厚だと思われがちだけど心の中に暴れ回る本能も眠ってる』
象は目に涙を溜めたまま、笑う。
『アタシ達象はこれを常に封じてきた。アタシ達の力とっても強いから。アタシ達の敵は虎やライオンじゃない。いつだってアタシ達自身の本能こそが敵だった。一度暴れれば、近くの種族を絶滅させる危険もあったから、暴れちゃダメ』
『難儀な種族だな、象よ』
『我慢できず暴れた仲間を止めるのも命懸けよ?中々大変だわ。でも、この力を振るって良い場所を作ってくれた。我慢しなくて良くなったの。怪我をしても癒してくれる小鳥ちゃんもいる。もう命懸けで仲間を止めなくて済む』
象は一度目を閉じ、まっすぐに我を見た。
『ありがとう、アタシ達の王様になってくれて。アタシ達象はアナタが思う以上に感謝してるわ。だからアタシ達これからも頑張って主ちゃんを支えるわね』
「「「「パォオ!」」」」
我は尊敬の目を一身に集め、自覚する。
眷族の命だけではない。
この種族そのものや、獣の子供達の命をも背負っていると。
だからこそ、我は示めそう。
迷いを見せず、不安を見せず、いつもの様に。
荘厳且つ優美に。
『象よ、お主達の忠誠の心、しかと受け取った。案ずるな、この世で最も美しい我が皆を輝く未来へ導いてやろう』




