38話 我、頑張るぞ!!!
よし、そうと決まれば早速狼を連れて明日、荒れた地を向かおうぞ!
我は健康診断の部屋を後にする。
しかし、人間達はどこに住んでおるのだろうな。
これだけの獣達がおるのに情報は鹿の遥か西とだけ。
うぬぅ、良かったと言えば良いのか近くにおってほしかったのか。
奴らは森を切り開くからの、我ら獣にとっては近くにいない方がまぁ良かったか。
だが、それも時間の問題か。
何十年、何百年先か分からぬが、ここ我の森にもいつか手が伸びるであろう。
故に、その時までに備えなければ。
我だけ強くては意味がない。
各々の種族達が、人間にとって脅威足り得なければならぬ。
でなければ、いずれ隙を突かれ、獣達はまた追いたたれ、明日の飯も困るというもの。
故に皆、強くなれ。
我ら一頭で人間の街を滅ぼすほど強くなれ。
我が貴様らに望む事はそれのみ。
さすれば、ここは恐ろしい森であり、その奥にはそれは美しい獣がいると噂される。
我が伝説の獣道へ至らん。
ん?
このような扉あったかいの。
我は一度振り返り、あの部屋の扉を探し、ある。
ぬー?
扉一つのみで後は出口のみのはず。
なんじゃここは。
まぁ、入って見るかの。
─ガタ
ふむ、別に変わったところは無いの。
青く光る壁じゃ。
奥がずっと続いとるが、ふむ。
もしや、また鞄のような不思議な道具があるか!?
剣はもはや我の一部となって道具では無くなった故、少し懐が寂しく思っとったのじゃ!
よし、では行かん!!
ようやく果てが見えてきよったか。
それにしても無駄に広く対して何も無かったの。
ぬぅ、残念じゃ。
帰るとしよう、象が心配する。
ん、鏡か?
ほう。
なんと美しき獣か。
象ほどの体躯になったが、そうあってなお荘厳且つ優美な雰囲気を漂わせよる。
鹿と狼の良い所のみを上手く掛け合わせた様な美しき面。
そこから頭部には雄々しく伸びる透明であるが青く光る立派な角。
二又の尾は聖布の如く平たく細く、美しい。
決して細くはなく、それでいて無駄な肉が一つもない素晴らしく美しい青い体躯。
うぬ!
今日も我は美しい!!!
して、鏡なんぞこんな所にあったかいの。
我は来た道を戻ておるはずじゃが、来た時この様な物はなかったぞ。
うぬ、だが、我美しいな!!!
なんか全部どうでも良くなったぞ。
我の美しさの前にその他の事など些事に過ぎぬ!!!
『怖い』
ぬ?
誰じゃ。
『外が怖い』
ほう、外が怖いと。
ならば我を見ながら外を出よ。
中に籠るだけでは心が腐る。
故に、美しい我を見ながら恐怖を忘れ、光の元へ出るが良い。
お主のその恐怖、その光で晴れようぞ。
『でも、外には怖いモノが一杯いる』
ならば強くなれ。
強くなれぬ獣などおらぬ。
どの様な獣でも、皆赤子よりは強くなる。
ならば、成長できる余地などどの様な獣にも初めからあるのじゃ。
故に、己を信じ、強くなれ。
身も、心もじゃ。
『ボクも、強くなれる?』
ああ、きっと強くなるであろう。
我が言うのじゃ、間違いない。
だが、そう簡単に恐怖というものは消えぬ。
獣は皆、血に恐怖を刻まれておるからの。
それに立ち向かう時、どうすれば良いか、分からぬ獣が多い。
我だってそうじゃ。
だが、答えはある。
お主が何に怯え、何に恐怖しておるのか我には分からぬ。
恐怖に立ち竦む時があれば、思い出せ。
『何を』
我をじゃ。
我の美しさに見惚れれば、恐怖など吹き飛ぶぞ。
そして我がその場にいなくとも、お主の隣に我がいる。
お主の中におる。
『・・・。』
一度我を見たのじゃ。
我を忘れる事が出来る獣など、この世どころかあの世まで、何処にもおらぬ!!!
これで答えは満足かの?
『ありがとう、シル───』
『大丈夫?主ちゃん』
ぬ?
いつの間に我、洞窟の入り口に。
『あら、立ったまま夢を見てるのかしら』
『そのような器用な事、我にはできぬ』
『あら、なんでも出来そうな主ちゃんでも出来ない事があるのね』
『お主がどう思っておるのか知らぬが、我、結構色んな事が出来ぬぞ』
『・・・なんか変わった?主ちゃん』
『ふむ、変わったか。少し、肩をほぐし、今後の迷いが消えただけかの』
『そう、良かった。心配したわ』
『心配するのがお主達眷族の仕事じゃからな。その調子でしっかりと仕事せよ』
『ふふ、はいはい』
『うぬ、では狼の様子でも見に行こうかの。随伴せよ、象よ』
『了解よ、主ちゃん』
よし、森を広げ、皆に恵みを与え、良き伝説の獣の道を歩もうぞ!!!
我、頑張るぞ!!!




