34話 我が主人、嘘の匂いがします
「ヒュィ、」
ン、ハァ、このじゃじゃ馬めが。
ごっそり持っていきおって。
この形態になってからの刀は、ただ有るだけで驚くほど我の力を吸うのだ。
我の内なる力と直結しているためか、振るう技は我の力をそのままぶつける様な物。
対象によって消費が変わるが、確実且つ短期で終わるのが利点である。
故にこの刀が抜ければ勝ったも同然なのだ。
『我が主人!私には何がなんだか』
『良い、感傷に浸るのは後にせよ。まだおるやもしれぬ』
『は、はっ!』
『隠さず言おう、それなりに消耗した。同じのに会えば逃げることはできるが勝てるとは言えぬ』
『その時は私達が殿を務めます』
『良い、と言っても聞きそうにないの。だが、なるべく全員生きて帰還せよ。ただ無意味に死ぬことは許さぬ』
『はっ!』
「「「アオォーーン!」」」
『では、行くぞ』
我らは最大限警戒しつつ、部屋に侵入する。
薄青く光る壁、広々とした部屋。
いつもの洞窟と何ら変わらぬが、気配はない。
ふむ、これで終わりと見て良いかの。
はぁ、この様な強敵とは初めて戦ったの。
今まではそれなりに余裕があったが、此度の敵は難敵であった。
成体前なら死んでおったな。
『我が主人、あの敵から大きな石が出ております』
『これは随分大物だな』
それは狼の頭ほどある濃い青が漂うの石だった。
『我が仕舞おう』
─キュゥヴン
ぬ、仕舞えぬ。
仕方ない、尾で掴み持って行くか。
『さて、何もおらぬな?』
『はい、妙な像がある事以外は特に』
『像?』
『こちらです』
我は巨狼の後に付いていく。
それは妙な像だった。
『ふむ、なんじゃこれは』
『分かりません、が、良い物とは思えなくて』
『奇遇だな、我もだ』
羊と熊をぐちゃぐちゃに合わせた様な生き物をひっくり返し様な像だった。
うむ、気色悪いの。
「ピィーーーー!!!」
『『あ』』
子竜がブレスで粉々にしよった。
此奴め、我慢出来んかったか。
まぁ良い、我も壊そうと思っておったところじゃ。
今回は許そう。
『では帰るとするか』
『はっ!』
「ピィ!」
『あの、また来た時と同じ様な方法で帰るので?』
『そうじゃ、我が容易く森の獣達に姿を見せては我が権威が問われよう』
『我が主人はその程度で陰る様な権威では決してございません』
『油断はできぬ。我の価値は高ければ高いほど良い。さすれば森の獣達はここに住まうだけで誇りを覚えよう』
『た、確かにそうではございますが、その』
『?どうした、狼よ』
『いえ、大丈夫です・・・』
『くく、そうか。して、狼よ。我の言葉を覚えておるか』
『一言一句覚えております』
『では孔雀の時、お主に言った言、覚えておるな』
我は狼の尻尾を我の尻尾に絡ませる。
『はぅあえぇ!?』
『行くぞ狼。何、空の上は子竜の雪と我の奇跡で隠れておる。誰にも見られぬ』
『!?!?!?!?!?』
「ガル」
『うぇ!?何言ってるの!?え!?』
『狼達よ、少しお主らの長を借りるぞ』
「ガル」
『!?!?!?!?』
『行くぞ、狼、子竜よ!』
「ピィー!!!!」
『ちょっと、ちょっと待って──』
「アオォーーン!!!」
我は狼を抱き寄せ、共に空を駆け登る。
『こ、これはお館様、とんでもない物でござる』
『それは良い意味でか』
『難しいでござる。ただの獣や人間が持っても恐らく扱いきれぬ劇物でござる。でも、某達とお館様の一部となったこの世界樹があれば正しく浄化できるでござる!』
『ならば、我らにしては良い物であるな』
『では早速試してみるでござる!と言いたいところでござるが、ずっと気になっていて集中出来ないでござる』
ウリ達の視線は一箇所に集まっておる。
その先は白い尻尾のみが階段の入り口から出ておる。
『ふむ、狼よ。こちらへ来い』
『い、嫌です!』
『すまぬかった。もう飛ばぬ。許せ』
『そ、そういう事ではないんです!』
『このままであればウリ達が集中できぬ』
『う、うぬぬぬぬ』
「ぐるるるる」
狼はこちらに向き、牙を出して我を睨む。
『・・・本当に悪いと思ってますか?』
『うぬ、我が悪かった。お主の恐怖をただ溶かそうと思っただけなのだ。許せ』
『・・・面白いと思ってやってたりしてないんですね?』
『・・・うぬ』
『我が主人、嘘の匂いがします』
『嘘の匂いってなんじゃ?我はその様な匂いを漂わせぬ。不敬であるぞ』
『我が主人、尾が慌しいです』
『ぬっ!?貴様、謀ったな』
『フン!ふふ、いいでしょう。我が主人、許します』
『誇り高き狼は主人にも厳しいな』
『でしたら事前にしっかり許可を取ってください。心の準備が女には必要なのです』
『相分かった。ウリよ、始めてくれ』
『お館様、任せるでござる!皆の者、始めるでござるよ!!!』
「「「「ウリー!!!」」」」
ウリ坊達は狼の頭ほどある石を丁寧に掘った穴へ収めていき、埋める。
そしてその上で円を描きながら一定のリズムで踊る。
「「「「ウーリウリウリウーリウリウリ♪」」」」
時には立ち止まり、片足をあげ、時には振り返り互いに頭を合わせ、時には円の中へ近づく様々な動きをするウリ坊達。
皆の顔は大変必死ではある。
が、我はどうしても彼らの必死さと容姿が結び付かぬ。
目の前で繰り広げられているというのにだ。
そうしている内にウリ達の姿が光り輝き、石のあった場所へその光が注ぎ込まれる。
前にも見たが、なんと不思議な現象よ。
我の力とも違う、見た事ない力が宿った光。
それが何度か石の場所へ注ぎ込まれ、桜が光った。
『成功でござる!!!』
「「「「ウリ!!!」」」」
掘り返されたそれは見た事ないほどの光を放っていた。
『こ、これは!』
『なんと、』
『えっ!?』
光が落ち着いていき、石の表面はガラスの様に変化し、中には羽を生やした人間が入っていた。




