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33話 我が慈悲にひれ伏すが良い!!!

『我が主人、これで最後です』


『うむ、良くやった。褒めて遣わす』


『はっ!』


「ピィ!」


『うむ、子竜よ。また一段と成長したな。良くやった』


「ピィ!」


広大な洞窟であったが、二十頭の狼にかかれば瞬く間に餓鬼共が消えよった。


その都度持ってくる石を回収する我も大変だった。


うぬぅ、だがこの石、ウリ坊達の達に渡すと実に綺麗に光るのだ。


面倒だが我がやろう。


我の為に先を行き、ケダモノ共を狩ってくれるのだ。


このくらいの事、造作でも無い。


ただ、見るだけで回収できるようにならんか、鞄よ。


まぁ、これまで助かっとるのだ。


これ以上は贅沢か。


いや、まだ試しておらぬ事があったな。


これまでの不思議な道具達は全て我の内なる力により効果を発揮した。


そしてこれもまた口に咥えて発揮する。


我の漏れ出る微弱な内なる力で発動しておったのか?


だとするなら、『氷眼魅(アイズチャーム)』の様に眼とその先に我が内なる力を込めれば、うぬ、次試してみよう。


「ハッハッハ、ガゥ」


『我が主人、下へ降る穴を見つけたそうです』


『うぬ、良くやった。では行くか』


『はっ!』





「ギュモォオ!」


ほぅ、久方ぶりに見たぞ。


牛頭ではないか。


あの頃は氷漬けにして氷が砕けず酷い思いをした物だ。


許せぬ。


『氷眼魅(アイズチャーム)』!


─パキン


ふっ、また氷像になるがよい。


『我が主人、その、石が取れません』


・・・今日の所は氷像は勘弁してやろう。


我が慈悲にひれ伏すが良い!!!





どうやら上の階ほどの広さは無い様だ。


出てくるケダモノが牛頭、大蛇、大蝙蝠などになった。


どれもシルバーウルフ程の大きさで中々に苦戦しておる様だ。


だが苦戦している所に子竜が行き、見事ブレスで倒しておる。


地上では狼が注意を引き、その隙に子竜がブレスや石を落として攻撃する。


見事な連携だ。


眷族の狼の娘はさらに集まる数多のケダモノを相手にしている。


彼奴だけ別格だ。


漏れたモノのを仲間で処理する、その動きに迷いがない。


恐らくいつもの狩りの動きであろう。


実に見事だ。


そして我は変わらず石を拾うておる。


・・・だって、戦おうとすると狼が怒るのじゃ。


我らの獲物を取るなと。


そう言うならば仕方あるまい。


だが確かに、各狼の動きが段々早く、力強くなっていっておる。


急激に成長しておるのだ。


その証拠に余裕が生まれ、巨狼の娘に続く様に連続して攻撃する別の狼達が増えていっておる。


やはりここは鍛錬に良い場所だ。


邪なモノさえ無ければの。


そうして荘厳且つ優美に石を拾いながら眷族達の活躍を見ておれば、デカい扉が見えてきた。


邪な気配が漂ってくる。


ここにおるな。


『獣達よ、露払いご苦労であった。ここからは我の獲物だ』


『いえ、我ら狼はまだやれます』


『お主はこの先に感じるモノが何か分かるか』


『・・・薄く感じる程度ではあります』


『ならばやはり我の出番だ。ここから感じる気配をしかと覚えておけ。今のお主等じゃ喰われるぞ』


『・・・承知、しました』


『そう肩を落とすな。この中のモノが上手く隠しておるだけよ。我は最近この様な気配に敏感になっただけのこと。では行く。そこで見ておれ』


『我が主人の勇姿、しかと目に焼き付けます』


『うぬ、子竜もそこで見ておれ』


「ピィ!」


我は一呼吸入れ、内なる力を激らせる。


「ヒュゥイ!」


我は新技、『氷塊砲撃(アイシクルカノン)』を扉にぶつける。


我ほどの大きさの氷塊を雷の速さで射出する。


大きな獲物に有効な必殺技よ。


扉に氷塊を突き破り、更に奥に飛んでいく。


扉が吹き飛び、土煙が多量に漂う。


まだ、姿は見えぬ。


我はいつもより更に油断なく扉の先に意識を飛ばす。


「ウギュアゥアアアアアアア!!!!」


「ッヒュゥイ!」


ッ『氷城壁《アイスキャッスルウォール》』!


けたたましい叫声を辺りに撒き散らしながら突っ込んでくるナニカ。


分厚い氷壁が三枚、扉の先に我は出現させた。


その二枚までを貫き、そのナニカは止まりおった。


氷の向こうに奴の姿が映る。


羊の角、羊の骨の仮面。


目があったはずの場所には木の根の様な物を生やしておる。


全身は黒く、毛が所々濃い。


禍々しい翼を生やす二足歩行。


気色の悪い尻尾をゆらゆら漂わせ、こちらに叫ぶ。


「ウギュアゥアアアアアアア!!!!」


これは、獣ではない。


これは、敵だ。


「ヒュォオオオオオオオオ!!!!」


我は敵の威嚇を押し返し、更にソレに圧をかける。


『わ、我が主人、アレは』


『っ、耐えられぬ様ならば我だけを見よ。直視するな。狂うぞ』


『は、はっ!』


『他の狼にも十分注意せよ。呑まれる者が現れるやもしれぬ。子竜よ、雪を目一杯向こうとこちらに頼む』


「ピィーーーーーー!!!」


子竜が空を飛び、雪を大量に降らせる。


「クリェァア?」


『させぬ。『氷結魔弾(アイスバレット)』!』


我は大量の氷塊を子竜に向かおうとするソレにぶつけていく。


貴様の相手は我だ。


我から目を背けるとは無礼であるぞ!


更に『氷塊砲撃(アイシクルカノン)』をソレに我は放った。


「ウクァ─」


『氷結魔弾(アイスバレット)』に紛れ飛んでいく大きな氷塊に吹き飛ばされる。


「ァアアアアアアアアア!!!!!」


暗い部屋の奥から赤く光る木の根を生やした目で我を睨んでいた。


そうだ、この世で最も美しい我をしかと目に焼き付けぬなど、世界の全てを捨てるのと同義。


故に、我を見よ!


『氷眼魅(アイズチャーム)』!!


ソレの体のあらゆる先の部分から凍ていく。


最大出力じゃ!


「ウルァアアああ!!!」


体のあちこちから氷が生えるがすぐに砕き、飛び上がる。


『氷眼魅(アイズチャーム)』は万能ではない。


欠点は眼に内なる力を集中させねばならぬのと、我の視界から外れると効果がない。


視界を捉え続ければそれだけ内なる力を使い、消耗する上、瞳を動かせば効果は集中し直せねばならぬ。


故に、コストが高く、長くは使えぬ。


が、今は時間を稼げれば良かっただけのこと!!!


「ヒュゥウウウウイ!!!」


『氷結地獄(ヘル・コキュートス)』!!!


我の内なる力がと放たれ部屋に吹雪が生まれる。


「ピィー!」


吹雪を上手く避けて子竜が帰ってきよった。


「クゥリュウァ・・・アアアアアアア!!!!」


吹き荒れる吹雪の中で身動きを止めていたソレは、我と似た様な力を使い、周囲の氷と吹雪を押し出した。


なんという禍々し力よ。


だがお主は今、動けぬであろう。


我の吹雪は子竜の雪の技によって威力が強化され、消費が減っておる。


が、それでもアレを縛ろうとすれば相応に消費する。


故に、ここで決める。


出よ、『悉くを氷断(アブソリュート)する(・ブル・)零天の翠刀(フルンベルグ)』


現れるは翠の刀。


我が力が浸透し、元ある剣から形が変わった物。


装飾は全て取り払われ、両刃の刀身は透き通る片刃になり、月の様に反っておる。


鍔も消え、面影は白と黒のひし形模様の柄のみとなった。


そしてコレは鞄に最早入っておらず、我の中に存在している。


故にこれは我の一部である。


貴様は余りに気色悪い故、ここから終わらせよう。


我は内なる力を激らせる。


距離はある。


だが零である。


この刀に阻む物は無く、振るう必要もなく、ただ、空を通るのみ。


我は咥えるだけで良い。


それで終わる。


【零断(ゼロ)】


鏡合わせの二つの氷像は、一瞬の内に砕け散った。

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