31話 我、凄い!我美しい!!
よし、子竜よ。
準備は良いか。
「ピィ!」
猿、皆は集まっておるな?
『全員昨日と同じ配置で今もお待ちしております』
うぬ、では行こうぞ。
猿は先日と全く同じ素晴らしい姿勢で扉を叩き、我の先に入る。
『皆様、王が入られます』
我は荘厳で優美な姿勢を保ちながら今一度気合を入れ直す。
我は王となった今、油断も隙も見せてはならぬ。
子竜も我の後に続くのだ、弛んでいては真似をする。
よし、行くぞ!
─ガタ
獣達は先日とは違い皆伏せて待っておる。
眷族も、群れの長達もだ。
ふむ、昨日はやはり我こそが皆に試されておったと言って良いな。
そして皆に認められ、しかと忠誠心を強く感じる。
特に鹿が素晴らしい。
此奴も我の領域に踏み入れようとしておる。
静かに、厳かに、優しく、美しくそこに佇み、我に頭を下げておる。
うむ、素晴らしい。
いずれ他の眷族達も、群れの長達もそこへ至れ。
皆がそれを理解できる獣であると信じておる。
故に尚更、我は貴様等の先にいると全身で気配を振り撒く。
そして壇上に上がり、ここは獣の声でよかろう。
「ヒュゥイ!」
そして皆が顔を上げる。
うむ、見事な忠誠心だ。
実に良い。
『先日に続き此度もよく集まった。そして今日はこの森の未来を決める話をする。しかとその耳に、脳に記憶するが良い』
『『『『はっ!』』』』
『まず一つ、我が森の拡大についてだ。
我は今、とある神物によって木々や草花を自由に生やし、増やし、成長出来る様になった』
『『『『!?』』』』
『お主等が住まう縄張りの様な木ではなく、それよりも若く、弱い木ではあるがな。だが出来る様になった今、荒れ果てた大地も我の手によって生き返る。木々や草花を生やし、土を良くし、泉を生み出す。貧しい大地にも恵みをくれてやろう。故に、我はこれから様々な大地を歩み、我が森を拡げる。そして貴様等はこれに付き合え。良いな』
『『『『はっ!』』』』
『そして二つ目、縄張り争いについてだ。今、お主等は我の恩寵により飯の種にある程度困らなくなり、狩猟の必要性が薄まったであろう。だが、それは我の望んだものではない』
我は内なる力を体の周囲に纏わせる。
やがてそれは吹雪になった。
『ただ出された飯を喰らい、糞をし、惰眠を貪る獣は、心が腐る。その様な獣は気高いか?誇り高いか?勇ましいか?美しいか?強き獣か?否、断じて否だ!』
我は内なる力を荒々しく激らせた後、霧散させる。
獣達数匹が怯えた。
『我はその様なケダモノに堕とす為に貴様等をこの森に誘った訳ではない。誇り高く、美しいと思ったからだ。故に、縄張り争いを続けよ。だが目的もなくただ争う事で得る物等何もない。故に褒美を取らせよう』
我は氷を操作し、結晶を作る。
『五年、争い勝ち続けた獣の種族は我が進化の秘宝をくれてやろう。これは眷族化はせぬ。ただ己の種族が進化するのみ。これで足りるか?』
「グルォオオ!!」
「ガァ!!」
「ピュォオ!!」
群れの長達が思い思いに吠える。
眷族ではない獣の声は我に届かぬ。
我の声は一方的に届く故、声を届けるだけであれば問題はないが。
『皆それで良いと』
猿は様々な種族の言語を理解できる様進化した。
故に獣の意見をまとめる為にも我の側にいつもいる。
『うむ、ならば良い。だがこれでは眷族のお主等は薄い益であろう。既に進化を果たしておるお主等は何を我に求む』
『王よ、我から良いか』
立ち上がったのは影狼だ。
『良い、申せ』
『─再戦を』
『『『『なっ!?』』』』
『ほう。我の命が尽きればお主も死ぬと言うのに、それでも再戦を望むか』
『その為に、我等はここに来た』
「グルゥアア!!!」
『ふ、ふざけるな貴様ァ!神の如き我が主人の恩寵を受けていながら、その命を狙うと!?誇り高き我ら狼の名を血泥に染め上げるつもりか!!!』
立ち上がり今にも襲い掛かる体勢の巨狼。
牙を剥き出し、毛を逆立て、尾を激らせた。
『良い、狼。下がれ』
『し、しかし主人!この様な事─』
我は眼光を鋭くさせ、『氷眼魅』を僅かに発動させる。
─ピキ、ピキ
狼の毛が少しずつ凍っていく。
『下がれと、言ったぞ。狼。二度はない』
『─っ、は、はっ!』
我は影狼に向かい直す。
『他にもおぬか。我に再戦を希望する獣は』
『・・・是』
『・・・叶うならば』
『俺もまたやりてぇな』
それぞれ鷲獅子、鹿、二角獣の三頭だ。
その事実に狼はまた声を出しかけたが、何とか我慢しておる。
「ヒュルルルル!!!」
『くくく、はははは!!!良い、良いぞ!忠誠心を持ちながら我と命を賭けた再戦を希望するか!!実に良い!!勇しく、強き獣達だ!!!それでこそ我が眷族である!!!』
『『『『はっ!!!』』』』
『だが、我が命を簡単にくれてやるわけにはいかぬ。ふむ、少し早いが話そう』
我は眷族達の眼をしっかりと見つめて言う。
『もし、我がお主等の手で殺されても、お主等は死なぬ。我に勝った獣に我の王の力が譲渡される様、我が改良した』
『『『『!?』』』』
『我が勝手に眷族にした責任を果たす為、少し手を加えたのだ。少々手こずったがな』
我は再度内なる力を高める。
『故に挑んでくるが良い、我が眷族達よ。十年だ。お主等は争い、鍛えあげ、貪欲に強くなれ。そして十年後、我が決闘の舞台を開く。獣達の頂点を決める決闘だ。そこで頂点に至った獣はその時、選べ。再戦か、我から名を貰うか』
『『『『はっ!』』』』
『群れの長達も聞け。縄張り争いの勝敗はどちらかが引くか、互いに引くか、どちらかの種族が一頭死んだ時だ。引いた相手の背中に追撃をした種族は我から罰を下す。良いな』
獣達は思い思いに吠える。
『そして、縄張り争いに負けた群れは最長一週間の休息を与える。体を癒し、英気を貯めよ。怪我がひどい獣がいれば我が城の門を叩け。子竜が癒す』
「ピィ!!!」
『『『『はっ!』』』』
『そして、その上で縄張り争いに関わらない眷族を言う。我から頼みたいことがある』
『『『『はっ!』』』』
『まず狸よ』
『は、はい!』
『お主等には決闘の舞台となる会場の設立を頼みたい。必要な物があれば他の種族や我に相談せよ。十年、見事果たすことが出来れば名をくれてやろう』
『しょ、承知しました!』
『他の者達も出来る範囲で手伝ってやれ』
『『『『はっ!』』』』
『そして猿よ』
『はっ!』
『お主等に縄張り争いをされれば城の運営が回らなくなる。これからも我の目と耳、口とし務めよ。褒美はいるか?』
『我が主人の側で支え続ける事こそが我ら種族の褒美足り得ます。これ以上は贅沢という物』
『ふむ、相分かった。そして孔雀よ』
『はっ!』
『お主等も子竜同様癒し手と聞く。猿と共に我が城へ縄張りを移す事を許そう。そして傷付いた我が森の獣達を子竜と共に癒やせ』
『承知致しましたわ』
『うぬ、では次の話へ移るか』
『お館様!某から一つ申し上げても良いでござるか!』
『ぬ、ウリか。良いぞ、話せ』
いつの間にか前へ出ていたウリ坊が我に願いを申し出る。
すまぬ、ウリよ。
お主等は気配が薄く、小さすぎるのだ。
許せ。
『某の願いは一つ!このお館様の城にある神物の管理を我らに任せてはもらえぬでござるか!』
『っほう。では少し試そう。それはどこにあるか答えてみせよ』
『某の真下にございまする!』
『ふむ、お主等は元より不思議な生態をしておるのを感じたが、神物に関する物か?』
『でござる!』
『して、どの様な益を我に与える』
『お館様の森にさらなる豊穣と恩寵を高めるでござる!』
『ふむ、良い。ではウリの種族も我が城に縄張りを移せ』
『かたじけない!』
『では次の話だ。以上の四の眷族を除いた九の眷族達に側付きの任を与える。』
『『『『はっ!』』』』
『一年置きに各種族の眷族は我の側で我と共に歩んでもらう。猿もおるが、優先権は側付きの方が高い。猿よ、良いな』
『はっ!御心のままに』
『順はこの通りだ。狼、象、狐、鹿、二角獣、熊、サイ、鷲獅子、影狼。我の剣とし、盾として任をこなせ。良いな』
『『『『はっ!』』』』
『うぬ、ではこれにて会議は終わりだ。皆、長い間我の話に良く付き合ってくれた。褒めて遣わすぞ』
『『『『勿体なきお言葉』』』』
『では我は行く。猿と狼は随伴せよ』
『『御意に』』
そう言い放ち、我と子竜、狼、猿は部屋から出た。
うぬ、これで語ることはもうないであろう。
これからはより強き獣が現れ、周りの森へその権威を示し、我の名声が高まる。
その先には我が伝説の獣として語られる事間違い無いだろう。
ふふふ、ふはははは!
我、凄い!我美しい!!




