28話 我は我が美しすぎてどうにかなってしまいそうじゃ!!!
「ピィ!ピィ!」
うぬ、よく頑張った。
綺麗に飛んでおったぞ。
我はどうじゃった?
「ピィ!」
ふふ、そうであろう、そうであろう!!!
我も思うのだ。
あの静まり返り、淡い雪が降る中、数多の獣が頭を下げ、我が語ったあの一面!
まるで神話の一枚絵よ!
我は、我は過去一美しかったのじゃ!
空に氷を固定し歩むのもまた、美しかろう!!
はぁ!我は我が美しすぎてどうにかなってしまいそうじゃ!!!
─コンコン
ぬ、感傷に浸ってばかりも居られぬな。
寧ろここからが本番のような物だ。
あの者達の中から誰が欠けるやら。
否、我の気紛れで眷属になった者達よ。
誰が欠けようと我は其奴を責めぬ。
それは我の責任じゃ。
我はその責任からは決して逃げるようなことはせぬ。
さぁ、行くぞ。
猿が我より先に入り、中で待つ獣達へ告げる。
『皆様、王が入られます。』
そして小さな猿二匹が我の前の扉を押し開き、我は三階の会議室へ入る。
子竜も我の後ろについて来ておる。
最も高い壇上へ我は立ち、獣達をみる。
そこには一定の距離を取り、眷族の者達がぐるりと我を囲う。
その更に奥に各群れの長達だ。
眷族は右から狼、狸、象、ウリ、狐、鹿、二角獣、孔雀、熊、サイ、鷲獅子、影狼。
そして我の後ろに控える猿を合わせ十三の眷族だ。
仮眷族の子竜は猿の近くでソワソワしていた。
狸を見つけて遊びたいようだ。
皆我の眷族故に毛色は白かったり青かったりするが、一頭は真っ黒だ。
影狼だ。
やはり影狼に露骨に不躾な目を向けるのはシルバーウルフの雌の狼だ。
お陰でピリついた空気が解けん。
一度諌めるか。
『狼よ、後にせよ』
『っ、はっ』
うぬ、これで良かろう。
さて、我はざっと眷族達を見てみるが、うむ。
どう言うことだ?
まぁ話してみれば分かるか。
『皆、疲れておる所へ我の招集に応じ、良く応えてくれた。褒めて遣わす』
『『『『はっ!』』』』
『お主らが一番聞きたい事は分かっておる。先日我が間抜けを晒し、弱体化した時に判明したお主らとの命の回線の事だ』
皆が我に目を向け聞き逃さぬよう耳を傾けておる。
続けよう。
『言い訳するつもりは無い。謝罪も聞きたくは無いであろう。そして何より、我が認めた獣は、我に命を取られた程度で、その誇りを汚す事なく、勇ましく、気高く在れると確信しておる』
一つ一つ、大きな声にすることなく、それでいて力強く、我は我が認めた獣へ告げる。
『故に我が貴様らへ言うことは一つだ。──我と共に来い』
『『『『はっ!』』』』
十三の獣が一斉に声を合わせ即答した。
やはり我の眼に狂いはない。
が、臣下の声を正しく聞くのが王の務め。
言葉だけではない。
表情や仕草から伝わる内なる本音を聞き分ける能力も求められよう。
故に我は一頭ずつ全身で集中し、裏の声と内なる声を聞き分ける。
我は狼に体を向ける。
『狼よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『何一つございません』
『狸よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『何も無いです!』
『象よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『何もないわぁ』
『ウリよ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『某らには無いでござる』
『猿よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『何も思いつきませぬ』
『狐よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『わっち等にはござんせん』
『鹿よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『何もございませぬ』
『二角獣よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『何もねぇぜ』
『孔雀よ、我に不満や疑問を持ち合わせておるか?種族の代表としての発言を期待する』
『妾達には、無いですわ』
やはり孔雀か。
だが、浅はかさや、迷いがもっと濃いものと思ったが、どうだ。
『孔雀よ、何か思う所があるならば、申してみよ。どんなことでも良い。ここでそれに否を唱える獣が居れば、我が角の一つを差し出そう』
『『『『な!?』』』』
『な、なりませんわ!そんなこと!妾がそんなことで喜ぶとでも!』
『いや、これは我の覚悟の証だ。そして、我が選んだ獣はそのような事はせぬと確信しておる。これは覚悟であり、自信の証だ』
『な、なんと言う・・・』
『さぁ、申してみよ。誰も咎めぬ』
『はぁ、では言いますわ。その・・・』
『うぬ』
『こ、怖かったのですわ。他人と命を共有する感覚なんて、初めてで』
『うぬ』
『我が君が倒れた時、妾の心臓も苦しくなって、怖くて怖くて堪らなかったんですの』
『そうか、まだ怖いか?』
『いえ、謁見での素晴らしき演説を聞き、迷いと恐怖は無くなりましたわ。我が君、これからこの命続くまで、お側にいさせて欲しいですわ』
『うぬ、良く我に嘘偽りなく心情を申した。褒美としてまだお主の声の裏に潜む恐怖、少し和らげてやろう。こちらに来るが良い』
『え・・・?は、はい、ですわ』
こちらへゆっくりやって来た孔雀を我は二又の尾を使い、我に抱き寄せた。
『『『な!?』』』
『あら〜!』
『は、はわわわわわわワガキミ!?』
『これで少しは和らぐか?』
『ははははははいですわはい!』
『うぬ、また恐怖で眠れぬ夜があれば申せ』
『は、はぅ!』
『わ、我が主人!孔雀どのはも、もうよろしいかと思います!と言うか不健全ではございませんか!!』
『ぬ?ああ、狼よ、お主も恐怖に震える時があれば申せ』
『はぅあ!?いえ、そうではなくて!!!』
『うぬ、わかっておる』
『絶対何も分かっておりません!!!』
我は孔雀を戻し、厳かな空気は散漫してしまった。
また後日話すとしよう。
『では熊、サイ、鷲獅子、影狼よ。お主等はまた個人的に話そうと思う。その時は我の為に時間を作ってくれ』
『『『『はっ!』』』』
『では明日、群れの長と眷族達はまたここへ顔を出せ。この森の今後の動きを決める話をするのでな。では今日は皆お疲れであった。』
『『『『はっ!』』』』




