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23話 う、美しい・・・

う、美しい・・・


「ヒュ・・・ン」


ぬぅ・・・まずい。


いつもの様に感傷に浸る場合では、ない。


非常にまずい。


内なる力がほぼ持っていかれた。


まさかここまでとは。


─ガタ


「ピィ!?」


ぬぅ、いつもの姿勢でおられぬ。


子竜が心配しておる。


しまった、お主にその様な顔をさせる事など過去現在未来に至るまで存在せぬと思ったのに、これはまずい。


倒れてしまう。


ダメじゃ、寝ることはあっても倒れ伏すなど我には認められぬ。


クソ、もう暫し待て、子竜よ。


『我が主人!』


ぬ、その姿は、狼か。


いかぬ、奴らは気高き存在を尊ぶ獣。


膝をついたとあっては奴らは我の元から去るだろう。


『支えます』


『よい、邪魔をするな。しばらく待てば、いつも通りだ。それともなんだ。我のこの無様な姿が貴様らの好みか?』


そう言えば狼は顔を怒りに染めあげ牙を見せる。


『私達を愚弄するか』


『ならば疾くこの場から去るが良い。我にも気高く誇りのある精神を持っておるつもりだ。この様な無様な姿を見られ続ければ死にたくなるぞ』


『・・・主人、今私と殿下以外誰も見ておりません。貴方が認めてくださった眷族を信用してはくれませんか?』


『ぬぅ、確かにな。我がそれを否定すれば我は我自身を否定することになる。くふふ、貴様上手いこと言ったな。よく口が回る狼だ。』


『まだ我らを愚弄するか!』


『くふふ、すまぬ。では少し背中を貸せ』


『・・・はい』


『近くに我の寝床となる場所がある。子竜よ、案内してやってくれ』


「ピィ!」


子竜よ、頼んだぞ。


もう意識が保ちそうに無い。





『眠りましたね』


「ピィ!」


『ふふ、殿下。その優しい光はきっと主人を癒します』


「ピィ!」


『ですが、無理をなされて殿下が倒れれば、主人が起きた時に主人は心配なさりますよ』


「ピ!?ピ、ピィ!」


『いえ、もう随分お辛いでしょう?大丈夫、主人の顔は随分楽になっております。殿下のお陰です。そして、次は殿下が休む番ですよ』


「ピィ?ピィ・・・」


『いえ、ちゃんと頑張りました。私はしっかり見てましたよ』


「ピィ!」


『ええ、では主人と共にお眠りください。私がしっかり見ておりますので』


「ピィ!」


はぁ、弱弱しくなった主人の魔力を感じたから急いで来たけど、間に合ってよかった。


それにしても、我が強い獣だ。


あの様な状態でも気高くあろうとし続ける姿勢は私的にはポイント高いけど、あまり無茶をなさらないでほしい。


今や貴方の体は私達と一蓮托生なのだから。


眷族になって分かった事がある。


主人が死ねば、眷族である私達も死ぬ。


ただその代わりなのか恩恵は凄まじい。


強化されたステータスや思考能力、そして微弱だった私の魔力が膨れ上がり、私という存在が進化した。


恐らく種族ごとに伸びた部分が異なるのだろう。


それぞれの得意分野の部分が大幅に伸びたはずだ。


まだ他の眷族には会って無いから分からないが。


いや、一頭いた。


私が一番乗りで縄張りを作れると思えば先にいたのだ。


狸だ。


どうやら殿下の指南役として元々森に住んでいたらしい。


ズルい。


私が主人の一番で有りたかった。


ただその罪悪感からか、後から来た私達に主人の恩恵が宿った氷の木の中で、主人の住処から一番近い氷の木を残してくれていた。


随分と世渡り上手な狸がいたものだ。


私達狼は狸に一つ借りができてしまった。


そして話を戻すが恩恵は他にも多岐にわたる。


氷の木の恩恵は我らでも美味しく食べれる木の実やキノコが取れるのだ。


最初は訝しんでいたけど、一度食べれば心身が若返る様に強くなり、成長が促進されるらしい。


実際私の狼の種族は元はフォレストウルフだったけど、体躯が一回り大きくなってシルバーウルフになった様だ。


私だけ主人と同じ色で優越感に浸っていたけど、皆どんどん白くなってそんな時間は短かった。


むぅ、私だけお揃いだったのに。


そういう事もあって、恩恵は種族を進化させる事も出来るので今まで他の森へ行けず燻っていた獣は有り難がるはず。


死にゆく種族もあったかもね。


ただ、それでも主人が死ねば我らも死ぬというのに納得がいかない獣もいるかもしれない。


私達も知らなかったし、恐らく主人も知らなかった。


時間が経って体が馴染んで来てから薄らとその感覚を覚えたくらいだ。


確信したのは、主人が全ての魔力と幾らかの生命力を使い、弱りきった今だ。


私達の本能が主人に迫る濃厚な死の気配を敏感に感じ取った。


私は本能の赴(おもむ)くまま、全速力で主人の元へ向かいここについたが、無我夢中でどうやってここに来たか分からない。


主人の匂いだけを頼りにここまで来た。


見渡せば氷で覆われた壁と氷の木、泉、そして洞窟だ。


こんな場所、この森にあったっけ。


そして一番目を引くのが、主人の角と同じ、透明で青白く光り、桃色の花びらを散らせるこの大樹だ。


こんな木、見た事がなかった。


なんて美しいんだろう。

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