10話 よし、我、健康診断を受けようと思う。
水面に顔を寄せるとそこには凛々しい大人びた我の顔があった。
幼さは無くなり、オオカミと鹿を合わせた様な顔つきになった。
そこに違和感はなく、左右対称に見事な調和を果たした美しい顔になっている。
そして雄々しい大鹿の様な枝分かれした角が生えておるのだ。
角は付け根部分は白く、そこから先は無色透明で、その輪郭が青く光り存在感を主張している。
そして立派に生えた立髪は濃紺で、頭部の角の付け根から首の下まで生やし、後背中の上をゆらゆらと靡かせていた。
美しい。
我、美しいぞ。
思わず涙が出るほど美しい。
ああ、我ほど美しい獣は世界のどこを探しても存在せぬ。
それほど美しいぞ。
ただ、随分デカくなってしもうた。
少し背の低い木の枝になら顔を上げれば届いてしまう。
牛頭よりも普通に立つだけでずっと大きくなった。
爪も伸びたが、これは変わらずしまえるので大丈夫だ。
尻尾は、二又になった。
元々我の尻尾は白い聖布の様に平たく、細く、長かったのだが、それが二又になったのだ。
どちらも自由に動くし、無意識でも動く。
全身の毛色は薄い青色からそれほど変わっておらぬが、ひし形の白い模様が少し増えたくらいか。
毛並みと艶はさらに“ぐれーどあっぷ”しておる!
うむ、我とんでもなく美しくなった!
「ヒュゥイ!」
声は変わらず高いが、幼さは無くなり、品のある鹿の声の様になった。
素晴らしい。
最強完全体の伝説に出る獣だ。
恐らく同族から見ても大変美しいだろう。
どこにいるか分からぬが。
「ぴぃ!ぴぃ!」
お前も我が美しいとおもうか?
「ぴぃ!ぴぃ!」
そうかそうか、我は美しいか!
そうであろう!美しいであろう!
良し、今日の朝ごはんは焼き魚と卵の殻だ!
用意してやろう!
「ぴぃ!」
よし、我、健康診断を受けようと思う。
あの我の事を教えてくれる部屋だ。
この様に姿変われば何かしら変わっておろう。
あの時下に書いてあった進化なのか?
それともこれが氷君の成体の姿か?
気になったからあの部屋へ向かう事にしたのだ。
「ぴぃ!」
うむ、無論子竜も一緒だ。
ついでに此奴の種族がわかるかもしれん。
どちらにしろ行くしかあるまい。
それにしても、随分急に変わったものよ。
どうやらこの姿になるのに半日ほど寝ておったらしい。
先日は竜の肉を食った位しか覚えがない。
それが原因やもしらん。
よし、では部屋に向かうとするか。
「ぴぃー!」
ぬ、走るでない。
我は二又の尻尾の一つを子竜に巻き付け持ち上げる。
ここは罠だらけなのだ。
我より前に行けば怪我するぞ。
「ぴぃ!ぴぃ」
うぬ、我の尻尾に巻き付いてるのが気に入った様だ。
良い尻尾であろう。
ぬ、我が尻尾に子竜が尻尾で搦めよった。
全く、お主は愛いやつよ。
それにしても、相変わらずこの通路は罠だらけだ。
通路に入る入り口に今立っておるのだが、どうしたものか。
─ピキピキ
ぬ?
考えて立ち止まっておったら我の足元が少しずつ凍っていく。
まさか、成長した事で漏れ出る力が増えたのか。
立っているだけで凍るならば意識的に内なる力を溢れさせ、調整することも出来よう。
やってみるか。
「ヒュイ!」
─パキパキパキ
うぬ、我が行く先の道が凍っていくぞ。
素晴らしい。
まるで“れっどかーぺっと”のようじゃ!
我の場合“ほわいとかーぺっと”じゃな!!
これは正しく伝説の獣よ。
品のある技じゃ。
美しい!
我、もっと美しくなった!!




