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トラップによる窮地


「このダンジョン、中々深そうだな」


 俺たちはいよいよ八層までやってきていた。

 多くのダンジョンは深部ほどモンスターが強くなる傾向にあり、ここもその例に漏れず敵が強くなってきている。


 倒すのに支障こそないが、疲労等も考慮すればそろそろ油断はできない階層だろう。

 初回である今回は調査を優先として細かな探索を省いて進んでいるが、それでもダンジョンに突入してから結構な時間が経っていた。


「こりゃあ、もしかしたら最深部までいけねぇかもな」

「もし十層以上あるなら、何日かに分けて攻略しないと厳しそうね」


 通常、巨大なダンジョンの探索は数日にかけて行われる。


 その理由は純粋に一日で探索しきれないというのもあるが、それ以上にダンジョンの特性によるところが大きい。


 ……ダンジョンは内部にモンスターを生み出す特性があるのは周知の事実だ。

 しかし、そのスピードはそこまで早くないことが知られている。


 つまり、一日目にモンスターを狩りながら進んだ場合、二日目にはモンスターに出会いづらいのだ。

 加えて、一日目に地図を作っておけば、二日目にはスムーズに進行できる。


 そのため、大きなダンジョンであれば数日をかけて攻略することは一般的であった。


「そうだな……十層まで進んで先が続くようなら今日は引き返そう」

「おう、それが無難なところだな」


 そんな会話をしながらも先へと進んでいく。

 敵が強くなってきたと言っても、Sランクパーティーならそこまで大きな問題ではない。


 九層もまた八層と同じようなダンジョンが続き、ついに俺たちは十層へと訪れた。


「これは……ボス部屋か?」

「でも、モンスターの姿は見えないわよ」

「擬態系かもしれない。注意しよう」


 十層は五層に続いて広い部屋となっており、一見するとボス部屋のようだ。

 しかし、モンスターの姿が見えない。


 ボス部屋には必ずモンスターが居るので、姿が見えないというのはおかしなことだった。


「バドルット、魔力探知の魔術は使えるか?」

「任せろ! マジックサーチ!」


 バドルットが魔術を唱える。

 これは一定範囲内の魔力を感知する魔術だ。


 高度な擬態をするには確実に魔力を使うので、モンスターがこの部屋にいるのなら間違いなく見破れるはずだ。


「…………ふむ、いねぇな」

「居ない……ボス部屋じゃないのか?」


 ダンジョンの構造には謎も多い。

 多くのダンジョンに共通する特徴もあるにはあるが、例外も存在する。


 このただ広いだけでモンスターが居ない部屋が何なのか俺にはよく分からなかった。


「何らかの原因でボスが死んだとかか?」

「そんなことあるか?」


 一応、モンスター同士が争うことはある。

 それでボスモンスターが倒されたというのは聞かない話だが、ありえない話ではないだろう。

 偶然、俺たちが突入する直前にモンスターが死に、まだ再度生み出されていないのかもしれない。


「一応警戒は解かないで進もう。モモを先頭にして、できる限り離れないように動くんだ」


 もしボスモンスターが死んでいるだけだったら警戒する意味はない。

 しかし、魔力感知にもかからないような高度な擬態技術を持っている未確認モンスターという線もあり得なくはないのだ。


 次の階層への道は四角いボス部屋の対角に存在しているので、俺たちは警戒を強めながら進んでいく。

 そして、真ん中あたりまで進んだところで、一度立ち止まった。


「やはり何も居なさそうだな」

「このまま進もう」


 モンスターが擬態しているのならさすがに襲ってくるはずだ。

 動きがないということは、モンスターはやはり居ない可能性が高い。


 そして、ボス部屋にはトラップはないのでトラップの心配もほぼない。

 そもそも、魔力感知で反応がなかったわけだしな。


 ……だが、俺の考えが甘かったことを悟ることになる。



 ギィィィバタン!


「なんだ!?」


 その音はより地下の方から聞こえてきた。


 ギィィィバタン!

 ギィィィバタン!


 その音は連続で鳴り、徐々に大きくなってくる。


「まずい、走れ!」


 しかし、気づいた時にはもう遅かった。


 ギィィィバタン!


 その音ともに、床がパッカリと開いた。

 俺たちは蹴るはずの地面を失い、宙に放り出される!


「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

「きゃああああああ!!!」


 急速に死が迫ってくる感覚を覚える。

 心臓が縮こまり、恐怖が脳を支配する。


 しかし、それでもここで死ぬわけには行かない!


 俺は落ちながら思考を回す。

 これは……古典的な落とし穴トラップだ。

 ダンジョンでは滅多に見られない魔力を使っていないトラップ。

 まさか、魔力を使わないトラップでここまで大規模なものがあるなんて、思いもしなかった。


 かろうじて地面が見えているが、ぐんぐんとそれが迫ってくる。

 助かるためには……これしかない!


「水の魔術缶!」


 俺はとっさに地面に向かって魔術銃を発射する。

 込めた魔術は水。


 手持ちの水の魔術缶をすべて消費し、とにかく地面に向かって水を放出した。

 それによって、底には水が貯まる。


 しかし、どちらにしてもこの速度で落ちれば水だろうとただでは済まない!


「バドルット! 全力で風の魔術を下から吹かせるんだ!」

「うぉぉぉぉぉぉ!!! ウ、ウインドォォ!!!!」


 バドルットの風の魔術により落下速度が少しだけ遅くなる。


 バシャァン!

 それにより、俺たちはどうにか事なきを得たのであった。


 と言っても、それは不幸中の幸いというだけであり、良い状況とは言えないのだろうが。


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