アブラス地下遺跡ファーストアタック
アブラス領、未開ダンジョン。
仮称、アブラス地下遺跡。
その入口は地面に掘られた穴の底にあった。
「ここがアブラス地下遺跡か!」
俺たち四人はあれから二日後にアブラス地下遺跡へと出発した。
一日かけてアブラス領に入って、近隣の村で宿泊する。
そして、万全の状態で地下遺跡へとやってきた。
「どうやら地下階段みたいだ。俺が先導する」
地下遺跡の入り口は土に埋まっていた地下に続く階段だった。
土は既に片付けられており、入るのに何の問題もない。
地下遺跡なので内部には外の明かりは差し込んでいないが、どうやらそれなりに明るいようだ。
これは多くのダンジョンに見られる特徴である。
諸説あるが、ダンジョンに蓄えられた魔力が発光してダンジョン内部は明るいのだという。
「モンスターが出たら俺は下がるから、モモが前に出て攻撃を受けてくれ。ただし、トラップを警戒するために俺が出ている位置より前には行かないようにしてくれ」
「……わかった」
すでに鎧形態となっているモモが返事をする。
基本的にファーストアタックの際に気をつけるべきことは二つだ。
一つはモンスター。
どんなモンスターが出てくるか慎重に見極めて進まなくてはならない。
俺はモンスター図鑑を元にほとんどのモンスターの知識を覚えているが、図鑑に載っていないモンスターの場合は見た目から危険度を推測する必要がある。
もう一つはトラップ。
ダンジョンには罠が仕掛けられており、それで命を落とす冒険者は後をたたない。
中には一人がかかったらパーティー全員が窮地に陥るようなものまである。
ただし、ダンジョンに用意されたトラップは使い切りのものがほとんどであるため、探索が隅々までされているダンジョンでは気にしなくても良いことが多い。
今回はファーストアタック……俺たちが最初に入るので十分な警戒が必要となるだろう。
「そこにトラップがある」
遺跡を少し進んでいくと、早速トラップを見つけた。
「どうして分かるんだよ?」
バドルットがそう聞いてくる。
その疑問ももっともだろう。
冒険者の中にはトラップの発見を専門とする者がいる。
また、トラップは魔力由来のものばかりなので、魔術師が探知するパーティーも多い。
しかし、俺はそのどちらでもなかった。
「これを使っているんだ」
俺は右手に持った棒のようなものを見せる。
「なんだそれ?」
「魔力共鳴石でできたロッドだ」
魔力共鳴石はその名の通り魔力と共鳴する素材だ。
魔力を感知すると共鳴石はその方向に引き寄せられる。
「それでどうやってトラップが分かるんだよ?」
「トラップは魔力由来のものが多いから、ダウジングの要領でロッドの動きを見てトラップの位置を特定しているんだ」
「そんなことができるのかよ?」
これは俺が必要だから練習して身につけた技術の一つだ。
前のパーティーではトラップを発見する係がいなかったから、いつの間にか俺が気をつけるようになっていた。
その中で編み出したのが魔力共鳴石のロッドを使ってトラップを発見する方法だ。
これにはある程度経験が必要だから誰でもできるわけではない。
「まぁいいか。マグナがそう言うなら、解除は俺の出番だな」
そう言ってバドルットが杖を構える。
……が、俺はそれを止めた。
「解除も俺がやるからバドルットは魔力を温存しておいてくれ」
「解除もできんのか!?」
一般的にトラップの解除は魔術師が行う。
多くのトラップは発動前に魔力を流し込むことで動作を停止するのだ。
しかし、トラップが多いダンジョンでは魔術師の負担が大きくなってしまう。
「これを使うんだ」
俺は【在庫管理】から魔力結晶を取り出す。
魔力結晶は魔力を多く含む結晶だ。
それを俺はトラップの位置へと投げ入れた。
ジッ!
地面に当たった魔力結晶が砕けて含まれていた魔力が放たれる。
この魔力結晶にはあらかじめ衝撃を加えると砕けるように細工をしていた。
魔力結晶から放たれた魔力によって、トラップは動作を停止する。
もう一度ロッドを取り出してトラップが本当に動作を停止したか確かめ、これでトラップの解除は終わりだ。
「大丈夫だ。トラップは解除した」
「マジかよ……雑務最強の男って言われるだけのことはあるな……」
「その技能だけでも十分食べていけそうなほどね」
ふう、問題はなさそうだな。
これでバドルットの魔力を温存することができる。
マナポーションを使うという手もあるが、魔力結晶の方が省スペースだしバドルットへの負担も軽い。
また、魔力結晶はマナポーションと比べても安価だ。
「さぁ、いこう。トラップは全部俺に任せてくれて構わない」
そうして地下遺跡を進んでいくと、今度はトラップではなくモンスターに出くわす。
あれはスケルトン……俺たちのパーティーなら雑魚と言っていいだろう。
また、この時点で少なくともこの階層にはそこまで強力なモンスターが居ないことが予測できる。
モンスター同士は互いに争うこともあるため、強力なモンスターが居る階層には弱いモンスターが出ないことがほとんどなのだ。
「この先の事がわからないからバドルットの魔力は温存して、モモとセシリアで倒せるか?」
「分かったわ」
モモがわざと音を立ててスケルトンをおびき寄せる。
そのまま突進してきたスケルトンをモモは難なく弾き、セシリアがスケルトンの弱点である芯骨を破壊した。
スケルトンは芯骨と言われる骨を破壊することで倒すことができる。
「問題なさそうだな。どんどん進んでいこう」
俺たちは難なくアブラス地下遺跡を進んでいった。
二層、三層、四層。
下に行くごとにモンスターが強くなっていたが、十分に対処可能な範囲だ。
そして踏み入れた第五層。
そこは、このダンジョン初めてのボス部屋だった。




