97 刀の秘密
ニュードラグーンには王宮というものがない。
なぜなら国王が金がかかるからと言って造らせなかったからだ。
というより、国王が初めて愛した女性との思い出の場所から離れたくなかったからである。
国王ファブリス=ドラグーンは屋敷内にあるオフィスで紅茶を飲みながら腰に差していた刀を見つめていた。
この部屋は元々テイラーの部屋だったが、彼女が二年ほど前にできた第一軍の基地に配属になって空き部屋になったので使わせてもらっているのだ。
扉の奥からコンコンと音がする。
「どうぞ」
彼が返事をすると扉が勢いよく開き、一人の少女が部屋に入ってきた。
「ただいま! ファブリスお兄ちゃん!」
「あぁ、おかえ……痛ッ!」
手に握っている刀からビリッと電撃が走る。
危うく刀を落としそうになったが床に落ちる直前でキャッチしたのでセーフだ。
「大丈夫?」
少女が心配そうに聞いてくる。
この少女は彼の屋敷に居候している同居人だ。
名をフレイヤ=オーウェンと言う。
フレイヤの成績は大変優秀で学校も飛び級し、いまは11のメンバーだ。
かつては11というものはとにかく強い奴らが集まるというイメージが強かったが、彼女のような成績優秀者が入ったことでいまはエリート部隊というイメージが強く持たれている。
「大丈夫。心配してくれてありがとう」
そう返すとフレイヤは嬉しそうに笑った。
「痛ッ!」
再び手にビリビリと電流が流れ込んでくる。
「大丈夫!?」
今度こそフレイヤは血相を変えて駆け寄ってきた。
「うん、大丈夫。またコレが……」
そう言って彼は刀を握っていないほうの手で刀を指さす。
するとフレイヤは「あぁ、なるほどね」と納得したような顔をした。
この刀はファブリス以外の人物は触ることができない。
つまり、先程のように刀が高圧電流を流すことで誰も触れることができないのだ。
いわばゼロ距離で発生する結界。
しかしこれには例外があり、なぜかファブリスだけは触ることができるのである。
そんなファブリスのからだにもたまに電流が走ることがある。
それは女性と仲良く話をしているときだ。
彼が女性と話す機会はほとんど無いがフレイヤのような同居人や国同士の交流で女性と会話をすると、こういうことが起こる。
彼としては彼女そのものである刀を一時も放したくないので自分だけ触れるのはありがたいが、女性と話すときにビリビリしてくるのはやめてほしいところだ。
その時、服に織り込まれた通信の魔法から音声が聞こえた。
『ニュードラグーン東部に敵影を確認。第一軍、その他部隊は待機』
その音声はフレイヤにも聞こえたらしく、彼女は急いで部屋から出て行った。
「さて、俺も出るか。移動短縮魔法」
彼の目の前に魔法陣が浮かび上がる。
そして彼は腰に刀を差しながらそれに入っていった。
『ニュードラグーン東部に敵影を確認。第一軍、その他部隊は待機』
ジョルジュはその音声を聞きながら考え事をしていた。
あの女の子の言ったことは本当なのだろうか。
もし本当なら自分は国王を殺さなければいけない。
しかしそれは国家反逆罪になる。
さてどうしたものか、と彼はため息をつきながら部屋を飛び出した。




