84 エルフリーデ=パターソン
俺とファブリスはその親戚の家に来ていた。
しかし俺はその家に見覚えがあった。
というより……
「ミカンのおばちゃんの家、じゃねぇか……」
「え? なんて?」
「なんでもない!」
俺は慌ててファブリスに言い返す。
すると彼はなにもなかったようにインターホンを押した。
「はーい」
なかから聞き覚えのある声が聞こえ、扉が開いた。
できれば違ってほしかった。誰か違う人が住んでいてほしかった。
でも現実はそう甘くはない。
「おやおや、可愛いお客さんだね?龍之介、この子は彼女さんかい?」
「ち、違うよ!」
その人物は正真正銘、ミカンのおばちゃんだった。間違いない。
見た目は普通だが俺はその瞳の奥に潜んでいる強力ななにかを逃しはしなかった。
《『鑑定』を開始します》
俺は二人が話している間、ミカンのおばちゃんを鑑定しようとする。
しかし……
《『鑑定』が妨害されました。再び『鑑定』を開始…………妨害されました。再び『鑑定』を開始しますか?》
NO!
《『鑑定』を停止しました。…………個体エルフリーデ=パターソンが個体ルーナの神聖領域に侵入しようとしています。迎撃しますか?》
そうしてくれ。
《『天の加護システム』50%のみ稼働可能です。起動、確認しました。…………神聖領域の侵入の妨害を確認しました》
ミカンのおばちゃんがじろりとこちらを一瞥する。
それから何度も俺の神聖領域(?)に侵入されそうになったが、それをすべて天の加護が弾いてしまった。
「二人ともここで立ち話も何だから、上がっていきなさい」
ミカンのおばちゃん、いやエルフリーデがキレ気味にそう言ってくる。
あんまり入りたくねぇな。
「そうするよ」
はい確定!オワタ。
ファブリスのこの一言によって俺は家のなかに入ることになってしまった。
実際、なんかこの人強そうで怖かったけど記憶を取り戻すためだ。
仕方ない。
俺たちはエルフリーデに促されて椅子に座る。
それと同時にファブリスがころりと眠ってしまった。
「ファブリス!? おい、ファブリスになにをしたんだ!」
俺は反射的にエルフリーデに突っかかる。
「なーに、心配することはない。ただ眠ってもらっただけだよ。それよりアンタ、この世界の人間じゃないね? アタシの『鑑定』も弾かれちまったし……。一体、アンタ何者だい?」
「……アンタが先に自己紹介してくれ。俺はアンタの名前しか知らないんだ」
「……? だったらアタシの正体はとうにわかるはずだよ?」
「なに?」
俺がそう問うと誇らしそうに胸を張ってエルフリーデは言った。
「アタシはエルフリーデ=パターソン。龍神だ!」
「へぇ……龍神ねぇ…………!? 龍神!?」
「そうだよ!」
もしかしたら、と心のなかで思っていたけど本当にそうだったとは……
じゃなくて!
俺はここに何をしにきた?
ファブリスの記憶を取り戻しに来たんだろ!アホか!
「今度はアンタの番だよ」
「あ」
俺はエルフリーデに言われてはっとする。
そして自分の自己紹介を始めた。
「俺は……」




