82 彼シャツ
その後、浅岡が根も葉もない噂を流したことで俺は色々と面倒なことに巻き込まれることになったのだがファブリスとユカが必死に噂を否定してくれたので騒動は落ち着いた。
しかし浅岡ファンの女子はそのことを全く信じておらず、俺にずっと嫌がらせしてきている。
まぁ、でもほとんどの人の誤解は解くことができたので二人には感謝しかない。
でも俺はそんなことよりユカの成長に涙していた。
やはりユカは根はいい子だったのだ、とさらに成長したユカを見て俺はそう思う。
ユカがかなり小さかった時、例えば幼稚園生の時は小学生の時のように悪い子ではなかった。
要するにいまのように素直な子だったのだ。
いやぁ、あの時は可愛かったなぁ。いまはもう写真は見れないけれど。
「じゃあ私、部活だから。また明日ね!」
ユカがそう言って俺のそばから離れていく。
「うん、また明日」
俺は彼女を見送ると傘を回収するために傘立てを見た。
俺は今日は結構雨が降っていたので傘を持ってきていた。
それなのに……
「ない……?」
そう、絶対にあるはずの傘が無いのだ。
まさかあの勘違い野郎のファンの仕業か?いや、ここまでやらないか。
でも……やつらならやりかねない。
いやいやそんなことはどうでもいいんだ。
いまはこの状況をどうやって突破するかが最優先事項だ。
A.誰かの傘をパクる B.誰かの傘に入れてもらう C.猛ダッシュで家に帰る
バレなきゃ犯罪じゃないんですよぉ、と一瞬ヤバい思考に陥りそうになったが俺はCを選ぶことにした。
Bは誰かに迷惑を掛けるといけないし、Aはそもそも犯罪だ。
ということで消去法で俺はCを選んだ。
俺はふと窓を見る。
窓の奥では大量の雨がザァーザァーといつまでも降っていた。
俺はびしょ濡れのまま家の扉を開けた。
しかし家のなかにはファブリスはいなかった。
そこで俺は彼が生徒会があるからすこし今日は遅れると言っていたのを思い出した。
「まぁいっか。お風呂入ろ」
俺はカバンを放り出し、お風呂場に向かった。
そしてポイポイと服を脱ぐとシャワーを浴びる。
しばらくすると家の玄関から扉が開く音と「ただいま」と言うファブリスの声がした。
俺はシャワーを止めてバスタオルを巻いてから彼を出迎えた。
「おかえり。はやかったな」
そう言うと彼は靴を脱ぎながら答える。
「なんかすぐに終わるやつだった。って……服着てくれないか?」
「……? なんで?」
「いやだってお前、女の子なのにバスタオル姿を男に見られて抵抗ないわけ?」
「ない!」
俺は元気よく断言する。
そういえば前にもこんな会話したなぁ。
「えーと、まず服着ろ」
「はいはい」
俺は彼に言われて服を着に、テントに入る。
服を選ぶにはそう時間はかからなかった。
「どうだ!」
俺はテントから勢いよく飛び出す。
「がはっ……」
ファブリスが俺を視界に捉えたとき、彼の鼻から大量の鼻血が出た。
この時、俺は下は下着、上はシャツだけという俗に言う「彼シャツ」というような恰好をしていた。
「ちょっと、お前……」
ファブリスは鼻にティッシュを詰めると俺に力が抜けたようにフラフラと近づいてきた。
To be continued!




