81 告白
放課後。
俺は靴を取り出すために下駄箱の扉を開いた。
普通、多くの学校では下駄箱は玄関に置いてあることが多いがうちの学校は教室の外に下駄箱がロッカーのように設置されていた。
俺は下駄箱から靴を取り出し、上履きを入れようとする。
だがそこにはなぜか一枚の紙、というより手紙が入っていた。
俺はもしかして、と嫌々それを見る。
「はぁ……」
予想通りだったと俺はため息をついた。
それを面白そうにファブリスが横から覗いてくる。
「また告白か?」
そう、最近こういう告白が多いのだ。
おかげ様で女子からは妬まれて本当に大変なことになっている。
「そうでないことを祈る」
俺がそう言い返すとファブリスは笑いながら続きを言った。
「そういえばこないだは学校一のイケメン、浅岡先輩に告られていたよな?あれも断っちまったのか?」
「うん、断った。ていうかそもそも私、ああいう勘違い野郎嫌い。まぁどんなやつが来てもOKするつもりはないけど」
その言葉を聞いて彼はほっと息をついた。
なぜだか知らないが、彼女が誰ともカップルになろうとしていないと聞いて彼は安心したのだ。
しかしなぜ安心したのか自分には理解できない。
その理由は恐らく記憶を失う前の自分が知っているのだろうと彼は思った。
「なんか校舎裏に来いって書いてある。いまから行ってくるわ」
俺はそう言うと校舎裏に向かった。
それをファブリスはバレないようにこっそりと後をついて行った。
俺が校舎裏に到着するとそこには既に先客がいた。
げっ……
俺はその人物を見て顔をしかめる。
それは先程も話題に上がった勘違い野郎、浅岡敏郎だった。
「やぁ、来てくれたんだね」
「…………」
見た感じはただの爽やかな少年だが、少々彼はヤバい部分がある。
「なぁ本当に俺の彼女にならない?」
そう言って彼は俺に近寄ってくる。
「近づかないでください」
俺はそろりと後ろに後退した。
前回はヤバいと思ったところで逃げだしたから良かったが、今回はマズイかもしれない。
というのは後ろには壁しかなく、逃げる場所がないからだった。
ついに俺の背中が壁にぶつかってしまった。
するとチャンスとばかりに浅岡は俺の顔の横に壁ドンと呼ばれる行為をする。
それと同時に俺の顔が恐怖で真っ青になった。
「なぁ……もうすこし素直になれよ……」
浅岡が顔を近づけてくる。
嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。
こんなの嫌だ。気持ち悪い。
好きでもない相手とやるのは絶対に嫌だ。
でも逃げられない。足が動かない。
動けよ!動いてくれよ!
しかし足は俺の期待には応えてくれなかった。
なんで……なんでだよ!
嫌だ。こんなの……
誰でもいい!助けてよ……
俺の瞳から涙が溢れる。
そんな俺をもてあそぶように浅岡は顎をクイッと持ち上げた。
俺は顔を横に向ける。
すると浅岡が強引に顔の向きを変えた。
助けて…………ファブリス……!
「おい」
「あ?」
浅岡の肩を誰かが掴む。
「嫌がっているだろう。やめてあげろよ」
その人物がそう言うと浅岡は不機嫌そうに答えた。
「おい、邪魔すんなよ。いいところだったのに……」
「いいところ?どこが?彼女は嫌がっていただろう?」
「嫌がってるだぁ?俺に告られて嫌がる女なんかいねぇよ」
「そこにいるけどな。さっきなんかアンタのことを勘違い野郎だって言ってたぜ?」
「……お前、何者だ?」
どうやら浅岡は自分が勘違い野郎と言われたことよりも彼の正体が気になったようだ。
「俺は黒宮龍之介。彼女の……パートナーだ!」
パートナー。
それは同居人でもあり、友達。
そういう意味で彼は言ったのだろう。
だが浅岡は違う意味でその言葉をとらえてしまった。
「まさか……枢木の彼氏?」
俺はちっがーう!とツッコミたくなったが、この勘違いを利用することで問題が解決すると思い彼の腕に抱き着いた。
「そうです!この人は私の彼です!」
「ちょっ……」
彼はなにか抗議しようとしたが下から投げかけてきた少女の泣きそうな視線に口を閉じる。
そんな様子を見てか浅岡は逃げるようにどこかへと行ってしまった。




