75 転校生
黒髪の彼、黒宮は学校で窓の奥に映る青空を見ていた。
彼の席は隅っこにあるよく空が見える席だった。
「ねぇねぇ、先生遅くない?」「それな!」
彼のまわりは騒がしい教室の雰囲気とは反してとても静かだ。
そのわけは彼がまわりの人間を無意識に近寄らせないためだった。
そんなことも知らず彼は銀髪の少女について考えていた。
(あのルーナという子……今頃どうしているだろうか?なんか勝手に家にテントを置いてなかに籠っちゃってたけど……。しっかしあそこまで男みたいな話し方だとは思わなかったなぁ)
その時、教室の扉がガラガラという音をたてて開いた。
女子たちが一斉に散っていく。
「おはようございまーす!みなさん元気でしたか?」
彼女は彼のクラスの担任で綾部海鈴だ。
彼女の特徴は低身長に20代とは思えないほどの童顔、そしてそのフワフワとした口調である。
「今日はみなさんにお知らせがあります!」
綾部のその一言に教室中がざわつく。
それを綾部が「静まれー!」と言って抑えた。
「実はですね、この門脇高校に転校生がやってきました。しかも女の子ですよ!喜べ野郎ども!残念でした子猫ちゃんたち」
その言葉に男子は喜び、女子たちはどんな子が来るのだろうとときめく。
「さぁ!転校生ちゃん、入ってきてください!」
そう彼女が言った次の瞬間、教室に一人の少女が入ってきた。
黒宮も入ってきた彼女を目で追う。
その少女は彼にとって見覚えのある人物だった。
すらりとした背中に白い髪、それに誰もが釘付けにされてしまうほどの美しい顔。
それは決して見間違いではない。
転校生の少女はルーナだった。
「ル、ルーナさん!?」
彼は思わずガタリと立ち上がる。
なんで立ったのか自分でもわからなかった。
まわりの人たちがいつもとは違う様子の彼を見て、また騒ぎ始める。
「では転校生ちゃん、自己紹介を」
「はい」
少女は綾部に促されて黒板に名前を書き始める。
しばらくすると彼女は名前を書き終えた。
そして自分たちにむかって振り返る。
「枢木ルーナです。よろしくお願いします」
拍手が教室に湧く。
それを慌てて座った黒宮とルーナは黙って見ていた。
(なんでルーナさんがここに!?)
はっきり言って彼は混乱していた。
すこしすると彼はルーナが自分のこと追ってきたということに気づく。
落ち着いた彼はまた空を見始めた。
その様子を見て、ルーナはすこし微笑む。
いやぁ、いきなり俺が来てびっくりしただろうなぁ。
その微笑むという行為が男子たちの視線を釘づけていることに気づかずに俺は心のなかで呟いた。
ちなみにこの枢木という名前はあのクソ女神からありがたく頂いた名前だ。
この世界ではなにかと苗字があったほうが便利だからと俺は仕方なくこの名前を使わせてもらった。
「では枢木さん、黒宮君の隣に座ってください」
「はい」
俺は先生に促され、彼の隣の席に座る。
それから朝のホームルームは終わったのだが、次はまわりの生徒たちに質問攻めにあった。
だけどそのなかに成長した妹の姿があったのを俺はまだ、知らなかった。




