72 黒髪の彼と銀髪の少女
俺はあのクソ女神に頭を下げてお願いしていた。
「頼む。ファブリスの居場所を教えてくれ。条件は満たせなかったけど一人は無力化したし、もう一人は両腕を斬っといたから」
俺は何回もこのクソ女神に頭を下げ続ける。
本当はこんなやつに頭なんぞ下げたくはないが、ファブリスのためだ。
仕方ない。
そもそも俺にはファブリスをニュードラグーンに連れて帰るという義務がある。
だからはやくファブリスのこちを見つけたいのだ。
「頼む!」
するといままで反応がなかったクソ女神がやっと口を開いた。
「まったく……しょうがないですねぇ。だったら彼のところに連れて行ってあげますよ。ただし条件付きですがね」
「本当か!?」
俺はガバッと頭を上げる。
「まぁまぁ……落ち着いてください。私は条件付きと言ったんですよ?それでもいいですか?」
「構わない」
俺がそう言うとクソ女神は真面目な顔をして答えた。
「では目を閉じてください」
俺はクソ女神の言う通りに目を閉じる。
《スキャニングを開始……完了。これより異世界への転送を開始します》
俺のからだを光が包む。
そして物心ついたときには俺はもうそこにはいなかった。
とある新宿区にあるアパートの一室。
ここには一人の黒髪の高校生が住んでいた。
彼の顔は世間一般ではイケメンと呼ばれるような顔立ちだったが、その不思議な雰囲気から誰も彼に近づこうとしない。
ちなみに彼は気づいていないが意外と女子から人気である。
恐らくそのミステリアスな部分が魅力的なのだろう。
だが彼は女子とは決して話さず、男子としか話さない。
その理由は彼にはよくわかっていない。
ただ女子に対しては嫌悪感が湧くのだ。
彼は部屋の片隅に座って本を読もうとする。
その時、彼の部屋のインターホンが鳴った。
彼はすぐに扉に駆け寄っていく。
そして彼は相手の顔を確認せずに扉を開けた。
「…………」
「…………」
扉の奥にいたのは銀髪というか、白い髪をした美少女だった。
彼はこの少女を見た瞬間、胸がドキドキするような感覚がした。
「あの……どちら様で?」
彼は意を決して少女に尋ねる。
彼がそう言うと少女はなぜかすこし悲しそうな顔をしながら答えた。
「やっぱり覚えていないんだね」
まるで鈴のような声だった。
さらに心臓の音がうるさくなる。
(この子は……なんだか会ったことがあるような気がする。そう、もっと前に……)
彼はしばらくその少女に見惚れていた。
「あの……」
彼は少女の声により、我に返る。
「す、すみません!あ……えーと……とりあえずなかに入りますか?ずっと外にいるのも何ですし」
彼が慌ててそう言うと少女はコクリと頷き、なかに入っていく。
(いけない、いけない。こんなにも可愛い子を外に立たせたままにするところだったぜ)
彼はそう頭のなかで思いながら扉を閉めた。
彼はお茶を簡単に入れるとちゃぶ台のそばに座る少女の前に置いた。
「どうぞ」
彼がそう言うと少女は笑顔で彼に答えてくれる。
しかしその笑顔はどこか寂しそうだった。
「ありがとうございます」
少女はお茶を一口、飲むと話を始めた。
「私の名前は……」




