38 少女と黄色い花
杉浦は一体のアンフィスバエナの背中に乗って空を飛んでいた。
そしてその隣には真っ黒な龍が飛んでいる。
『スギウラ様、目的地に着きました』
「わかった。降ろしてくれ」
そう命じると彼女が乗っている龍が降下する。
そして着地すると降り、その龍は人型に姿を変えた。
後ろに続いていた龍も人型に姿を変える。
杉浦は部下たちを引き連れて街に入っていった。
最初は田んぼやら畑やらがあったのだが段々と西洋風の建物が見えてくる。
「お前たちはNO.11とドラグーンを探せ」
「畏まりました」
部下の5人が急いで街に駆け出していく。
「さて、私も始めますか!」
彼女は楽しそうにそう呟くと街に向かって駆け出して行った。
俺とファブリスは朝食を食べたあと、やることもないので散歩をすることにした。
だが正確には俺たちの仕事は街の様子を視察することだ。
獣人の里がニュードラグーンとなって二日目だが、そこが前からあったように民は過ごしていた。
恐ろしい適応能力である。
街は真ん中にある広場を中心にして商店街があり、それを囲うように木々が生えていた。
道は横幅が広く夜とかは女性に安心なつくりになっている。
基本的には家同士はすこし離れていて緑がよく目立っていた。
俺たちの屋敷がある地域は龍がたくさん過ごしていてなかなか獣人たちは立ち入らない。
だが商店街には行きやすく色々と助かっている。
俺たちの横を子供たちが駆けてゆく。
この街は笑顔で溢れていてとても素敵だ。
俺の住んでいた街は近所付き合いというものが全くなく笑顔が見えなかった。
あの場所は人々が嘘という名の仮面を被りながら話していて心地悪かった。
それに比べてここは近所同士で助け合って過ごしている。
そしてここでは人々が素のままで過ごしているのだ。
こんなに素晴らしい場所があるだなんて自分でも信じられない。
その時、俺にひとりの女の子が近付いてきた。
「お姉ちゃん、大丈夫?」
「え?あぁ、うん大丈夫」
俺がそう答えると彼女は後ろに持っていたなにかをこちらに差し出してくる。
「これあげる」
それは小さくて黄色い花だった。
「これを、私に?」
「うん!」
俺はその花を受け取ると瞳から自然と涙がポロポロと流れた。
「お姉ちゃん、なんで泣いてるの?」
たぶんこの女の子の優しさに感動したのだと思う。
あちらの世界ではこんなに優しい子がいなかったから。
俺は花を持っていないほうの手で涙を拭うと少女に感謝の言葉を述べた。
「ありがとうね」
俺は少女に微笑みかける。
すると少女は満足したように俺にニッコリと笑った。
そしてどこかへと走り出そうとする。
だがその時、俺の瞳がこれから起こる未来を映し出した。
俺はその子の手を掴む。
「わぁ!」
そしてその子を抱き寄せると俺は上にむかって手を突き出した。
「『シールド』!」
俺の指先から緑色のシールドが張られた。
そこに天井から赤い豪雨が降り注ぐ。
街に叫び声が響いた。人々が逃げていく。
「あなたは逃げて」
俺は女の子に逃げるように言う。
「お姉ちゃんは逃げないの?」
「私はあれを倒さなきゃいけないから…」
俺は空を見上げる。
そこには口元に笑みを浮かべた悪魔が俺を見下ろしていた。




