35 獣人の里
俺たちはとある場所に向かって飛んでいた。
「あの…ファブリスさん、本当に私なんかが乗っちゃってよかったんですか?」
『大丈夫ですよ。あと俺はもう国王じゃないから全く問題ないです』
ファブリスがセレスティアに答える。
「ファブリスさんがそう言うなら…」
「ファブリス!あれ違う?」
同じくファブリスの背中に乗っていた俺が森にむかって指を指した。
木々の間から木に設置された家が見える。
『着いたみたいだな』
ファブリスが森に向かって降下する。
それに釣られて他の龍たちも降下を始めた。
『ルーナ』
「わかってる」
俺は前にファブリスにやられたようにセレスティアをお姫様抱っこしてゆっくりと降下する。
アルバート爺さんやナディーヌさんは先に降りたようだ。
みんな人型に変形しその森に降り立つ。
降り立ったところにはたくさんの人がいたがそれらの人たちにはあるひとつの特徴があった。
俺たちの前に長老らしき人物が歩み出る。
「皆様、ようこそいらっしゃいました我が獣人の里へ」
獣人の里。
その場所は龍種を神聖視している獣人たちの里。
それゆえ、俺たちはこんなにスムーズに入ることができたのだ。
本来ならすぐに誰かが威嚇して入ることができないのだが。
俺たちはすぐに宿に通された。
「こんな宿で申し訳ございません。すこし待っていただければお屋敷をつくることは可能なのですが……そんなに滞在されませんか?」
「いや、むしろずっとここにいさせてほしいのだが…迷惑か?」
「と、とんでもない!いますぐ屋敷の建設の準備に取り掛かります!」
そう言うと長老はすぐに宿から飛び出そうとする。
「待ってください!」
俺が呼びかけると長老は猛ダッシュで戻ってくる。
アンタいくつだよ…
「あの…その私も屋敷の建設のお手伝いをさせてもらうことはできますか?」
「はい?」
自分でも無理なお願いだとはわかっていた。
しかしこの人たちにだけやらせるなんて俺の良心が許さない。
「俺にもやらせてください」
「ファブリス?」
ファブリスが頭を下げる。
こいつもかなりのお人好しだな。
ファブリスに釣れられてみんなが私も私もと長老にお願いする。
「し、しかし…」
「頼みます!」
俺たちが諦めずに頼み続けると長老は根負けしたように了承した。
「でも皆さん、無理はあまりしないでくださいよ?いつでも休憩してくれていいですから」
こうして俺たちは屋敷をつくるためのお手伝いをすることとなった。
まず獣人側が設計図を描いている間に俺たちは木を伐る。
これが大変な作業で獣人も龍も大変そうだった。
俺以外は。
俺は刀を横に一閃し『伸縮刃』で一斉に木を伐った。
木々が大きな音をたてて倒れる。
「団長すごいっスね」
エヴェリンも思わず呆けている。
「だろだろ?まぁ俺が伐ってたらみんなの分がなくなっちゃうから残しといてやるよ」
俺はニッコリと微笑みかける。
「ありがとうございます。まぁ嘘なんだけど」
「ははは…」
その時、奥のほうで木が倒れる音がした。
その方向を見るとアルバート爺さんが木を殴って倒している。
「アルバート爺さん、すげぇな」
「だな」
それから俺とエヴェリンはしばらく呆気にとられてアルバート爺さんを眺めていた。




