33 エヴァンス侯爵家と龍神の剣
俺は新しくお茶を入れなおしたカップをセレスティアに渡した。
「なんでこんなことをしようとしたか教えてくれますか?」
俺はセレスティアの隣に腰掛けながら尋ねる。
「はい。実は私はお父様の命令であなたの調査と暗殺をしてこいと言われていたんです」
「お父様っていうのはエヴァンス侯爵のことですか?」
セレスティアがコクリと頷く。
「でもなんで…?」
「私の家はずっと王位を狙っていました。それである時、ドラゴナイトからある取引を持ち掛けられたのです」
「取引?」
「はい。その取引というのはあなたとファブリスさんを殺すかわりに国王にしてやってもいいというものでした」
「なるほど……」
これならエヴァンス侯爵がセレスティアをファブリスに近付けようとしていたのも納得だ。
「でも今回は失敗したけどエヴァンス侯爵は絶対に諦めませんよね?失敗した場合はなにか聞かされてませんか?」
「すみません。そこまでは…」
セレスティアは申し訳なさそうに俯いた。
「そうですか。まぁ今日はゆっくりしていってください。良かったら泊っていきます?」
「いいんですか!?」
「はい。ファブリスさんはいつも王座の間の仮眠室で寝ていますし問題ありませんよ」
「ではお言葉に甘えて……」
こうしてセレスティアは俺の部屋に泊まることとなった。
翌日、朝。
俺はファブリスに王座の間に呼ばれていた。
扉をノックすると扉の奥から返事がした。
「少々お待ちくださいませ」
それと同時にロザリアが扉を開く。
俺はズンズンとなかに入っていった。
「来たか」
「ああ、なんの用だ?」
「実は昨晩、ドラグーン王立美術館に展示してあった国宝『龍神の剣』が盗み出された」
「その『龍神の剣』とは?」
「『龍神の剣』は真の龍の長のみが持てると言われている魔剣で一時的に神と同等の力を持つことができるんだ」
「そんなものを展示していてよかったのか?」
「大丈夫。あれは俺が呼ぼうと思えばここに呼び出せるんだ」
「じゃあもう解決じゃないか」
俺は呼ばれた意味がわからないというように言った。
「問題は誰が盗んだかだよ。心当たりとかはないか?」
俺はそう言われて一人の人物が思い浮かんだ。
「ファブリス、もしかしてだけどエヴァンス侯爵じゃないか?」
「エヴァンス侯爵!?そんなわけないだろ!だって侯爵は……」
「昨日、セレスティアさんが俺のことを襲ってきた。セレスティアさんはすべて話してくれたよ。エヴァンス侯爵がアンフィスバエナと取引をして王座を狙っているって」
「それは本当か!?」
「間違いない」
「なんてこった……」
ファブリスが頭を抱える。
それはそうだろう。
だっていままで良くしてくれていた家が実は王座を狙っていただなんて混乱するはずだ。
「エヴァンス侯爵家が敵だとわかったけどどうするんだ?」
俺はファブリスに尋ねる。
「明後日、アンフィスバエナの使者がやってくる。その時にはこの国の偉い人が集まってくるからそこで攻撃してくると思う。その時に俺がなんとかする」
「具体的には?」
「それは秘密だ」
そう言うとファブリスは微笑んだ。
ファブリスはなにか企んでいるようである。
どんなことになるのか明後日が楽しみだ…
俺は口元に微笑を浮かべながら部屋に帰っていった。




