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30 嫉妬なわけがない

「ただいま」

メイドが戻ってきた杉浦を出迎える。

「どうでしたか?」

「ごめん。ターゲットは殺せなかった」

「十二賢人の一人のあなたでもダメでしたか…」

「次は絶対に殺す。だからもっと強いやつを持ってきて」

「仰せのままに」

「でもなんであんな奴を殺してほしいの?あんな奴、殺してもメリットないじゃん」

「この国の未来のためです。ユウナ=スギウラ様。はやく行きましょう。アルノルト様がお待ちです」

「うん、わかった」

杉浦が返事をすると二人は肩を並べて歩き始めた。



「これはどういうことかな?」

「ル、ルーナ!違う!これは誤解だ!」

「散々、女は金目当てだから嫌いだとか言ってたくせになぜお前はその女と楽しそうに話している!」

事の発端は数分前に遡る。

俺はラーメン屋から帰ってきたあとにファブリスを探していた。

しばらく探していると庭園でファブリスを見つけたのだがなぜか一緒に美女がいたのだ。

「この人は誰ですか?」

美女が不思議そうに尋ねる。

「ああ、紹介します。こいつはルーナ。第七軍団長で『千年越しの悪夢』という別称を持っています。で、こちらがエヴァンス侯爵家のご令嬢セレスティアさんだ」

「それで?二人はどういう関係なんだ?」

俺は怒ったような口調でまくしたてる。

「もしかして…嫉妬してくれてる?」

「んなわけないだろ!で?どういう関係なんだ」

「(あんまり大きな声で言えないからあっちで話そう)」

「?」

ファブリスはすぐそこの柱まで俺を連れていく。

「今日はエヴァンス侯爵に頼まれて仕方なくあの人と会っていたんだ。たぶん俺の妃にしようとしてるんだと思う。でも大丈夫。俺はルーナ一筋だから!」

「あっそ」

エヴァンス侯爵家というのはファブリスたちドラグーン家がファブリスの曽祖父の代からお世話になっている家柄だ。

その侯爵家から頼まれたことだから断れなかったのだろう。

ファブリスに素っ気ない態度を取りながらもルーナ一筋と言われてちょっと嬉しかった。

「そうだ!ルーナも一緒に来ないか?」

「行く」

俺は即答する。

これは別にファブリスが心配だからということではなく普通にその令嬢が内通者じゃないか監視するためだ。

その後、俺たちは庭園の真ん中にあるテーブルでお茶をして楽しんだ。

意外と俺とセレスティアは気が合うようで勝手にファブリスを無視して盛り上がっていた。

女性のからだになったからなのか女性に対する恐怖というものが減っている気がする。

それは俺にとって良い傾向だ。

「ルーナさんはどのシーンが好きなのですか?」

「私は最後のエマとトーマスが再開したシーンが好きですね」

「わかります!あのシーンは本当に泣きそうになりましたよ」

「あの後の話が書いてある作品が出たって知ってますか?」

「そうなのですか!?」

「よかったら今度貸しましょうか?」

「はい!ぜひ!」

これがきっかけとなって俺とセレスティアはよくお茶をする仲になった。

もちろん知られちゃまずいことは言ってないし小説の話しかしていない。

ある日、俺がセレスティアとフェルナンドと一緒にお茶しているとフェルナンドがおかしなことを言いだしてしまうのだがそれはまたの機会に。

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