179 番外編 狩りの日(2)
サクサクと、いくつかの集団になり森へと入っていく。
森は寒いながらも明るく、どこまでも続いている。
リーフは残念ながら小型で単独行動をする獣だが、幸いなことにこの森にはそれ以外の獣が少なく、リーフの楽園と言えるほど多くいるようだ。
ドゥン……!
どこからか銃声が聞こえる。
どうやら他のグループが、リーフを捕らえたようだった。
ハルムはそんな中、10人ほどの集団と行動を共にしていた。
狩り自体は初めてではない。公爵について何度か狩りに連れて行ってもらったことがある。銃を手にしたことも一度や二度ではない。
いけるだろうか。
そんな考えを巡らせる。
気にするな。ただ、いるだけだ。
黙々と、歩く。出来るだけ、音を立てないように。
そこで、ハルムが動くものを捉えた。リーフだ。
静かに、銃を構える。
息を止める。
バツン!
風を切る音が響いた。目の前のリーフが倒れる。
「!!」
ハルムではない。
顔をあげ、周りを見渡すと、いかにも矢を放ったばかりの男が居た。
バルドだ。
グループの中にバルドがいるのは偶然でもなんでもない。
この森に不慣れなハルムと、狩りが得意なバルドが組まされたのだ。
……まあ誰が仕留めてもいっしょ、だよな。
澄ました顔で立ち上がると、バルドがニヤリとこちらに勝ち誇った顔を向けた。
少しイラつく。
バルドは仕留めたリーフを掲げ、「フフン」と鼻を鳴らした。
「すごいだろ?」
「…………」
ハルムが歩き出そうとすると、バルドが追いかけてくる。
「ちょっと冷たいんじゃないか?」
「……黙って歩けよ」
「まったく、丁寧な執事くんはどこ行ったんだか」
そこで、一緒にいた粉屋の親父に手で制された。
「おい」
ハルムとバルド、二人で同時に足を止める。
「いる。あっちは風上だ。そんで、うるさい」
「…………」
おずおずと、二人揃って後退することになった。
こんなやつ前にすると気合いが入る。
とはいえ、狩りはそう簡単に成功することはなかった。
難しいもんだな。
無駄撃ちするわけにはいかないことを考えると、それほど気軽に撃つわけにもいかない。
矢だって同程度に安くはないものなのに、アイツはよくあんな気軽に射られるもんだ。
バツン!
また、バルドの弓の音がした。
いや、それと同時に何か音がした。視線の端の緑が揺れる。
鳥が、飛び立つ音、か?
銃を構える。息を止める。
ドゥン!
ハルムの銃が、白い煙を吐く。
離れた場所で、何かが落ちる音が聞こえた。
「キジだ!」
誰かが叫ぶ。
「ハルムか!」
「さすが、都会育ちは違うな」
やった……!
「やるじゃん」
バルドがまたもやニヤリと笑いかけてくる。
「…………」
「おいおいおい。もうちょっと優しくしてくれてもいいんじゃないの?そりゃ、アセリアちゃんにプロポーズしたの、気に入らないだろうけど。過去だろ」
…………は?
なんだって?
何してくれてんだ、コイツは。
その日その瞬間、ハルムの心のブラックリストに永久不滅の名前が載ることとなったのであった。
そんなわけで男同士の距離が縮まる話でした〜!いや、離れたのか……?縮まった?




