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夜空色の青春  作者: 上永しめじ
第四章「芽吹きの春と燃えるような夏」
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第51話「魔法学校の体育祭(2)」

 



 授業が終わると、教室は一気に活気づいた。キオは少しだけぼーっとしたまま、机の上の教科書や筆記用具をゆっくりと鞄に詰めていた。


「キオ、大丈夫か? さっきから、少し顔色が優れないように見えるけど......体調でも悪いのか?」


 隣の席から、オーウェンが心配そうに覗き込んできた。彼はキオの変化に敏感だ。キオは無理に笑おうとしたが、親友の前では繕うことも難しく、少し肩を落として正直な気持ちを漏らした。


「......うん、ごめん。ちょっとね。ベゼッセン先生が指導に来るって聞いて、反射的に......少しだけ気が重くなっちゃって」


「......そうか。君にとって、ベゼッセン先生は複雑な存在だよな」


 オーウェンはすべてを察したように、キオの肩に力強く手を置いた。


「無理に強がることはない。もし、辛いことがあったら言ってくれ。僕が代わりに対応する」


 その真っ直ぐな優しさに、キオの胸が少し軽くなった。


「ありがとう、オーウェン。助かるよ」



 その時、後ろから足音が近づいてきた。


「キオ! オーウェン! 体育祭、楽しみね!」


 明るい声の主はカリナだった。隣には、同じくらいワクワクした表情のルイもいた。


「精霊と一緒の頑張る体育祭って、どんな感じになるんだろうね。トロプやフレアと楽しめたらいいな」



 二人の後ろからは、少し遠慮がちにセドリックも近づいてくる。彼は足元でトコトコと歩くコロネの様子を気にかけながら、はにかんだような笑みを浮かべた。


「僕も......コロネと一緒に頑張りたいな。コロネの相棒として、恥じないように練習しなきゃ」


 いつもの五人が揃うと、教室の隅に停滞していた湿った空気は、一気に霧散していった。


「いい天気だし、中庭で作戦会議でもしようか?」


 オーウェンの提案に、全員が賛成した。五人は賑やかな声と共に、中庭のベンチへと向かった。




―――


 中庭の中央にそびえ立つ、大きな樫の木の下。そこはいつしか彼らの定位置になっていた。木漏れ日が地面に水玉模様の影を落とし、春の穏やかな陽光が五人を包み込む。



「やっぱり、体育祭でもベゼッセン先生が指導されるんだね」


 ルイが少し背筋を伸ばしながら言った。


「ああ。精霊召喚儀式の時も中心になって仕切っていたし、何より、この国で精霊との協力や戦術について、あの人の右に出る者はいないと聞くからな。妥当な人選だろう」


 オーウェンが、どこか分析的な口調で頷く。


「私はあの先生の精霊さんへの接し方や教え方は好きよ。メラメラちゃん達にも優しいし、授業の内容も分かりやすいし。あ、でもキオに酷いことしたことは許してないわ!」



 カリナの言葉に、キオは少しだけ自嘲気味に微笑んだ。


『そうだよね。みんなにとっては、素晴らしい先生なんだ』


「キオ君......?」


 ルイがキオの沈黙を心配して、顔を覗き込んできた。


「あ、ごめん。ちょっとだけ、別のことを考えちゃってた。大丈夫だよ」



 キオは今度こそ、自然な笑顔を作った。



「体育祭、楽しみだね」


「うん、みんなで頑張ろうね」


 ルイも嬉しそうにはにかんだ。




「それにしても、各競技、どんな感じなのかしら? 障害物競走とかもあるって聞いたけど、あくまで魔法を使うのよね?」


 カリナがうーん、と首をひねる。


「精霊と協力して障害物を避けたり、くぐり抜けたりするのかもしれないな......」


 オーウェンが腕を組み、真剣な表情で考え込んだ。


「例えば、風魔法で加速して障害物を避けたり、土で足場を作ったり。状況に応じた瞬時の判断が試されるんだろうな」


「僕も......コロネが小さいから、どう協力すればいいか、少し不安かな。大きな障害物があったら、僕がコロネを助けなきゃいけないし......」


 セドリックが困ったように、足元で寝転がっているコロネを見つめた。コロネは「大丈夫だよ」と言うように、しっぽをぱたぱたと振っている。


「大丈夫だよ。大切なのは、スバルとどう協力するかだよ」


 キオが優しく声をかけた。


 しばらくの間、体育祭の競技と魔法がどう関わってくるのか、様々な想像が膨らみ、ワイワイと楽しく盛り上がった。





「そういえば......団体戦もあるんだよな」


 オーウェンが、ふと思い出したように言った。


「チーム対抗の魔法合戦......。これこそ、僕たちの団結力が試される場じゃないか?」


「僕たちなら、きっと大丈夫だよ」


 キオは自信ありげに言い放つ。


「そうだね。私たち、ずっと一緒に勉強してきたもんね」


 キオの様子に、ルイもふふふと笑う。


 五人は、互いに顔を見合わせて微笑んだ。この仲間たちとなら、どんな困難も乗り越えられる——そんな確信が、五人の心に芽生えていた。





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