魔族と冥界神
アレン達は城の前まで来た。以前来た時と同じように5名の兵が橋を占領していた。
『おい。貴様ら止まれ!』早速槍を突き当てられ威嚇された。しかし今回は正当な理由がある。
「天帝に会わせてくれ。《神隠し》について報告したいんだ。」
『なっ!?貴様……どこでそれを……ちっ……まぁいいお前達この者たちをひっ捕らえろ!』
やっぱりこうなったか。《認識阻害》をしているのが天帝絡みだった場合捕縛される事は予測できていた。これで天帝サイドが黒幕である事が分かった。
「みんな?行くよ?」
アレンも普段見せない構えをとる。ただのハッタリなのだが。
「妄想魔法召喚!次元火球!」
異次元から突如発生する火球は俺の手元からではなく兵たちの頭や股間から突然現れる。必中の火球だ。
『あちっ!あちっ!なんでこんな所に火が……魔法!?いや……魔法なら発動者の近くから発動されるはずだ。』
火に目がいき一瞬の隙を作った。
その隙にチビ、クロ、ジークは即座に1人づつの意識を刈り取り、テイラーは電撃で数名を感電させ、立っているのは兵達に命令したリーダー格のみになった。こいつを利用して城内を案内させようと考えたのだったが。あてが外れてしまった。
リーダー格の男はペタンと座り込むとジョボジョボと音を立てて盛大に漏らした。もしかしたら大きい方もかも知れないが臭そうなので知りたくもない。
役に立たないツンツン頭のリーダー格の意識をついでに刈り取り城内へ入る事にした。門の前にも兵がいたが俺達が恐ろしくなったのか逃げ出していた。門は押して入るタイプだった事が後で分かったのだが、引くタイプと勘違いしたライゴは鍵のかかっていない門を無理やりこじ開けて破壊してしまうというひと騒動があったが笑い話だ。ハハハ。ライゴをパワーアップさせてしまったのは私です。すみません。
『主様~♡やっと城の中に入れましたねぇ~♡』
「う、うん。そうだね。早速神隠しについて調査しよっか!」
俺はライゴを華麗にスルーして周囲を確認する。城の中は明かりもなく真っ暗。誰も居ないような雰囲気だった。
『暗いですね。アレン様。テイラー?灯りを。』
『おう!オレサマの雷で明るくしてやるぜ!』
周囲にバチバチと稲妻を纏うテイラー。雷帝という名を持つ虎であるテイラーは帯電しその身を輝かせ周囲の暗闇を払拭した。
「うお!?」
アレンは思わず声を上げてしまった。
それは何故か?──
俺達の周囲には既に敵がいたからだ。
全く気づかなかった。それは敵が自分達の想像を遥かに超えた力を持つ存在だという事だろう。まぁ特に隠密に特化しているという可能性もあるが。
その敵は明らかに《人》では無かった。尖った耳に真っ青な皮膚。目は鋭く口から牙が見えている。服は全身黒でゆったりとしていてヒラヒラしている。背中に何かを隠しているような服だ。
ジリジリと寄ってくる敵たち。アレン達は円になりその攻撃に備える。数にして20以上。総力戦になりそうである。
『ここは……アッチに任せては貰えませんかね?これでも冥界神なので。』テイラーの別人格ジュリアンテである。
ずいっと前に出たジュリアンテは敵の中に1人出ていった。刹那──周囲にいた敵たちが膝まづいた。
「え!?どういう事?」
『あははは……アッチは冥界の神なんっす。コイツらは冥界の眷属の最下級に属す魔族っすね。こんな奴ら相手にするのも無駄っす。』
「戦わなくて済むの?」
『はいっす。アッチに攻撃しようものなら冥界の掟を反故にした罰則として魔族全体が滅ぼされるっす。アッチ達冥界神の手によって。』
グンッとジュリアンテが手を振ると周囲に少し涼しい風が流れる。俺達にとってはそんな風だった。だが周囲にいた魔族たちにとっては同意ではなく、あっという間に壁まで吹き飛ばされていた。顔には氷の結晶が刻まれ風が極寒だった事が伺い知れる。
『『ギャキャギャ』』と魔族達は怯えた声を出すと土下座の姿勢になってジュリアンテにこうべを垂れる。どうやら反抗心は全く無いようだった。
『じゃアッチ達を案内するっす!』とジュリアンテが言うと魔族達は起き上がりいかにも「こっちです!センパイ!」みたいな姿勢で俺たちを天帝の元まで案内してくれた。
こうして俺たちは魔族達の案内で玉座の間へと辿り着いたのだった。




