ライゴ覚醒
帝都カナルギアへ向かうことになったアレン達──エルノアが一緒に行きたいと言ってきたが彼女は村を守る必要があるだろう。と断った。
帝都カナルギアへ行く目的は3つだ──
1つ。コロナシ村の村長の救出。
2つ。観光を楽しむ。
3つ。エリーゼがついでに里帰り。
なんか帝都カナルギアに行きたくなくなってきたな。まぁ乗りかかった船だし?村長くらい助けてもいいけどさ?観光と里帰りって……完全に旅行だよね?《メルカリダスの奇跡》から脱出する為だったとはいえ……遠い場所に転移してしまったのだ。旅行では無いのだ。本当ならば今頃は自宅て妄想召喚の練習をしてるはずだったのに……と嘆くアレンなのであった。
コロナシ村から帝都カナルギアまでおよそ丸一日の距離にある。アレンとエリーゼは疲れ知らずのガウに乗せてもらい、その他の召喚獣達はワイワイ喋りながら歩く。ジークや猫であるチビ達は足が遅いと思われるかも知れないが速度9999の化け物である。少し本気を出して踏み込んだら100mくらい進んでいるのだ。彼らが遅れる事は決してない。多分。
ちなみに終始元気な召喚獣がいる。ライゴだ。あのおねぇ言葉のライゴがとてつもなく元気でアレンに絡んでくるのだ。自分が召喚した召喚獣にウザいと言う訳にもいかずアレンは困っていた。周りの召喚獣達も苦笑いを浮かべている。
は!?──そうか……その手が……
ムフフフいい事思いついちゃったもんねー!
アレンは口角を片側だけ少し上げ、目を細める。実にあくどい顔だ。
「ねぇ?ライゴ?今よりもっと強くなれるとしたら……どうする?挑戦する?」
『なぁにぃ?突然藪から棒にぃ~♡でも……もっと強くなって主様のお役に立てるならぁ~やるわよぉ~♡チュッ』
読者の皆様すみません。気持ち悪いかもしれませんがもう少しの辛抱です。
「よし!やってくれるか!良かった!じゃ早速いくよ?」
『え、え!?何?何なの?内容も聞かされずにやられちゃうのぉ?もぅ♡主様はドSなのぉ?喘いじゃうぞ?うっふん♡』
「……zzz……神獣召喚!妄想で神獣と融合だ!いでよ新生ライゴ!」
アレンは強制的に立ち寝すると神獣召喚を発動。ライゴを神獣と融合させその性格を上手く行けば相殺……げふんげふん改善出来るのではないかと思ったのだ。まぁこれは一種の賭けである。
突如ライゴの体が神々しく光り出す。
『え!?なに?何これぇ……気持ちいぃ……ああぁーん♡気持ちいい……♡』
いやいや。気持ち悪いから!と皆の気持ちがひとつになる。あの自由奔放のヒカリですら神に祈りを捧げるように両手を胸の前で組んで必死に何かを口走っていた。
『あのキモイのが消えますように!早く消えますように!金輪際出てこないように!』
必死すぎである。
同じ時期に召喚されたジークはヒカリとは対照的にただ目を瞑り天を仰いでいる。
《おお、、、神よ。我らに慈悲を与えるでござるーーーー!》ジークも心の中では必死だった。ライゴが怖いので(色んな意味で)決して口には出さないが必死さはヒカリと同様だったようである。
皆が必死に祈る中──
少し時間を遡る。
ここはアレンの夢の中。
立ち寝状態で夢を見る。最早達人の域である。
夢では雲の上にいるような感じだった。足元はふわふわしていてそれでいて時々ビリッと電撃が流れる。雨雲なのかもしれない。よく見ると少し黒みががった雲だった。そしてその雲はどんどん上昇していく。下を見ると街並みが米粒ほどに見えここがどれだけ高いのか窺い知る事が出来る。
雲の上昇が止まる──
ん?誰か居る?
さっきまで誰もいなかった雲の上にひとつの影がある。
ハッとしてアレンは上を見上げる。
雲よりさらに上。上空には巨大なクリオネが。
徐々に雲の上に降りてくるクリオネ。その大きさは体長10m、横幅5m程。顔は無く透明で中心部が赤く動いている。
《我は天空海精音そなたは何者だ?》
「俺の名前はアレン。妄想召喚士だ。」
《ほう?そなたが……ほぅほぅ……して……なんの用だ?》
「いえ…特に貴方に用は無いんですが神獣召喚しようかなーと思いまして。」
《なにぃ!?神獣召喚か……で?誰を召喚するのだ?》何故か天空海精音はワクワクした表情でアレンの答えを待っている様だ。
「あ。はい。神獣フェンリル様にお願いしようかと思ってます。」
《な……何故だ!?何故フェンリルなんだ!?理由は?》何故か必死に理由を聞いてくる。
「今回神獣召喚するに至った理由がライゴという仲間が居るのですが性格がちょっとアレなので……どうにか神獣様のお力をと考えたのです。」
《ほ、ほぅ?性格がアレなのだな?そうか……な、ならば我などどうなのだ?清廉潔白であるぞ?》
「は、はぁ……ちなみにですがライゴはゴリラと獅子の合成召喚獣なのです。ですから狼の姿であられるフェンリル様が丁度いいのでは?と考えたのです。」
《そんなに……フェンリルが良いのか?我じゃダメなのか?どーしてもダメなのか?ちょっとでもダメなのか?》この神獣めっちゃゴネてくるな。もうコイツでいいか。面倒臭いし。性格さえ治ってくれればいいんだから。
「じゃあ……天空海精音様にお願い出来ますか?性格さえ治してくれれば良いのであとはあなた様にお任せしますので。」
《ふふふふははははははは!そうか!そんなに我がいいのか?仕方ないなぁ。しょうが無いなぁ。こんなチャンス二度と来ないぞ?有難いと思えよ?よぉぉぉし!やってやっか!頑張っちゃうもんね!》と、突然チャラくなる天空海精音。
「はは……では。いきます。神獣召喚!妄想で神獣天空海精音様と融合だ!いでよ新生ライゴ!」
雲の上にライゴが召喚される。召喚されたライゴは何も知らされていない為困惑している。
『なに?なに?どういう事~どんだけぇ~♡』
うげぇ……早く治らないかな?仲間だけど。
『きゃ!これが強くなる儀式ね?……何!?アタイの精神を壊そうと……いや!嫌よ!貴方なんかに渡さないんだからぁぁぁぁぁぁああああああああああ!』
プツンと事切れた様にライゴが倒れる。しばらく倒れたままのライゴだったが突然指がピクッピクッと動く。
どうやら意識を取り戻したようだ。
『ふあぁああぁぁあぁぁああああぁあぁぁあ!アレンさまぁあぁぁぁぁぁぁぁあ!これが覚醒!?覚醒なのねぇぇぇぇい!ヒャッホーーーーイ!うぇーーーーーーーい!』
あ。これ失敗だ。絶対失敗だ。あの野郎失敗しやがったな?
突然頭の中に言葉がねじ込まれてくる。これが世にいう念話と言うやつかもしれない。
《くおらぁぁぁぁ!なんじゃ?この生き物は!我が精神を乗っ取ろうとしたら逆に全ての力を奪われて取り込まれてしもうたじゃないか!体を操ることも出来ん!最悪だ!このくそ召喚士が!》
あ。コイツ自分の非を認めないタイプだ。ふぅん。俺に逆らっていいんだな?ふふふふ……
「なぁ?ライゴこっち来て?」
『はぁーーーーい♡主様ぁ~♡』
俺は突然飛び蹴りをする。
『あべし!《あべし!》』
『酷いじゃなぁい~♡主様ぁ~♡もっとぉ~』ドMのライゴは喜ぶ。しかし……天空海精音は普通の精神の持ち主だろう。ただ痛い。痛みだけを共有するとどうなるのかだ。分かるだろう?自ら殴られにくるライゴにやめて欲しい天空海精音。海精音の精神が崩壊するのが目に見えている。あれから何発殴っただろうか。息も絶え絶えに天空海精音が弱音を吐く。
《ア、アレン様……ご無礼をお許しください……もう勘弁して……》涙目になりながら喜ぶライゴ改め、天空海精音は俺に忠誠を誓ったのだった。
ガバッ!
アレンは目を覚ました。寝た時は勿論立ち寝だったのだが今はアリスとアリサの太ももで膝枕されていた。うん。気持ちいい。
俺を見下すようにエリーゼが頬をプクッと膨らせていたが何故だろう。わからぬ。
『『『『で……どうでしたか?』』』』
皆知りたいのはどうなったかの結果だろう。
だが──
しかし──
残念ながら──
『アタイはアタイよ!世界が終わってもアタイはアタイ!』
ガックリと項垂れる召喚獣達なのであった。




