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セイナの苦悩

数日前の事──


アレン達がまだティルマ院で職業選別の儀を受ける前のこと──


郢曲(えいきょく)》のメンバーは《メルカリダスの奇跡》へ挑戦していた。


郢曲(えいきょく)》はアレンがかつて所属していたSランクパーティだ。


彼らは新しくパーティに加入したセイナの実力を確かめる為滞っていたメルカリダスの奇跡の探索へ打って出たのだ。


セイナは控えめな性格で膨大な魔力を持つ支援系の魔術師だ。エメラルドグリーンの髪が肩で切りそろえられ瞳も翠色だった。アレンが抜けた《郢曲(えいきょく)》はパワーアップしたと誰もが噂しメンバーも確信していた。何の役にも立たなかったアレンが居なくなったのだ。当然の事と思っていた。


「おい。俺達の最高到達階って何階だったっけな?」マルクスが禿げた頭をボリボリと掻きながらニーニャに尋ねる。


「そうにゃ~……28階くらいじゃなかったにゃ?」


「だよなぁ……で?この体たらくはなんだ?コイツが入って強くなったんじゃねぇのかよ?」


「それは僕も同感だね。戦力的には強くなったはず。それは疑いようのない事実だよ。でも……これは……まずいね。」


「ご、ごめんなさい……わ、わた、私のせいで……」セイナは怯えるように声を出すが誰にも届いていない。


「誰だよ。コイツが斥候得意だって言った奴よぉ……また罠にかかっちまったじゃねぇか!」


郢曲(えいきょく)》は現在16階層に居た。そこは転移罠のオンパレードだった。15階層からは転移罠が多くそれも階層を跨いだ厄介な転移罠だ。1度ハマったら生半可な実力では全滅は必死だ。《郢曲(えいきょく)》がまだ全滅していないのはセイナの回復魔法とまだ中層の為魔物が弱いから何とかなっていたのだった。階層の跨いだ転移は罠が発動し魔物がウヨウヨ発生する。殲滅させることで元いた階層に戻るが戻る際もランダムで戻され道に迷う。かなり悪質な罠の1種である。


「ふぅ……流石に疲れたわ~セイナ!水!水出せ!」


「は、はいぃぃ~」


セイナは皆の役に立とうと必死だった。何せこの人達は戦闘以外《何もしないのだ》。


野営の準備、料理、斥候、バフ、回復魔法、デバフ、ギルドでの換金に至るまで全ての雑用と補助を丸投げ。流石に1人では無理だ。それでも文句を言わず続けているのは彼がやっていた事だったからだ。そうアレンさんだ。


セイナのレベルは48。魔力も膨大にあり枯渇する事はほとんど無い。いや……今までは無かった。しかし《郢曲(えいきょく)》に来てからは常に身体能力強化をかけ、雑用をこなしていた。それに加えて魔法での補助だ。枯渇して当然だろう。それを前任者のアレンさんは戦闘時倒れるまで行使し責められていたと言うのだ。ありえない。私はそう思った。ありえているのだから有り得るのだろうがそんな職業聞いた事がなかった。アレンさんは自称賢者と言っていたそうだ。もし賢者だったとするならばこのパーティは阿呆だ。気の回る優秀な賢者を追い出したのだから。


まぁ上級職の賢者や魔道士に魔力の少ない者は居ないがこんな事をしていれば誰でも枯渇する。それこそ無尽蔵な魔力を持つ人間だけが可能なポジションだろう。この人達は私に何を期待していたのだろう。


アレンさんより優秀な斥候?──否


アレンさんより優秀な魔法使い?──否


アレンさんより優秀な丁稚──かも知れない。


この日私は後悔した。私はここに入るべきじゃ無かったと。このままじゃ良くて過労死。悪くて野垂れ死ぬ。どちらも《待っているのは死》だ。


私は思った。この冒険を最後に引退しよう。どこか街の治療院に就職しようと。


「ちぃ……またかよ……ここどこだ?セイナ!てめぇちゃんと罠くらい見つけろや!」


「ひ、ひぃ……ご、ご、ごめんな、さい」


「マルクス?そんな怒らないでやってくれよ。まだ俺達のパーティに慣れてないんだからさ?これでもSランクだからさ?やり方が分かんないんだよ。きっと。」


「ず、ずみま、せん」


「ニーニャも早く帰りたいにゃー!魚食べたいにゃ!」


この人達は決して気づくことはないだろう。アレンさんが居たからSランクパーティになれたことを。


私も……馬鹿だ……前衛職だらけのパーティから勧誘が来た時に疑うべきだったのだ。その時の私は楽観的だったと後悔した。


アレンさんと言うオールマイティな補助で成りなってるパーティかぁ。そっかそっか。アレンさんがキツイから私が追加されるのね?これでパーティのバランスも取れて安全に冒険出来るわね!なんて思っていた。だからアレンさんが首になるって聞いた時は泣きそうだった。全ての雑用と補助が私一人になるから。でも文句は言えなかった。言わせてすら貰えなかった。


このパーティーはいつか破綻する。確実に。私が死ぬのが先か破綻するのが先かそれは分からないけど……今回は奇跡的に帰還することが出来た。最後に真っ赤な鉱石をマルクスさんが触ったらメルカリダスの奇跡から200キロ離れたウォッカ火山に転移されちゃったんだけどそれでも無限迷宮に囚われ続けるより幾分かマシだ。


私たちはギルド経由で通達を出した。メルカリダスの奇跡の探索を諦め、ウォッカ火山に活動の場を移す連絡だ。私は今回も生き残れるのだろうか。それは神のみぞ知る事である。

拙い文章ですが読んで頂きありがとうございます。

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