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悪の組織の悪たるゆえん  作者: ファイル
32/35

複製体、盗聴、企み


「喋れっての!」


『無理です、許可されてません』


「わーたしが!良いって言ってんでしょーが!」


施設の近くの森の中

透き通るように綺麗な金髪の女性が二人、片方がもう片方に叫んでいました



叫んでいる女性は最近に天の街、光の街で行方不明とされている女性


ヒアリス・カラルト・リアネアーナ・ノルディス・シュミー

皆からは聖女の肩書きで呼ばれている女性です


黒いシスターローブが体のラインを捉えていますが、着慣れているようで着ぐるしい様子はありません



もう片方、叫ばれている金髪の女性ですが…おや、こちらも聖女ヒアリス・カラルト・リアネアーナ・ノルディス・シュミーその人です

こちらは黒いシスターローブの色合いをそのまま反転させた色合いの、白いシスターローブです、新品なのか縫い目のところはまだ硬さすら見られます


瓜二つ、そっくりどころか全く同じ



おかしいことではありますが、この場ではもうひとつ、おかしな点がありました



「っはぁー!あんたも強情ね!」


「まぁいいわ、どうせ施設から離れちゃったんだし、話そうと思う」


「うん、そう」


黒いシスターローブの聖女が一方的に喋り、会話をしているようなのです


いえ、白いほうは表情ひとつ変わりません、単なる独り言かもしれませんが



「私はあんたの正体に気付いてる、当然、私が元になってるのも」


『会話が許可されました、感情凍結機能解除…えっ?』


「は?あんた喋れるじゃないの」


『そんな…はずは』


「まぁいいわ、続ける、あのシロってのが私を量産して何企んでるのか知らないけど、全然興味無い、それより、機械世界に行ける可能性があるの、これ、わかる?」


『あっ…えっと、はい、分かります』



「おっけーおっけー!じゃあさ、あなた、光の街の聖女、やってきてよ」


『……え?』





メッセージ魔法で考えてることを文として伝える、そういった魔法ですが


すこし弄り、勝手に思考を覗き見する改造を加えました



がしかし、これ、同一人物にしか効きません、失敗ですね


もとから改造技術も付け焼き刃なので出来たらいい程度でしたけど



しかし、その改造を行使する最初で最後のチャンスがやって来ました


それは見事に正解


反転聖女の考えていることが複製聖女を経由して私に流れ込んできます


反転した後、彼女が何を見て、何を考えたのか、膨大な情報が流れ込んできました


気を抜けば気絶するような頭痛の後、結論づけます


この反転聖女、少なくとも私を裏切ることは無いと



便利までとは行きませんが優秀な駒として利用できます



なので会話機能を、同時にほぼ全ての機能の認証を許可しました



その瞬間提案してきたのは、聖女なりすましの案です


許可と同時に複製体の一人から偽の魂を得た一人として確立してしまい、共有が切れてしまったので急いで施設外の森に走り出しています


…フウカさんが



許可出しすぎたようです



しかし、反転聖女の案はいいものです、天、光の街の方へ複製聖女を送り込みましょう、反転によってここまで私と相性が良くなっているのならもっと前から話し合うべきでしたね



面白い方です





『えっと…』

「ん?」


「えっと、私はヒアリス・カラルト・リアネアーナ・ノルディス・シュミー…ええ、大丈夫、ですが目の前にいるのも私」


「どしたん?」



「どうしたも何も…」

「よっと」

「ヘブっ!」


ばちこんと白いシスターローブの聖女が見えない何者かによって後ろから襲われます


「おわぁっ!?」


「…失礼しました、ヒカリさんですよね?服チェンジとかしてませんよね?」


「フウカ!?」



「ちょっとコレ預かりますねー」


「あっ!ちょっ!消えんな!」


………



ドタバタと施設内を走る音がします

恐らくヒカリさんでしょう、私を探してますね


「複製体、というか聖女の名前ってシュミーさんなんですか?」


「いえ、ヒア…」

「あ、それ聞きたくないです」


「…」


私の複製体が頬を膨らませています

だいぶ感情が表に出るようになりましたね



ヒカリさんの複製体のように急に認証してしまうと通常の魂と同等になり、崩壊してしまいます


少しずつ私の望むように調整するべきですね


「シロォオ!」


ヒカリさんが走ってきました


「なんですか?」


「なに?じゃないわよ!その、それ!聖女っぽいやつ!」


「これは聖女の反転の複製体ですよ」

「ややこしいわ!…ってそれ言っていいの?」


「ヒカリさんは気がついてますよね」


「…そう、だけど」


ヒカリさんが大人しくなりました、手綱を握って話を進めましょう





「じゃあ私の企みもシロに任せていいの?」

「正確には他の部隊ですけど、それでいいですよ」


「ふぅん、ま、私が楽できるならいいわ…シュミー、おかわり」

「私のコウチャなんですけど」


「美味しわね、いい趣味してるわ」


「ふふん、そうでしょう、シュミーさん、ヒカリさんにもうひとつのやつを出してあげて」


「うわチョロ」


「言わぬが花ですよ」

「…この会話おかしくない?」


普通は逆ですね、まぁいいんです、反転後のヒカリさんの情報は整理済みです

気に入りました



「シュミーじゃないんですけど…」


複製体のシュミーさんがぶつくさ言いながらコウチャを準備します


「その人形いいなぁ、私も欲しい」


知ってもなおヒカリさんはこの対応です、よっぽど魂が強靭なんですね


「ヒカリさんと喋るとシュミーさんの魂に影響があるのでもう少し時間をください」


「そう?でもなぁ、シュミーよりフウカの複製体の方が欲しいかも」


「フウカさんですか?」


「あれ、元用心棒なんだって?」


……なんだって?という聞き方の割にはもとから知ってましたね


「じゃあダメです」

「ちぇっ、けちー、私も雑用押し付けたいんだけど」


「押し付けるほど雑用ないじゃないですか」


「はぁ?わたし…にだって…」


「ないですよね?」


「雑用のひとつや…いやないわ」


一番身軽な方ですし

「大人しく子供たちの面倒を見ておいてください」


「まぁ、そうなるか」


ヒカリさんは反転後に子供たちとの戯れを好きになったので、しばらくは任せてもいいでしょうね



「じゃあ聖女なりすまし作戦進めといてよ」

「任せてください、シュミーさんも頼みますね」


「だからシュミーじゃ……まぁ頼むも何も……はぁ」


だいぶ感情がやわこくなり始めましたね





シュミーさん

そのほかの複製体をメイドとして

なりすましの方は長いフルネームとして確立させました


シュミーさんはメイドの行動を常に認識できています、またその管理も完璧にこなしています


現状二十七人、全てのメイドを管理下に置いているのです…すごい



現在シュミーさんと二人きり、調整中です



「…ローゼン博士のメイドはしょっちゅう触られているんですが」


「彼も男性ということでしょう、不快なんですか?」

「不快ですね」


「会話機能は?」

「あまり効果が無いですね」


会話と言っても「やめてください」

などの定型文の言葉を発するだけだ


「むしろ反応するほどに喜んでいる節がありますね」


「変態じゃないですか…何か言ってますか?」


「えっと…何とかドール、完璧、エーアイ?……すいません、専門用語ばかりです」


「性的より発明的に見ているんですかね?」


このように遠隔での情報収集も可能となっています


複製体に会話機能をつけたりもしています



今ではシュミーさんの号令で複製体全員での行動統制も可能です


ただ自由思考はまだ遠そうです、メイドの一人に一度自由思考を許可した瞬間にシュミーさんに負荷が掛かり、そのメイドと共に睡眠へと移行しました


思考に制限をかけている現在がギリギリといった感じです



「フルネームさんは?」


「もう少しで感情が落とせます、なりすまし作戦はそろそろできますよ」


感情を落とすってなんだろう、とは思いますがスルーです、作戦の方は私ほとんど出番ありませんし





「では観測と報告、逐一お願いします」

「分かりました」



天の街、光の街跡地の近くの森にはある時から不思議な報告が相次いでいました


それは森のダンジョン化現象と呼ばれています


森に入るとうっすらと霧が立ち込めており、真っ直ぐ歩いているのにいつの間にか帰還してしまう


罠はないがダンジョン産モンスターが発見される、ゴブリンの希少種を確認

など様々な報告が上がっている


そんななか、最近一つの噂が流れてきた


森の中で聖女が森を抜け出せずにいると


聖女は天の勇者とはぐれたままという報告で終わっている



その噂を聞いて立ち上がったのは他でもない天の勇者だった


その顔は苦悶に満ちているが

天の街と光の街の住人との仲を取り持つには聖女を無事に見つけて帰ってくる必要があると感じているのだろう


天の勇者のパーティーメンバーはそう零していた



まさか二人きりになれるよう誘った際に魔物の襲撃ではぐれたまま、聖女が帰ってこない

そんなことになろうとは

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