私と嘘と実験と
「教会のものです、その、人の形をした魔物、について詳しくお聞きしたいと思いまして」
「…えぇ、話しますわ」
彼女はメシア、戦争…じゃなくて解放作戦でナコさんの実験体、アンと共に行動をした人だ
私はアンさんの切り落ちた手が第六遊撃隊の彼女に拾われた事をフウカさんから聞き、教会のものと偽り接触した
アカさんに根回ししてもらい、極秘の調査扱いにしてもらっている
教会は魔物の情報を集めている設定だ
ほんとはなにしてるかしらない、聖水売ってるところでしょ?
話の大筋を聞き終わる
「…信じるんですか?この話」
「…といいますと?」
「いえ、仲間の二人に話したのですが半信半疑でして…」
まぁ、私が考えた薬が効いてるならにわかには信じがたいことでしょう
「私たちは全てに対して疑ってかかっています、脅威がゼロでない以上、世界に平和が訪れることは無いのです」
教会の人達ってこんなこと言ってた気がする
「…そう、ですわね」
「…相当参ってますね」
「えぇ…うぅ………思い出しただけで吐けますわね…」
え、いや、吐かないでください、死んだ目をしてもダメです
「あ、これ飲みますか?精神安定剤です」
「…お金は持ち合わせておりませんわよ」
「あ、親切心からです…」
吐かないでください、はい、その一心です
一応真っ当な植物で調合してるので足はつかないはず
出歩くようの見えるカバンの中は全部大丈夫なのです
「ありがとうございますわ…」
「…話を戻しますが、そのアンさんという魔物は森の方に走っていった、ということでいいですか?」
「そうですわね」
「ふむふむ…そしてそちらがその魔物の腕と」
「…まぁ、はい、そうですわ」
左の手が少し濁った水に漬かりぷかぷかと保管されていた
先程の話を聞くに一度は上司に回されたらしいが、戻ってきたみたいだ
まだ、崩壊していない
つまり、この手の持ち主
アンさんはどこかで生き延びている可能性があるということ
…ありえないと言いたいが崩壊していないのもまた事実
「ちなみにこちらの水は?」
「これはクレア…仲間が用意してくれた特殊な水で再生の効果がありますね」
再生、再生ですか、崩壊は再生も回復も間に合わない、というか魂の欠如が原因だから魔法を受け付けない
特殊な水とやらも気になりますが指先がかけている訳でもないので
…やはりアンさんは生きているということでしょうね
ふぅむ…生きてるの、厄介ですねー…
「ありがとうございます、聞き込みとしてはこの位で大丈夫と思います、報告書の方にまとめさせてもらいますね、助かりました……あら、かわいい」
つい目に映った置物を褒めてしまった
小さな動物達…いや、魔物か?
「いえいえ…あぁ、仲間に人形使いがいまして、その子が作ってくれたのですよ、確かモチーフは十二支、というものだったはずですわ」
「…十二支、ですか」
「こういった字で…」
メシアさんと少し雑談が始まりました
……
「では、これで、私は失礼しますね」
「はい、楽しかったですわ…よろしければまた、来てくださいまし…その時は教会の嘘はいりませんわ、薬師でしょう?」
…おや、嘘はバレてますか
精神安定剤渡したせいですかね?
「まぁ…薬師ですね、教会の方には言わないでください、適当言いすぎました」
いや、ほんと、怒り買っちゃう
「ふふ、そうしておきます、では、またの機会にでも」
「ええ」
そんな感じでメシアさんとは別れました
普通に仲良くなれませんかね?オコウチャ仲間としてでも、フウカさんも誘ってお茶会とか楽しそうです
組織の人とバレたら衛兵側の人なので即アウトですけど
◇
…さて、探しますか、アンさんという方を
見つけることが出来たらそれは崩壊していないということ
欠如した魂をどうしたのか
それを聞く必要があります
しばらく大量生産の予定もないですし、これだ、という依頼もありません
魔物化の実験も相変わらず行き詰まってますし
フウカさんとサクラさんと共に元、光の街近くまでやって来ました
ちなみに光の街の住人は近くのそこそこの大きさの街へ移住したようです
再興するかそちらが発展するかは知りませんが、サクラさんは透明になってもらいましょう
「主」
おや、サクラさんの超センサーに何か引っかかったようですね
命名をナコさんにいったらくそセンスと言われたのを思い出しました…
つまりは直感です、ええ、それで
「フウカさん、風で手繰り寄せれますか?」情報やら何やらを
「やってみる」
フウカさんが目を瞑ります
そよそよと風が吹きました
「…ん?これ…えっと、結構な人数がいる、…なんか色々いるな」
「…色々ですか?」
こっちの方が超センサーかもしれませんね
少し歩くと前方に建物が見えてきました
小屋がいくつかですね
「右後ろの木の上から見られている」
『シロって今どこ?』
おや、こんにちはミドリさん
『光の街の近くですね、元』
目の前にしゅたっと着地する人影
ミドリさんですね
「こんにちは」
「はいはい、こんにちは…サクラもいるね、どうしたの?こんな所に」
確かミドリさんは極秘な調査に駆り出されていたはずです
「探し物がありまして、ミドリさんは?」
「私は任務中…って偶然ここに来たの?」
「ここには何が?」
「あー…うん、まぁシロなら言ってもいいかな、あっちにボスがいるから、ついてきて」
ボスがいるんですか?
ついて行く最中ミドリさんが教えてくれました
ここらで特殊なダンジョンが生成されていたと言うこと
それを完全に独占するためには光の街が邪魔だったということ
「え、それで戦争仕掛けたんですか?」
「うん?うん、そうだよ?」
へー、初耳です
案内されて一つの小屋に着きました
「ボス、シロが探し物があるらしくって来ました」
「探し物?」
そんじゃーなんて言いながらミドリさんは退室しました
「まぁ、探し物ですね、魂の欠如した人形なんですけど」
「ふむ…あー…そうか」
ボスにはなにか思い当たる節があるようです
ボスの背丈と机の低さから考え事するポーズってあんまり似合いませんね
腕組んだ方がいいかもしれませんよ?
余計なお世話ですね、はい
「まだ主要人物にも言ってないが、まぁシロならいいだろう、聞いたからには働いてもらうけど」
え、じゃあ聞きたくないです
なんて言えるはずもなく
……
「つまりすなわち、このダンジョンの浅いところであちらの世界と繋がる場所があるってことですか!」
「おちつけ、その通りだから」
「なら、なら魂の欠如した人形でも生きてる可能性がありますね!そうか、そっか、それは凄いですね」
「うるせう」バチィッ
「あっはい」
脅されましたごめんなさい
「…魂の欠如した人形が生きてるとは?」
私がこちらに来た理由と生まれた考察を加えて話します
「ほうほう、それは確かに…ちょっと隣の部屋のネクロマンサーとも話を擦り合わせてこい、私は少し席を外す、手が欲しい、そこの二人を借りる」
はぁーい
というかネクロマンサーさんも来てるんですね
「お久しぶりです」
「ん、んお、あぁ、いつかの…元気?」
「元気ですね」
文通で遅々たる速度で会話してる私たちです、まぁネクロマンサーさんは組織の人では無いので…ボスの個人的な友人枠らしいです
サクッと組織に誘ってくださいよ
すり合わせました、互いに情報を共有しただけですけど
「…シロのスライムっての結構使っていい?」
「構いませんよ」
「ありがとう、使用料は払うからさ…ここでの実験は私に任せてくれない?」
ネクロマンサーさんがやる気のようです、聞いたら働け状態の私よりもやる気が断然ある彼女に任せた方がいいでしょう
決してサボりたいだとかめんどくさいだとかそういう理由ではないです
「そういえば実験の中身は聞いてないですね、具体的にはどう攻めるんですか?」
「なりすましからの少しずつあちらの主要部分に手勢を滑り込ませるって方法」
…あー、私の得意とするところでは無いですね
「まだ送る駒を作る段階だけどね」
あ、そちらならできますね
「まぁなにかあれば手伝いますよ、手紙でもいいので、連絡ください」
「ん、わかった」
「あ、あと、アンという茶髪の、このくらいの女性が見つかったら連絡ください」
「ん」
それではアンさんのことはこれでいいですかね?
見つかったと仮定して私は次の準備をしたいです、具体的には記憶を完全に消す、または植え付ける、更には移動、保管する方法の確立です
分野が大きく掛け離れるので早めに行いましょうかね
「…そういえばさ、以前に能力を生み出す人の魂を呼び戻して受肉させたじゃん」
「やりましたね、安定しましたか?」
「うん、安定した、だからそいつは任せていい?」
「んー、まぁそれくらいならいいですよ」
たしか…存在しないような魔法を個人専用で植え付けるんでしたっけ
聞いた話だと
時空魔法やら重力魔法やらの理に触れる魔法を使える人形を作ったとか
…行使した瞬間に崩壊と記録があったらしいですけど
そちらの薬品化が出来れば透明化のように一時的な付与を誰にでも、とできるかもしれませんね
…
「やる気が湧いてきました」
「ん、そう言うと思ってた」
ネクロマンサーさんと硬い握手をします
「…そういえば、私、ネクロマンサーさんの名前を知りませんね」
「…知らなくていい、とは思うけど、シロには知ってて欲しいとも思った
私はミヨ、シロとかと違ってちゃんと本名よ」
「…おや、これは失敬私は」
「いや、言わなくていいよ」
「…何してんの?そこまで仲良かったっけ」
「あ、ミスr…ボスちゃん」
「ボス…ちゃん?」
「…名前教えるくらいには仲良しよ」
「そっかぁ、仲良しかぁ、私の名前を言いかけないでねぇ?」
ボスがちらりと私を見ます
ボスの手がバチバチと電気をまとってます
ヤメテっ
「…ナニモキイテナイデスヨ」
「…まぁいいよ、例の薬はとっくにできたんでしょ?それからは?」
例の薬とは私に施設をくれた理由となった薬だ
未来予知者の未来を自力で手に入れるための、蘇生薬
「仮に死んでしまった時は蘇生を、
ミヨさんが魂を呼び戻した時の薬も完成しました、定着させるやつですね」
「あとはどんなパターンがあるか…」
その未来予知者の死に方は不明だ
死ぬ時期しか分かっていない
それを、その死を全力で回避または乗り越えるために何パターンも薬を用意するのだ
全てはボスのために
「…肉体がぐしゃったときはどうだ?」
「それは蘇生薬で治せますね、完治には四ヶ月かかりますが、指一本あればスライムでの補助も含めますが元の姿になれます」
「…それは元の姿なのか?」
ミヨさんがなんか言ってます、無視です、無視
ボスからそれでもいいって合格出たんですから
「…じゃあとりあえずは無さそうだな」
「そうですね」
そのあと少しだけ会話は続き、私は施設へ戻りました
擬人化もそこそこに、その能力を生み出す人の実験が私を待ってます
(もう潰えそうですよぉー(小声)切れるカードが燃え尽きていきます…)




