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悪の組織の悪たるゆえん  作者: ファイル
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私と偽装と露天風呂

19 私と偽装と露天風呂




「…あの、良かったんですか?彼氏さんとかそういうのじゃ?」



こちらの宿の露天風呂は混浴という男性女性関係なく入れる湯船だったようです


タオルが大きいのも着るようにできる物のようで、混浴が売りの宿だったようです


街の中心から一番最初に露天風呂がある宿にその設定は優しくないと思います



「彼氏?アイツが?ふふっ、単なる幼なじみよ、いいよあんなやつ」



この街の勇者代わり、用心棒扱いのフウカさんと混浴の露天風呂に入っています


どこかスッキリしている顔に見えるのは気の所為ですかね?



「昔は仲良かったんだけどね、いつからだろ」



…ラブコメの波動を感じます

それはもう嫌な予感として


「そうだ!今日はナズと一緒していい?」


一緒?今日は?

ふふ、ふふふ、いやいやまさかね?


私の直感が危険と告げていますよ



もちろん「駄…」


「ハーブティーって知ってる?最近……」


「楽しい夜になりそうですね」



「なずぅ…」


ナコさんからジト目をもらいました、ご褒美ですかね?



混浴露天風呂の宿から出たところには足湯があります

そこには男性が多くいたのですが…

後でフウカさんに聞きますか





ハーブティーとは私も詳しくは知りません、あちらの、機械世界の文化のものですが、私の趣味のオコウチャ、ティーパックなるものと同系列で扱われています


私もですがあちらの世界から仕入れてる方も詳しく知らないと思います

違いがよく分かってませんもん


とりあえず美味しくていい香りなのは共通してます


いつかあちらの世界のかたに聞きたいとこですね



「まさかハーブティーを嗜んでいる方がいるとは」


「わかる!ナズって私と相性いいかも!」


そもそもあちらの世界のもの事態が高級品扱いです、それを趣味にしている人は少数派になります


最近は音楽が人気ではありますが、あちらは録音魔石とかを何とか使って広めようと努力があったからです



今は泊まる宿に戻り、月明かりの差し込む椅子と机でフウカさんとオコウチャ、ハーブティーを飲んでいます



ナコさんは早めに寝てしまいました

私も眠気はあります、温泉入ると寝付きが良くなるんですかね?



「ふーん、ナズ達は雷の街から来たんだ、都会じゃんね、いーなー」



ふと我にかえります、フウカさんとはウマが合いなかなか饒舌になっていましたがこの方、勇者の部類に入ります、入りますよね?


勇者とは言っても様々ですが、基本は街の治安維持です


積極的に乱そうとしている私たちからすると敵ですね



…うーん、勇者リストなんて物が作られ、ボスや上司に差し出すなどで抹殺出来れば手柄となります



「…考え事?私じゃ頼りないかもしれないけど聞くよ?」


…あー、そういえば


「先程、露天風呂の宿の外に足湯があったじゃないですか」


「あぁ…あれね、あの男達ね、あそこから飛ばした先に月見の宿っていうのがあってね


そこの温泉って寝転んで入るところなの、天井が夜になったら開いてて、私もそこに吹き飛ばすことにしてるのよ」


以前大怪我させて用心棒業務に支障をきたしたとからしいです


「そーんで、そこにアグが飛ばされたら、そこにいた男性客達が私たちを見に来るのよ…ハァ、なんか湯上り姿がいいとかで気味悪いわ」


あぁ、そういう…



ちなみに足湯に露天風呂宿の受付さんもいましたね、あのやろう…



「私もアグに風呂で会議しよ、なんて言われなきゃ混浴なんか入らないけどさー…男の一人でも作るべきなのかなぁ…」


冒険者はいつ死ぬか分からない職業です

…かと言ってパーティーの不和の種としてもよく聞きます

まぁ私は冒険者では無いので詳しいわけではありませんが


「そうだ!ナズとナコも明日一緒に行かない?」


「…?どこにですか?」


「どこって冒険者なら火口トカゲの宝石狙いでしょ?私も討伐があるし!強いでしょ?二人とも!」



あー…いやしかし…くぅ…






火口トカゲとは炎の街の火山側の門から出た後、更に火山を登った頂上付近に棲む魔物です


火山から宝石を取ってきているとされ巣穴に溜め込む性質があります


また、冒険者が観光、治療、リハビリのついでに倒す魔物としても有名らしいです



冒険者がねぇー



「…結構…のぼり…ますね…!」


熱さと暑さと山登りの辛さが私に深刻なダメージを与えています


ナコさんは私をチラチラ見て心配そうな顔です


「ナズは後衛職だったかぁ…でも体力はいるって!」


フウカさんは意気揚々と言った所でしょうか



宿を出たあとに同パーティーメンバーだろう人に話しかけられますが今日はこのふたりと行くから休みでいいよ、なんて言って振り切っています


パーティーメンバーの方は男性の方が多い七人で

フウカさんは治安維持の冒険者の数がそもそも少ない炎の街の更に極小数の女性冒険者の一人のようです



男性の一人がまぁ女性なら、なんて言ってたんですが聞かなかったことにした方がいいですかね?


男性だったらどうなるって言うんですか



フウカさんは槍使いのようです

長い持ち手の先には刃が少しついており、背中に背負うように装備しています、歩きづらそうなのになんで私より登るの早いんですか



「ちょっと、無理です」

「フウカー」


「ん?あ、分かった、ちょっと休憩しよっか」





「あー、だからそんなに軽装なんだ」


本当に観光に来ただけ、と話します


「はい…なので正直帰りたいです」



「あっはは!ごめんって!」


愉快そうに笑うフウカさん、でも少し、悲しそうです


…風が止みました

それはもう、不自然に




「でもさ、帰すわけないじゃん、組織の研究員さん?」



…おっと、おっと!?


槍を構えるフウカさん、休憩していたこともありその距離は必中必殺の間合いです


「…ナズ」


ナコさんも立ち上がりますが

無理ですね、昨日の風魔法からしても、ナコさんは行動が一瞬でも阻害されることでしょう、その一瞬で私を刺せます


「…フウカさん、いつから?」


「昨日泊まった宿、あそこは組織の人が利用するってマークしてたところなの」


ああー…あー…



「どっちの組織か知らないけど、あなたは勇者で回されてる指名手配リストにのってるの、死んだはずだって、既にバツ印だけど」


……


「これは、魂を刺す槍、どんな方法で生き返ったのか知らないけど蘇生は叶わない、せいぜいゾンビにでもなる事ね」


「…ナズぅ」


…ふむ




「風のゆりかご」

フウカさんが魔法を唱えます

魔法、たぶん


「っ!主!」


サクラさんが慌てて声を荒らげます



「殺気がダダ漏れ、昨日の夜も、私の首元に剣なんて、楽しんでただけなのに不粋じゃない?」


「…当ててはいないっ」


「いや、そういうことじゃないっての」



相当な実力者です、本当に魂を刺す槍なら、死ですね



「動かないで、刺すよ」


「…何が目的ですか」


刺すよ、では無いんですよ、どうして刺さないんですか


殺す目的なら会話なんて不要です

何も話さずに刺し殺せました


風魔法の練度が相当です、ナコさんもサクラさんも苦戦はしますが負けることは無いでしょう

ナコさんの認識阻害も効いてなさそうですし、幻影も破れそうです



「…私の仲間になっ」

「それは無理です」


「そん、な食い気味に言う?」


そんな一世一代の告白みたいに…

唇が震えていますよ



…どうして、泣くんですか



「…じゃあ、私を仲間にしてよ」

「…それも、無理です」


「なんでよ!何がダメなのよ!」


「ダメじゃないです、無理です」


「そんなの…変わんないじゃない…私が何をしたって言うのよ、私が悪いの?なんで?ねぇ…なんでよ…」


槍を落とし膝をつきます

座る私の肩を掴み泣き崩れます



闇が深そうですね



「あなたは、仲間にできません」


「なによ、それ、なんにも知らない癖に!私だって」


「フウカさんは、仲間にできません」


「…なっ、えっ……え、じゃあ」


私もすこし面倒でしたね

「死を偽装することは簡単です、フウカさん、ならともかく、勇者代わりのフウカさんは無理なんです」


戦争の火種とは表の関係上ですが、裏からすると場所を教え続けている爆弾です

ただの失踪ならくまなく探し回られることでしょう


「しかし、勇者代わりというのは美味しい位置なのも変わりません、スパイというのは嫌いですか?」


「…それは私にこの街に残れってこと?」



…どうして今にも壊れそうな表情をするんですか、この街に何があるって言うんですか

いや、聞きたくないですけど


そういうのは私の管轄外です


「はぁ、まぁ、死んでおきますか」


「じゃあ…」


「えぇ、私も深夜のティータイムを共有できる方は欲しかったんです」


「う」

ナコさんがアピールしてきます、可愛いですね


…でもナコさん猫舌じゃないですか

いや、いいんですけど飲むのに話しかける雰囲気じゃなくなるじゃないですか


それに「居てくれるだけでありがたいのでいいんですけど」ね






アカさん暇ですかね?

『…暇じゃないです』


返事が早いので暇そうですね

即返ってきました



まぁ皆さんに協力要請しますか

死体偽装をしたいのですよ


『うん?シロ?休暇中じゃないの?』

『うーん、手が空いてる人少ないんじゃない?』

『いま忙しいもんね』


…?皆さん何してるんですか?


『クロから聞いてない?』

『戦争の準備だけど』

『シロに調合させる素材集めだよ?』

『私空いてますよ!シロ先輩!』

『キミドリも休んでて!』


「…クロさん」


「…言ってなかったっけ、戦争」


あ、聞いてませんね

…なんで顔真っ赤なんですか


「ぜんそー?」


フウカさん、涙と鼻水でぐしょぐしょじゃないですか…


女の子がしていい顔じゃないですよ



あ、アカさん、フウカって知ってます?配布資料より詳しく

『…炎の街の用心棒の人?神槍フウカ?』


え、何それかっこいい


仲間にしたら頼りになりますかね?


『あー、炎の街の裏の顔でも見た?でも堅物そうだし強いから洗脳なんて無理じゃない?』


いえ、仲間にしてと懇願されまして


『あ、みんな、戦争準備中止』

『アカ?』

『なんで?』

『ムラサキ上司に言い訳できる?』


『神槍フウカの死体偽装の依頼が来た、報酬は神槍の協力』

『まかせて』

『誰?勇者?』

『シロのスライム借りるね』


あ、本人いますよ、目の前に


『…』

『え?』

『笑』

『死体偽装、スライム届けるだけ説』

『そいつめっちゃ強いよ?』

『強いの?』

『シロ生きてる?』


『…火山あったよね、演出考えたわ、スライムもいらない、解散、受け入れ態勢だけでよし、戦争準備再開で』


おお、アオさん流石です





死体偽装は以前は腐肉やら体を作るところからやっていましたが魂以外を全て真似れる人工スライムが多くを代替わりしてくれるようになりました


まぁ魔物臭くない血液などは必要ですけど


時間短縮の分、人工スライムの素材集めに労力が割かれますが、以前に比べればマシです



「…ほんとにのんびりしてていいんだよね?」


「ええ、あなたに私たちをヤル気さえなければ簡単に成功します」


炎の街の上から二番目に高い立地の宿の露天風呂に来ています


いい眺めですねぇ…

ちなみに一番高いところは外の湯船ですが洞窟風らしいです、景色は見れないようです



「…私をこの街から出してくれるんでしょ?ならナズに委ねるよ」


え、ほんとにこの街何があるんですか?


ここまで来るとちょっと興味が沸いちゃうじゃないですか



「ほら、ナズも…ナコも飲む?」


湯船に浮かぶお盆、こちらにはお酒が入ってます


今にも零れそうでヒヤヒヤもんなんですけど


「…大丈夫、私の風魔法を信じてよ」


え、じゃあ揺らす演出しないでくださいよ…


「嬉しい、うれしいなぁ…こんなに嬉しいこと、うまれて初めてかも」



そんなにですか


…雷の街に着いたら聞いてもいいですかね?




宿に向かいます

カランカランと音を立てる履物

うぅん、歩きづらい…


特殊な服装も歩きづらさに拍車をかけます


「なずぅ…酔った…」

「ナコさん…結構飲みましたよね…」

「あはは!ナコ可愛い!」



「ご機嫌だな、フウカ」



私たちの前には立ち塞がるように立つ男性達


赤髪のツンツン野郎…用心棒のアグさん

横にはフウカさんのパーティーメンバーを含む武装した方々

それに知らない顔のおじいさんが複数人




えっとぉ…何が始まるんです?

これは、組織に入りたかった女の子の話です


炎の街の裏…はご想像におまかせしましょうかね

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