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【第77話:夜霧が駆ける森】

(こちらの方向で、結構な距離です!)

ラウマがアミュアの頭の中で伝える。

「こっちの方向で距離は遠いとのことです」

アミュアが森の奥を指す。

町とは少し方向が違うので、森を通って行くしか無いようだ。

「わかった。馬車は諦めて置いていこう。夜霧なら森でもはやいからね」

ユアも理解し方針を述べた。

アミュアの中にいるラウマには、ノアのいる方向がわかるのだ。

距離もアバウトに解るようで、遠い近いと感じるようだ。

「昔カーニャが使っていた隠蔽結界を使ってみます」

アミュアはユアとソリス以外の記憶をほぼ正確に思い出していた。

魔法に関しても魔力が許せば、ほとんどを使うことが出来るとのこと。

 街道から外れた岩場に馬車を泊め、アミュアが魔法を詠唱する。

唱え終わるとぽうっと馬車が光ってから透明に変わった。

見る角度をかえると若干歪みがみえるが、反対側をすかして投影しているようだ。

よほど近づかなければ解らないレベルだった。

「完璧です」

初めての魔法がうまく行ってアミュアはドヤ顔である。

記憶が戻ってからのアミュアはほぼ昔と変わらないリアクションをする。

その健やかさはユアを十分に癒やすのであった。

「これで大丈夫だね。ありがとアミュア。夜霧!」

アミュアに礼をいってから夜霧を呼び出すユア。

岩の影からするりと夜霧が現れる。

ユアの前で足をおり、乗せる姿勢を取った。

最初にアミュアがまたがり、後ろから支えるようにユアが乗り込む。

「よし、夜霧森の中だけどできるだけ揺らさないようおねがいね!アミュアが落ちちゃうから」

了解の意味か長い尾をひゅんと振ってから走り出す夜霧は風のように木々の間を抜けていくのであった。




 ノア死力を尽くして戦っていた。

相手はこの森の主たる地巨獣ベヒーモスだ。

地巨獣は体長が家並みにあり、頭の高さだけでもノアの倍はある。

焦げ茶の硬い毛に覆われており、これは物理だけではなく魔法に対する耐性も持っていた。

腕だけでノアの4~5倍の重さがあり、その一撃は普通の人なら消し飛ばす勢いだ。

ズン!

ノアはまたかわしたが、スカートの裾が爪で破ける。

「あああ!よくも!もうゆるさないからな!」

スカートは白いブラウスと黒いカーディガンとセットの物で、ノアもお気に入りの一着だった。

スカートが破けたことで、そこを気にしなくなったのでノアの動きは良くなった。

スリットのように大胆に開いてくれるので、足の動きを阻害しなくなった。

キュンっと空気を鳴らしてノアが弧を描く。

この獣は右から攻撃するのが好きだと、ノアは見切っていて攻撃しにくい方向に回るのだった。

巨獣の右腕がブンと唸って襲いくるが速度でかいくぐり、カウンターになるように爪でえぐった。

巨獣の太い腕から血煙があがる。

『GHAAAAaaaaaaaa!!』

痛みを感じるのか、巨獣が吠える。

その勢いのまま巨獣の死角にまわり高く飛び上がるノア。

頭を狙いたいのであろう。

完全に見失った巨獣が一瞬停止した隙に、ノアが両手の爪を揃え抉るように回転しながら落ちてくる。

とっさに気配でさっした巨獣が避けるが、間に合わず顔をえぐられた。

『Graaaah!!』

咆哮とともに横殴りの爪が来る。

うなる巨腕をバック転でかわしたノア。

びりり

今度はカーディガンの背中が裂けた。

少し背中にも傷が入り血が滲んでいたが、ノアの頭は血が登って気づかない。

「ゆるさん!しねえ!!!」

巨獣にダメージは入れるが、ノアの火力ではなかなか削りきれず、ノアの被弾も増えていく。

完全な泥仕合と化していくのだった。




(だいぶ近いとおもいます!)

アミュアの頭の中でラウマが告げる。

「ユア近いみたい!もうすぐだよきっと」

アミュアの叫びで、ユアも気合を入れ直す。

「よおっし。夜霧いけええ!!」

どんっ!っと一気に木の上まで跳ね上がる夜霧。

本来ジャンプ力を発揮している。

飛んだ時に、ユアがアミュアごと伏せることを覚えたので、森ならこの方が早いのだ。

「ひゃああ~」

アミュアは声が漏れてしまうが、自分でも夜霧にしがみつく。

「見えた!なんかあばれてるよ?!」

目のいいユアが真っ先にノアを見つけた。

残りの距離をみていけると判断したユア。

「夜霧あとはアミュアのフォローよろしく!」

それだけ告げると頂点に達し落ち始める夜霧を蹴り、さらに前に飛ぶユア。

アミュアだけしがみついた夜霧が森の木に蹴り込みさらにジャンプ。

「夜霧ぃ!後ろに移りたいから一回とまってええ」

ジャンプ中に夜霧の頭に叫ぶアミュア。




「なんかと戦ってる!」

枝を蹴り、2回めのジャンプでノアが見えたユア。

背中からクレイモアを抜き出し上段に構える。

空中でバランスを取り、若干の軌道修正。

ノアに向かい叫んだ。

「ノア!!避けてね!」

身体強化をまとったユアが舞い降りて来る。

「!!」

突然の事で反応出来ないノアだが、とっさに距離を取ろうと巨獣から離れる。

その瞬間にユアが落ちてきて斬りつける。

ザンッ!

ユアのクレイモアが巨獣の右肩から入り胸まで切り下ろす。

『GhhRAAAAAAAAAAaaaAAaaHHH!!』

流石に致命傷になったか叫びをあげる地巨獣。

ユアはすでに受け身を取り終え、正面に巨獣を捉えている。

「ノアひさしぶり。怪我してないかな?!」

驚いたノアは状況がわからず声も出なかった。

そこに上空から狙撃でアイスジャベリン。

ズンっと巨獣の頭に突き立った。

キュウウウウウルル

回転が収まるに連れ音も変わっていった。

ついに命が尽きたのかズゥンと地響きをあげて地巨獣が倒れた。

すとっと、キレイに着地した夜霧にはアミュアが騎乗していた。

「ノア、やっと見つけた」

アミュアもノアを確認しほっとする。

「アミュア‥ユア」

二人をやっと認識したノアであった。

こうして3人が揃ったのであった。




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