【第76話:アミュアに戻ったもの】
祠に着いたユア達は希望とともに進むのであった。
入口の蔦や草を払い、中にすすむユア。
異常がないのを確認しアミュアを呼んだ。
「大丈夫みたい。おいでアミュア」
祠の壁はあちこちで崩れてしまっており、植物が侵入してきていた。
お陰で光が多く入り、薄暗いが物が見えないほどではない。
「やはりラウマさまの像ですか。わたしの知識では円環の儀式とあります」
うなずくユアは外を警戒する位置に移動。
「あたしが守ってるから、ゆっくり試して」
アミュアもうなずいて像の前に進む。
両手をラウマ像につなぎ目を閉じる。
ぱあっと金色の光が広がり、像からアミュアに光が移っていく。
(ああ、ラウマ様と昔に話した記憶が流れ込んでくる)
アミュアに足りなかった記憶が補われて行くが、やはりソリスとユアの記憶はないのだった。
アミュアが記憶の補填を感じた瞬間に、移動しいつものラウマ空間にいた。
『アミュア無事でしたか?』
ラウマは何時ものゆったりした白トーガで両手を差し出した。
アミュアもその手を取る。
「はい、今さっき記憶もいただきました」
ラウマは笑顔でうなずく。
『よかった、無事私の持っていた記憶は渡せたようですね』
そこでアミュアの顔がくもる。
「でもユアの記憶がありません」
驚くラウマ。
ラウマがこの場所にいて驚くのは本当の異常事態だ。
『そんなはずはありません。わたくしの知り得るユアは、今すべてアミュアに伝えました』
困惑するアミュア。
「でも何も思い出せないです」
それはアミュアにとっても辛いことと今ではなっていた。
『貴方の中で欠けている記憶はほぼ埋められたはず‥‥何か想定外の事が起きていますね』
そこまで話しまたにっこりとラウマ。
『とりあえずまた会えて嬉しく思いますアミュア。体には異常はありませんか?』
「特に異常はかんじられません」
表情のかたいアミュア。
『あなたの中のわたくしも戻れば目覚めるでしょう。ノアを探す手助けが出来るようにしておきます』
そこで少し硬い表情になるラウマ。
『あなた自身が大変な時に、心苦しいのですができる限りの力は貸します。ノアをお願いしますね』
最後ににっこりとして告げた。
『すぐにユアの元へ戻しますが、どうか健やかにアミュア』
「ありがとうございます、おかあさま」
戻った記憶にあった呼び方でラウマを呼んだアミュア。
『‥‥できればおかあさまはちょっと。小さい頃のアミュアなら良かったのですが』
すっと暗転し元の場所に戻るアミュア。
両手の光も収まってきていた。
目を閉じると受け取った力の量がわかる。
言葉に違わずかなりの量だが、ユアからかつて受け取った量よりも少なかった。
(全部注ぎ込んだら、最上級の魔法が撃てそう)
(まって~それされちゃうとわたくしがまた行動不能になりますよ)
(びっくりするのでいきなり話しかけないでくださいラウマさま)
(ごめんなさい、でも半分くらいは常に残してね。体がなくてもそれくらいはいるのです)
(了解しました)
アミュアがじっと動かないので、心配になってユアが見に来る。
「アミュア大丈夫?もうおわったの?」
眉を下げるユアに答えるアミュアに表情は薄い。
「ええ、無事力を分けてもらいました。ラウマさまとも心で話せるようになりました」
「おぉ?ラウマさま?ラウマの方?」
ユアはラウマ本体とアミュアの中のラウマを分けて考えている。
アミュアは感覚的に同じ人物だと解るのだが、合わせることとする。
「弱い方のラウマさまです」
「なるほど!?体はまだ無理って事?」
「そうなります。少し待ってくださいユア。本人に聞いてみます」
すっと目を閉じるアミュア。
目を開いたまま話すと混乱するのだ。
(ラウマさま例えば次の像から力を取り出したら体が作れますか?)
(ええ、今の倍ほどあれば作れます。でも今は急ぎませんのでノアを探してほしいです)
(わかりました。緊急時は遠慮なく話していいですが、それ以外は一度名前を呼んでください)
(ええ、驚かせてごめんなさいアミュア。またよろしくお願いしますね)
(では後ほど)
ぱちりと目を開けるアミュア。
「もう1回いまのをもらえば体も作れるそうです」
「おぉよかった。また3人で旅ができるね!」
「ええ‥今は体よりノアをさがしてほしいと言われました」
うなずくユア。
「もちろん、心配だもんね。さっそく探してみる?」
「そうしましょう」
そうして祠をでて馬車に戻る二人であった。
アミュアの顔色もだいぶよくなり、ユアも安心できたのだった。
少しだけ街道方向に移動してから野営することとなった。
アミュアの食欲も戻り、今夜はお肉の入ったスパイスシチューとなった。
赤い色が辛そうだが、それほど辛くない不思議なシチューである。
煮込み料理はユアの得意科目である。
アミュアも手伝い、焚き火と生活魔法で水を馬車に足した。
馬車にはカーニャおすすめの圧縮収納が備え付けられ、3日分くらいの水が収められる。
アミュアの生活魔法なら毎日それを満たせる量の水が出せた。
そうして食事も終わり、交代で馬車に入り体も拭いたので、食後のお茶を飲んだ。
「そうかあ。あたしの記憶だけ戻らないのか‥‥」
アミュアの説明でラウマから記憶をたくさんもらった話をした。
「どうやらラウマさまから見たわたしの記憶?らしいです。それをわたしが解釈して取り込んだと教わりました」
首をひねり理解していなそうなユアがにっこりして答える。
「あんまり難しいことはわかんないけど、アミュアが元気ならよかった!」
さらに捕捉とアミュアが話す。
「おおむね記憶はもどったということです。ミーナやマルタスさんの事も思い出しました。ルメリナの事もハンターオフィスの事も」
じっと見ているユアに、求める答えを告げる。
「ごめんなさい。ユアの事だけは思い出せませんでした」
アミュアが残念そうに告げる。
「そか、仕方ないよ!そのうち思い出すかもしれないし気にしないで!」
強がりだけではない笑顔はアミュアのためだと伝わる。
アミュアはきゅっと胸が痛くなる。
今までにない自分の反応にとまどいながら伝える。
「ユアをみていると胸がきゅっとします。本当に少しずつ思い出しているのかも」
アミュアの表情も明るくなるのだった。
そうして二人の夜を重ねていくのだった。
かつてそうしたように。




