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【第75話:ノアの進むさき】

 カルヴィリスと別れたノアは森を歩いていた。

街から離れた人気のない森だ。

ノアはカルヴィリスの前で、頑張って大人ぶって見せたのだ。

それがカルヴィリスが自由に選択し、カルヴィリス自身を救うたった一つの手段だと。

自分が、カルヴィリスの手のかからない人間だと示すしか無いと、ノアは考えたのだ。

苦手なお風呂も洗髪も自分でできると見せた。

これからの道を自分で選べると見せた。

安心してしたいようにして欲しいと伝えたかったのだ。

かなり無理をして。

ノアの両目からは大粒の涙が止まらない、嗚咽もここでは聞くものもいないので遠慮はもういらなかった。

子どものように両目をこすりながら、あーんと大声で泣くのだった。

さみしいよと。

ルヴィと一緒にいたいよと。

これはノアが大人になるための儀式でもあったのだ。

そうして泣きながら森を進み、選んだ道に進むのであった。




 半日もすすんだノアはちゃんと泣き止み、しっかりと進むのであった。

カルヴィリスに怒られたので、服を汚さない壊さないも守りながら。

腰にまいたベルトにはカルヴィリスのくれた収納ポーチもある。

そこにはちゃんと洗濯してある替えの服も入っている。

時々は思い出して悲しくなるかもしれないが、ノアは歩くことをやめないと決めていた。

ちゃんと野営をし、服を着替え体も拭く。

カルヴィリスに教えてもらった旅を、嬉しそうに行うノアであった。

そうして4日ほど進むと、かつて泊まった町に着いた。

初めてちゃんと服をそろえた町だ。

カルヴィリスから金貨も貰っていたので、洗濯もしてほしくて宿を取った。

「これ洗濯おねがいしたいの」

そういってちゃんとたたんだ洋服を4セットだす。

「明後日には仕上がるよ。これが控えだから」

宿の主人は紙に番号を書いて、ノアの服を受取大きな袋にしまった。

「ありがとう。晩ごはんまで少し出かけてくる」

宿は食事も2回出るので、お昼以外は戻るようにする。

これらは全てカルヴィリスに教わったやり方だ。

カルヴィリスのお陰で、ただ逃げてきた少女は、生きていける少女になっていた。




 ノアはカルヴィリスの勧めもあって、ハンター登録をした。

公都エルガドールの手前の、大きめの街で登録を済ませていた。

ただのD級ハンター証だが、身分の証明としても使えるし、日々の糧も得られるのだ。

そして周辺の情報を仕入れることも出来る。

この町にも小さいながらハンターオフィスの出張所があった。

そこのカウンターに一人しかいない職員が詰めていた。

「なんか情報あるかな?」

ノアは知らない人と話すのが苦手だった。

人見知りなのだ。

「おやかわいらしいハンターさんだ。今のところは特別なのは無いね。最近よく着てる影獣の注意書きだけかな?」

年配の男性職員は笑顔でノアに対応してくれた。

これくらいの社会不適合はハンターでは珍しくない。

ノアは女子としても小さい方なので、どうしても可愛らしくみえてしまう。

カルヴィリスの選んだ服も可愛い系だった。

色はカルヴィリスと同じがいいとノアが言うので黒だったが。

ノアはあれから毎日自分で髪を三つ編みにまとめている。

あちこち引っ掛けて汚さないようにだ。

自分で髪を洗うようになり、汚さない方が楽だと気付いたのだ。

「わかった、ありがとう。これ買い取ってほしい」

そういって一つだけ残っていた収納ボックスから途中でたおしたモンスターの素材を出す。

「おどろいた!嬢ちゃん強いんだな?これ一人で倒したのかい?!」

ノアがだす素材はCや中にはBクラスの魔物素材がまじる。

量もなかなかのものだった。




 結局ノアの出した素材は今日払った宿代を引いても黒字だった。

やり取りの中で、よくわからない事はちゃんと質問もできて、お釣りやお金の単位も教わった。

計算もメイド達が教えてくれてたので、足し算はできるのだった。

引き算はちょっと間違うことも多い。

そうして町での生活もちゃんと1人で出来ることを確認したノアはまた少し自信を付けるのであった。

翌々日に洗濯物を受取り収納すると、今度は最初に影獣の襲撃が有った村を目指す。

あの泣いていた女児に会いに行くのだ。

「約束したからな会いに来ると。ちゃんと泣かないで待っているといいけど」

ノアの気持ちもだんだんと上向いていくのだった。

そうして村が近づいてきた所で、ノアは異常に気づいた。

(影獣の気配だ!)

一気にトップスピードに入るノア。

衣服が破けない限界を掴んでいたので、服は壊さない。

村が見えた所で大きくジャンプした。

上空から様子を見ながら村の入口に着地。

以前のように大きな音は立てず着地する。

右の影獣が近いので、突っ込んだ。

ノアの左右の手には影で作った爪が生えている。

以前よりだいぶ長いそれはノアの二の腕ほどの長さだ。

5本あると使いづらいことも気付き、今は親指以外の4本に爪を出している。

すでに事切れている村人の上から、影獣を吹き飛ばす。

ノアの爪は影獣にも効果があるのだ。

切り飛ばされた影獣は地に落ちた。

すかさず左手の能力で影獣を吸収する。

回りから影獣の気配があちこちあるが、積極的にノアに向かってくるものはいない。

攻撃すると反撃してくるくらいだ。

ノアは村長の家を目指す。

一番大きい家だと聞いていた。

(村長の家にあの子がいるはず!急がなきゃ)

大きな家にあたりをつけてノアが駆け込む。

扉はすでに引き裂かれて転がり、用を足していなかった。

「ちいさいの!どこ?!」

声をかける時になって名前を聞いていなかったと思い至った。

家中を探すと、奥に老人の死体があった。

そのさらに奥の部屋から気配がある。

どん!

と勢いよく入口から奥の壁まで飛び込み、中を確認した。

2匹の影獣が争うように何かを貪っていた。

ノアは嫌な予感を抑え込み左手で影獣を消す。

その後には小さな遺骸が半分くらい残っていた。

「あぁ‥‥間に合わなかった‥‥」

足元に落ちている、あの熱い生き物の欠片がとても悲しいノアであった。

「クスン‥‥まだ名前も聞いていなかったのに」

涙をこぼしながら後悔をおぼえるノア。

しばらく立ち尽くしてから、村にいる影獣を全部消すことにして外に出た。

ノアは影獣にも憎しみを持てず、やりきれなさだけを感じるのであった。



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