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レイド

 マグロみたいに競り落とされたらしい俺は酒場でカナンの隣に座る。というより座らせてもらっていた

 カナンには世話をかけるなぁ


 水着から着替えてしまったのは残念だが、この褐色スポーツ女子は普段からTシャツ一枚のホットパンツですごしていたので目のやり場に困るのは変わらなかった


「なんていうか……いつもすまんな。カナン」


「やむなくお姫抱きしちゃったけどそれで良かったんなら」


 頬杖をついて明後日の方向を見た

 そっかぁ。公衆の面前でお姫抱きかぁ


「……それマジ?」


「マジです」


 カナンの顔はいつにもましてきりりとしていた

 さてはイケメンだね?


「そうそう、あたしたちがなんやかんやしてる間にアトランティスクリアしたんだって」


「なんやかんやあったなぁ」


 ぼんやり遠くをみる

 ガチャで爆死したマンが数体転がっていた


「ビックリなんだけど、それでセイクリッドを一旦預けといて新しいセイクリッドに変えるとか出来るようになったみたい」


「あれはそういうことか。ご愁傷さま」


 俺は彼らに手を合わせた

 おいらはセイレーンしか興味ないからなぁ


「うん、今度始まるレイドでの特効キャラなんだけど当たらないって話だよ」


「そっかぁ」


 カナンの話にひとつ頷く

 あっ。爆死マン一人ログアウトした


「……ピタゴラスは参加しない、よね?」


 参加しないの前提なのか。カナン

 しかしうーん。確かに参加するうまみないよなぁ


「まぁね……」


「……今回はさ、あたしも一緒にいけないかも知れなくて。それ聞いて安心したよ」


 カナンにおんぶにだっこなのはほんとどうかと思うけど、いざカナンがいないとなると本当に参加する意味ないよなぁと思ってしまった


「ああ、やっぱりここにいた」


 青を基調とした和装のメイ氏がどっかりと対面に座った


「やあ。メイ氏」


 俺の挨拶にお、おうとカナンの方みて返事する

 どうした。俺の顔を直視できんか


「レイド、どうするわけ?」


「いやこれが参加するうまみが無さそうでね」


 カクカクとメイ氏は頷く

 どうした。乙姫に玉手箱でも貰ったか


「……れ、レベル。レベルだけ知りたくてさ」


「レベル……? 構わんが、なんのために」


 俺はカナンの方に目をやって、カナンが目配せしたのを確認するとそう言った

 カナンもメイ氏を信用しているらしい


「ほ、ほら。今回のレイドってマッチングじゃん

 どうせならフレンドとやりたいと思って。因みに自分は五十だけど……」


「奇遇だな。俺も同じくらいだ」


 おぉぉ、とメイ氏は呻いた

 どうした。地獄から這い出たか


「もしかしたら一緒になるかも……?」


 堂々とカナンを見ながら言うな

 さてはおまえもイケメンか?


「俺は参加しない」


 俺はきっぱりと言い放った


「そっそっそっかぁ……うん。しょうがないなぁ。それなら

 しょうがないなぁ……」


 メイ氏は本当にゆっくりと席を立った

 狼狽えすぎでは。この世の終わりじゃないんだから


「……MP」


 カナンの呟きにメイ氏がとびあがった

 どうした。地雷でも踏んだか


「ほ、ほら。レイドって実質セイクリッド出しっぱにできるだろ? だから……なかなか良心的だなぁと思って」


「その話、本当か」


 俺は席を立った




「皆盛り上がってるかーい!」


 うえーいとテンション低めの返答するプレイヤー達

 ライトアップが上へ上へ追っていきピタリと止まる


 蒼い双眼に白を基調とした服の少女が純白の傘を片手にふよふよと落ちてきていた


「むむ。ちょーっと盛り上がり足りないなぁ

 盛り上がってるかーい!」


 うるせーやらはやくしろー等厳しい意見から見えたまで返答するプレイヤー達がいた

 いやー、カオスですな


「あらら。ふん。いいもんね。別に……いいもんね!

 わ、ワタクシ司会をさせてもらってますイリエナでーす!

 お見知りおきをー!」


 少女がスカートを押さえるとうぇーい!とプレイヤーは鳴いた

 いいぞ。白と紺のストライプいいぞ


「今宵の獲物はこちら!

 でーん。ジラシックタートルさんでーす!

 いやぁんかわいーい!」


 島かと思ったそれは亀の魔物らしい

 いやどうしろとこいつ


「みなさまにはこの魔物を足止めしてもらいまーす!」


 ほほう。足止めとな


「戦略は問いません!

 もーじゃんじゃん蹴って殴って魔法でポンポコリンしてね!

 それではワタクシが地上に降り立ったらスタートですよぉー!」


 いや結構あるな!?

 地上まで結構あるな!?


「えー? 待ちきれない? しょうがない、なぁーーっ!」


 プレイヤー達の声に反応し、少女が傘を畳んだ。あああ。とか言いながら急降下している

 お、おい。あれ大丈夫なのか!?


「ワタクシをみつけたらーボーナスあげちゃいまぶっ!」


 あうあうとかいいながらジラシックタートルへ突っ込んだ

 もうどこにいるかわからんな。助けてあげたいところだが……


「スタァーートォ!」


 なんか元気そうですねよかった

 そんなことを思っていると目の前の見えない透明な壁がなくなった




「なにやってんだピタゴラス……」


 地面にキスしてますよ、メイ氏

 流石に殺到するプレイヤー達には勝てなかったよ。何人かに踏まれたし


「ほら。立てるか?」


 手を差し出されたのでこれに甘えて立ち上がった

 もう足ガクガクなんですけどどうしましょうね。産まれたての小鹿かな?


「とりあえずセイクリッドコールしろ。ピタゴラス」


「あ、ああ。わかった。先やっててくれ……」


 片手を頭にやって左右に振る

 こうすると落ち着くのだ。OK。行ける気がする


「……こい、炎帝“イフリート”!」


 ぼわっ、と地が円を描くように焼ける。その中で炎が上がり、巻き角着けた虎が仁王立ちした

 おお。かっこいい。こういうのもいるのか


「運よく当たったんだ」


「あーそういうことね」


 俺が頷くとメイ氏は少し俯いた


「まぁカメトキの方が付き合いは長いが……流石に相性が悪い

 それに特効まで付いてるとなると、な

 報酬もバカにならんと聞くし……」


 それはなんというか、世知辛いですね……

 俺は心からメイ氏に同情した


「さぁ、ピタゴラス。君もコールしろ

 出来ないってことはないだろ。それともどっか痛むか?」


「えっ、ええっと……」


 俺は詰め寄るメイ氏から逃げるように後退りした

 なんかセイレーン出す空気じゃない気がする


「ほら。はやく。遅れちまうぞ?」


「先に謝る。すまん」


 待たせるのも得策ではなさそう。腹はくくった

 メイ氏は目を丸くしている。そうだ。その調子で刮目せよ


「……こい。こい! 人魚姫!“セイレーン”!」


 足元から水の渦が発生したがいい加減なれた

 むしろ心地よささえ感じる


「……呼んだ、ピタゴラス?」


 渦が人の形を成して口を開く

 銀色の髪を大きくうねらせ、黄金の双目と際どいところしか隠せてない空色水着が特徴的なお姉さんがそこにはいた


「ああ。呼んだよセイレーン。毎度ながら助けてくれ」


「勿論だとも」


 セイレーンは俺の手を取り、密着してくる

 うーんでかい。いろんな意味で


「あー、ちょっといいか? すまんな邪魔して」


 そのね、当たるんですよメイ氏。これ

 俺はそんな思いを込めてメイを見た


「んー、その、見たところ……水のセイクリッドに見えるんだけど?」


 メイ氏の言葉にセイレーンの方を向くと頷いていた

 ……まぁ、水ですよね


「ジラシックタートルは草なんだよね。だから、相性が悪いかもなぁって……」


 マジすか?

 俺はメイ氏に丸い目を向けた


「……ピタゴラスの敵は滅ぼす。我が命にかけても。絶対に」


 やだぁもうセイレーンすきぃ

 握られた手を強く握られ、俺は知能指数が下がった


「ま、まぁ? それだけの絆があれば大丈夫かも……

 うん。やってみよう。カナンさんから託されたんだから」


 メイ氏の声はどこか震えていた

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