濁った風と透き通った空気
「まず一つだけ聞いときたい!男子、お前らの中でボスはいるか?」
「いるわけねぇ~だろ!!」
「そうか!それは良かった。では、お前ら全員を平等に扱う・・・それから女子!俺は女に手は出せない。だから言葉でお前らを変える。それからもうひとつ・・・」
「まだ何かあるのかよ?」
「なげぇ~よ!」
拓は笑って言った。
「お前らは自分でこの道を選んだんだ。迷うことは無い、ただただ突き進め!以上」
職員室へ戻った二人はさっきの事について話した。
「桐嶋先生どういう事ですか!?あんなことを・・・」
「安田先生は気付きませんでしたか?」と温かいお茶を一口飲んだ。
「え?なにがですか?」
「あいつらは罵声を吐きながらも俺の話をきちんと聞いていた。あいつらは今の自分に納得してないんですよ。だから俺にあのクラスを任せてもらえませんか?」
「はぁ・・・では、クラス名簿です。これに名前が・・・」
「いりませんよ」
「はっ?」
「名前を覚えるつもりはありません・・・名前で呼んでほしくなればあいつらから近づいてきてくれますよ」
その頃、2年3組では拓の事で話し合いがあっていた。
「なんだよ!あいつ・・・たかが教師のたまごのくせに」
「俺達を説得したつもりかって感じだよ」
「おい!田中!あいつをさっそく教育委員会に言っちまおうぜ。お前の親、教育委員の一人だろ?一志も急に殴られて血出したしな!」
「なぁ・・・田中?一志?」
2人は小さくうなずいた。
3時間目の国語の授業の時、拓は少しだけ時間をもらい男子全を外に連れ出した。
女子たちは拓が用意した紙に目を通した。
「俺らを外に連れてきて何すんだよ?」
「今から俺対お前らで喧嘩をする!」
「あぁ?何言ってんだ?」
「今日出会ったばかしの奴に色々言われムカついてるだろ?男はそのくらいの活気がないとな!例えば今日殴られたお前とかな」
拓は一志を指差した。
「やってやるよ・・・」と一志は前へ出た。
「そうだ!やる気がないやつ喧嘩が苦手な奴はしなくてもいい。ただ、罰なしで俺を殴れるのは今日しかないぞ」
20人中13人が拓に立ち望んだ。
「よし!かかってこい」
その言葉と同時に生徒たちは一斉に走り出した。
拓は避けて、生徒一人一人を拳を使わず地面に転ばした。
「てめぇ~もやり返して来いよ!!」
「俺は拳を使わないから、遠慮なく殴れ!」
だが、拓は華麗に避け続け、拳が当たらない生徒たちは次々とその場に座り込んだ。
「はっ・・・はっ・・・もう止めちまおうぜ」
一志だけは息を切らしながらも果敢に拓に挑んだ。
周りの人は黙って二人の戦いを見続けた。
「お前も俺を殴って来いよ!!」と一志が言うと拓は動きを止めた。
一志は思い切って拓の顔を殴った。
その後、拓も思いっ切り一志の顔を殴った。
その時「カシャッ」とカメラのシャッター音が聞こえた。
「みんな撮ったぞ!これでこいつも終わりだぜ」と一人の生徒が携帯を持って言った。
しかし一志は「そんなの削除しろよ」と言った。
「なんでだよ!?せっかくの証拠だぜ?」
「これはあいつが用意した遊びの一つだぜ。こんなので辞められても胸くそ悪いだけだ」
拓は一志を見て言った。
「どうだ?殴られるより殴る拳の方が痛いだろ?」
「知るか!」
「お前らはチームワークがないんだ。13人もいれば俺を何人かで抑えば好き放題殴れたのにな・・・」