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鶴見日向子の独り言(還暦過ぎてうつ病になった主婦の日記)  作者: 鶴見 日向子


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前の話の続き

認知症って、身体全体にも影響するんだと知った出来事

ばあさまの足の痛みの原因は、はっきりとは分かりませんでした。


しかし、私には「坂道の往復」しか思い当たりません。


あの長い坂道を歩いたことで、手術した足に負担がかかったのでしょう。


「再手術をするほどではありません」


主治医は言いました。


「骨粗鬆症ですから、埋め込んだ金属が動いてしまったのだと思います。安静にするしかありません」


とのことでした。


「なんでコンビニだったの?」


「なんで、すぐに車で探しに行かなかったんだろう」


そのときの落ち込みは、例えようがありません。


当時の私は、


「黙って出かけた姑が悪い」


という考え方ができませんでした。


起きた悪いことは、すべて自分の責任であるかのように感じていました。


「年寄りだから、仕方がない」


とも考えられませんでした。


退院の見込みは、まったく立ちませんでした。


そのとき、私は決心します。


「ばあさまが入院している間に、胆石の手術をしてしまおう」


ばあさまが退院してきてから、私の胆石が悪化したら、誰もばあさまの世話ができなくなります。


「今しかない」


そう思いました。


そして、ばあさまと同じ病院に入院し、手術を受けて……


その後のことは、以前書いたとおりです。


「絶対安静」


違う階に入院しているばあさまのことが、気になって仕方がありません。


けれど、看護師さんに言われました。


「おばあさんが混乱するので、会いに行ってはいけません」


そりゃあ、点滴の棒を連れて歩いていったら、びっくりするわな……


私自身も、ばあさまを気遣えるような状態ではありませんでした。


夫は、なんとか一人で家のことを切り盛りしていましたが、疲れ切っていました。


(普段、何もしなかった分が、まとめてきたね)


と思いつつ、私は娘と息子のことが心配で、心配で仕方がありませんでした。


意外にも、障君のほうが、ちゃんとしていたようです。


特に大変だったのは娘でした。


お弁当を作ってもらえず、毎日、四苦八苦していたようです。


それでも、


「大丈夫だから」


と言ってくれていました。


なんとか退院すると、私はすぐに、ばあさまのところへ向かいました。


すると、ばあさまの顔つきが変わっていました。


「大丈夫なんかあ? あんた」


そして、五円玉を手に持ち、その五円玉で布をこすっています。


何をしているのか、私にはまったく分かりませんでした。


認知症の発症でした。


私が入院、手術する前までは、しっかりしていたのに……


私が入院している間に発症し、進んでしまったのです。


たったの、20日間だったのに・・・・


「奥さんも肝臓が悪くなってしまって、自宅での介護は難しいですね。老健に空きがあります。そこで、施設入所を待ちましょう」


ケアマネさんから、そう言われました。


家に連れて帰れない。


たとえ連れて帰ったとしても、私はまだ肝機能障害が残っているため、介護ができない。


その事実は、あまりにも衝撃的でした。


本人にそのことを伝えると、ばあさまは絶望したような顔をしました。


「帰れへんのか?」


「うん。もう少し歩けるようになったら帰れるから。リハビリ、頑張ろう?」


私は、そう言って励ましました。


その頃には、夫が自分の息子であることさえ、分からなくなっていました。


分かっているのは、私が「嫁」であることだけ。


息子である夫のことも、孫である娘のことも、分からなくなっていました。


入院してから、まだ三か月も経っていません。


私が退院してからは、一週間も経っていませんでした。


認知症が進む速度の速さに、私は絶句しました。


そして、ばあさまは老健へ移りました。


その頃には、表情も乏しくなり、ただ、ぼおおっとしているだけでした。


私は、老健の費用に頭を抱えました。


ばあさまの年金だけでは、足りないのです。


「ばあさまの貯金を切り崩して……何年持つ?」


ケアマネさんが必死に施設を探してくれましたが、年金だけで入れる施設は、なかなか見つかりませんでした。


余談ですが……


ここで立ちはだかったのが、郵〇局の窓口です。


「本人確認」ができなければ、ばあさま名義の定期預金を解約できません。


私は「裏技」を使いました。


かなりグレーゾーンなので、詳細は内緒です。


なんとか解約に成功しました。


大変でした。


銀行などにある本人名義の定期預金は、要注意です。


認知症で本人の意思確認ができないと判断されると、家族であっても自由に動かせなくなる場合があります。


今の制度がどうなっているのかは分かりませんが、元気なうちに、お金の管理について家族で相談しておくことをお勧めします。


なんとか私が定期預金を解約し、夫がそのお金を、支払いに使える普通預金へ移しました。


「これで、しばらくはなんとかなる」


私は、心からほっとしました。


しかし、最初の悲劇が起きます。


老健へ入所してから、まだ一か月も経っていませんでした。


その日、夫は出張中でした。


「今日は自由だ~~~♪」


私は、何をしようかとルンルンしていました。


楽器の練習をしようかな。


のんびりテレビを見ようかな。


しかし、かかってきた一本の電話で、すべてがひっくり返ります。


老健からでした。


「お母さまが誤嚥性肺炎を起こしました。すぐに来てください」


私は取るものも取りあえず、病院へ向かいました。


認知症のおそろしさ・・・


いやというほど思い知ります

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