はああ???
前の話の続き
健常の息子――ここでは「健君」としておきます――は、ギプスをつけ、松葉づえ生活になりました。
「足の甲の骨折だけで済んでよかった」
本当に、ほっとしました。
事故から数日後。
障害のある息子――こちらは「障君」にします――が、夕方、外へ出ていきました。
そして、すぐに戻ってきたのですが、ゲラゲラ笑いながら足を引きずっています。
なんか変……。
足を見て、びっくりしました。
足の甲の厚さが、倍以上になってる!!!!
ところが、本人はまったく痛そうではありません。
障君には、つらい時や困った時に、笑ってしまうという特性がありました。
翌日、すぐに整形外科へ連れていきました。
レントゲンを見た先生が言います。
「ああ、典型的な『階段から落ちた時』の骨折ですね」
当時の我が家、平屋だったんですけど……。
家の裏側には階段がありましたが、障君は外へ出てからすぐに戻ってきました。
そこまで行ったとは考えにくい。
残るのは、勝手口にある「三段」の階段です。
「階段三段で骨折?」
絶句……。
担任の先生にも言われました。
「お宅に、階段なんてありました?」
「三段ならあります」
先生も絶句。
障君は、運動神経だけは抜群で、一輪車を乗り回していた子です。
その障君まで、ギプスに松葉づえとなりました。
「兄弟そろってかよ!!」
_| ̄|○
当時の母の心境です。
ところが障君、ギプスをつけたまま、普通に歩きます。
「普通は痛くて、足をつけないのですが……」
お医者さんも困惑していました。
この時、痛みにかなり鈍いことも判明しました。
後日、再びレントゲンを撮ると、
「骨折がひどくなっています。でも、本人が平気で歩いてしまうので、どうしようもありません」
先生が頭を抱えます。
ギプスは補強のため、どんどんつけ足されていき、見るたびに太くなっていきました。
その頃、健君と娘は、あるスポーツをしていました。
夫も一緒に参加していました。
健君が行けなくなったので、夫は娘と二人で出かけました。
自分の好きなことには、協力的なのです。
そして……。
足を引きずりながら、帰ってきました。
「痛いんだけど……歩けない……」
「はあああ????」
です。
翌日、三人そろって整形外科へ。
「ああ、足の腱が切れていますね」
はい、松葉づえ決定!!
家族の男三人、全員松葉づえ。
人生って、いろいろありますね。
――普通、こんなことはないだろ!!
## 後日談##
健君は三週間ほどで骨がくっつきました。
リハビリも一度しただけで、すぐに松葉づえなしで歩けるようになりました。
障君は相変わらずギプスのまま普通に歩いていましたが、一か月以上経って、ようやく骨がくっつきました。
ギプスが厚くなりすぎて、レントゲンを撮るのも大変だったようです。
何度も撮り直していました。
そして、ギプスを外すのにも、とても時間がかかりました。
ようやくすべて外し終えた先生は、疲れ切った顔で言いました。
「君はもう、リハビリをしなくていいから」
交通事故による骨折は、三週間で完治。
勝手口の階段三段での骨折は、一か月以上。
ものすごい皮肉です。
夫もしばらくすると歩けるようになりましたが、その後一年ほど、痛がっていました。
子どもの骨折は、それくらいの期間で治ってしまうのですから、すごいものです。
ただし、年を取ってからの骨折は悲惨です……。
## さらに後日談
事故を起こした若い女性は、かなり重い処分を受けたそうです。
罰金三十万円に、免許停止半年だったでしょうか。
ずいぶん昔のことなので、正確には覚えていません。
すると後日、その女性の母親が、我が家へ怒鳴り込んできました。
「お宅の子どもが飛び出してきたんだろうが!」
いやいや。
事故現場は垣根のせいで見通しが悪く、事故のあと、その家の垣根はすべて伐採されていました。
私は警察の事情聴取でも、こう話しています。
「事故の直後に土下座までされましたし、ご近所の若いお嬢さんです。どうか、あまり重い罰にはしないでください」
「足の骨折だけで済みましたし、保険会社からの賠償も、きちんと済んでいますから」
何と言っても、その時の我が家には、階段三段で骨折した男もいましたからね。
すると警察官の方が、逆に怒りました。
「全治四週間のけがを負わされて、どうしてそんな甘いことを言うんですか!」
まあ、そりゃあ、そうなのですが……。
私は障害児施設で、重い障害のある子をたくさん見てきました。
息子が元どおり元気になったのなら、それでよかったのです。
ところが、私が本当に腹を立てたのは別のところでした。
現場検証では、息子が道路へ飛び出したことになっていたのです。
息子は、
「植木で左右が見えなかったから、少しだけ首を出した」
とはっきり話していました。
飛び出したわけではありません。
そのことを警察官に伝えると、
「処分には関係ありませんから」
と言われました。
いや、関係あるでしょう。
処分の重さだけではなく、事故がどうして起きたのかを正しく記録することも、大事なのでは?
若い女性に重い罰を与えてほしかったわけではありません。
ただ、息子が悪かったことにされるのは、納得できませんでした。
警察って、案外いい加減です……(苦笑)
そして、事故の直後には土下座までしていたのに、一転してこちらを悪者にしたお母さん。
交通事故というものは、けがだけではなく、いろいろな意味で悲惨なのだと思いました。
幸い、2人とも、その後骨折するような事はありませんでした。




