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鶴見日向子の独り言(雑談)  作者: 鶴見 日向子


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3/13

エリアスのモデルの話

皇女の帰還の番外編にいれてましたが、こちらに移しました


少し重たい話になります。


私には、かなり年下の友人がいました。

性別や詳しい事は伏せさせていただきますが、親しい間柄だったと思います。


ある日、その人が言いました。


「本当は異性になりたい」


その時の私は、「宝塚や歌舞伎役者のようなものに憧れているのかな?」程度にしか受け取っていませんでした。


その後、私側のやむを得ない事情で、その人と直接会う事はなくなりました。


時々メールのやり取りはしていたのですが・・・・


そして、会わなくなって数年が経った頃。

共通の友人から、ある知らせが届いたのです。


「あの人が異性の格好をしている」


驚いたなんてもんじゃありませんでした。


けれど、その頃の私は自分自身の事で精一杯で、ただ驚く事しかできませんでした。


その後も、友人や知人達からいろいろな話が入ってきます。


「その格好のせいで職場を辞めさせられた」

「今日、こんな服装だったよ」


そんな話を聞くたびに、私は真剣に尋ねました。


「周りにはどう見られているの?

受け入れてもらえているの?」


すると、


「まあね……。

みんな、しょうがないと思っている感じかな」


という返事が返ってきました。


「受け入れてもらえているのならば……」


私はそう思い、その頃から関連する本を探して読むようになりました。


ですが、写真などを見ると、どうしても違和感が湧いてしまうのです。


「私は本当に受け入れてあげられるのだろうか」

「もしかしたら、生理的に無理だと感じて、突き放してしまうのではないか」


悩みました。


それでも、知人達から聞く

「元気にしているよ」

という言葉に、私は安心していました。


――元気でいてくれるなら、それでいい。会えた時に考えよう


そう思っていたのです。


ところがある日。


「あの人、亡くなったって……」


突然の知らせでした。


信じられませんでした。


私は関係者に電話をかけまくりました。

ですが返ってきたのは、


「急逝だって事しか知らされてない」

「あなたの方こそ仲が良かったじゃない。何か知らないの?」


という言葉ばかりでした。


葬儀の知らせを受け、お通夜へ向かいました。


たくさんの弔問客が来ていました。


関係者のお子さんが泣きじゃくりながら、


「次は来週の〇曜日に会おうねって約束してたのに」


と言っていたのを覚えています。


何曜日だったのかは思い出せません。

ですが、本当に突然の出来事だったのだと感じました。


棺の中のその人は、マスクをしていて、首元まで白い布で覆われていました。

見えたのは閉じている目元だけでした。


目の前にいるのが本当に本人なのか、まるで実感が湧かず、夢を見ているような気持ちでした。


それから私は、性同一性障害についての情報を見かけると、自然と読むようになりました。


私が離れていた間に、その人に何があったのか。

それは想像する事しかできません。


そして今でも、時々考えるのです。


私は受け入れられた側だったのか。

それとも、受け入れられなかった側だったのか。


今回の小説にエリアスという人物を登場させたのは、今でもその葛藤が続いているからです。


どうしても、その人を忘れる事ができません。


そして――


「どんな姿になっていても、生きていてほしかった」


その願いを、私はエリアスというキャラクターに託しました。


だから作中では、


「あっさり受け入れられる人物」と、

「理解はしたい。でも、どうしても戸惑ってしまう人物」


その両方を書きました。


本当の私は、きっと前者でありたかったのだと思います。


けれど、「異性になりたい」と告白された時、全く違う方向に考えてしまっていた私は、もしかしたら後者だったのかもしれません。


正解は、もう永遠にわかりません。


その人は、もうこの世にいないのですから。


ここで改めて、ご冥福をお祈りしたいと思います。


そして、ご遺族の皆様のこれからの安寧を願い、この話を締めたいと思います。

念のために書き足しますが、実際のその人とエリアスの外見と中身は全く違います

共通しているのは、「体の性別と心の性別が違っていた」というところだけです。



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