19 結婚式
アンドレア皇太子の瞳は、大聖堂に歩みを進めた私の姿を捉えてきらりと輝いた。
彼は天を仰ぎ、思わず神に感謝の言葉をささやいたように見えた。この仕草は前回にはなかった。
私は父にエスコートされて大聖堂をゆっくりと進んだ。参列者にはザックリードをはじめ、パリ、ロンドン、エイトレンス、ジークベインリードハルト、様々な国の王族が方を並べている。
大聖堂には、前回と同じ顔ぶれが揃っている。
大聖堂の外には、神に祝福されたかのように青く晴れ渡る空の下に大観衆が詰めかけている。先程、私が乗った馬車が到着すると沸き起こった大歓声が、私の胸を打った。その状況には、2回目でも私は思わず胸が熱くなった。
シルクタフタの生地は私の周りで膨らみ、繊細なレースをふんだんに使ったドレスは、前回のヴィーラの皇太子妃としての結婚式でも着たものと、全く同じだ。おとぎの国のお姫様のように、布であつらえた小さな薔薇が無数に縫い付けられたそのドレスは、私をこの上なく美しく見せた。
この世のものとも思えない長いトレーンと、頭に輝くティアラは、父と兄が採掘してくれた小さめのダイヤがそれぞれ30個も付けられていた。特注で今回あつらえられた。
前回の結婚式との明らかな差は、私の頭で輝くティアラとトレーンだ。前回の挙式では、皇后に借りたティアラを使い、宝石も3つしかついていなかった。豪華なトレーンの長さは前回と同じだが、前回は宝石は1つも付いていなかった。
私は、長らく没落の一途を辿っていたメッツロイトン家再建の兆しを、ティアラの輝きで体現した花嫁だ。
前回の結婚式では、皇太子妃は力の消えかかった没落メッツロイトン男爵家の娘で、皇太子にゴリ押しされて選ばれた花嫁。
今回の結婚式では、長らくダメだと烙印を押され続けていたメッツロイトン家当主の素晴らし特殊能力に焦点が当たり、輝きをとり戻しつつある、未来ある事業を急成長させる可能性に溢れた家族を持つ皇太子妃だ。家族が一つになったメッツロイトン家の再興を強くアピールしている。
大聖堂に並ぶ母も、宝石を縫い付けた素晴らしい仕立てのドレスを着こなし、兄と父も立派なタキシードを着て、私を見守っていた。
音波の力を利用して相手の心にメッセージを届ける特殊能力を持つ、オデロー公爵も出席していた。私のビジネス・パートナーのリーヴァイもだ。
アンドレア皇太子が私の指にはめた指輪には、ピンク色に輝く大きなダイヤモンドがはめ込められていた。父と兄から贈られた石で作られたものだ。前回の結婚式で使われた指輪は、ヴィーラの皇室に伝わるエメラルドの石の指輪だった。
「永遠に。僕の愛が続くことを誓うよ。ジェニファー、君にはずっと僕のそばにいて」
私の指に指輪をはめたアンドレア皇太子は、グレーのようなブルーのようなグリーンのような瞳を綺麗な涙で煌めかせ、私に口付けをした。
しっとりとしたキスに私は膝から崩れ落ちそうになった。
前回と同じ挙式なのに、アンドレア皇太子は指を絡めて情熱的に私を見つめている。
「この先、何が起きようと、君を絶対に守る。誓う」
彼が囁くその言葉に、体が震える。
その言葉は真実だ。彼は本気だ。
私の胸にはとてつもない幸せが溢れ、指を絡めた彼の指輪に、私は軽く唇をつけた。
幸運のキスを。
前回より溺愛される展開に、私はめまいを覚えて、彼に優しく抱き止められた。
「ジェニファー、君を離さない」
彼の囁く熱い言葉が私の体を熱くさせた。




