17 初夜の始まり
「君がいなければ、生きていけない気分だ」
彼は信じがたいほどロマンティックな生物のようだ。愛を囁く彼の瞳は、グレーのようなブルーのようなグリーンの瞳で、透き通っている。私はその瞳に魅入られて息をするのも忘れてしまいそうだ。
前回の記憶と今回の彼は、ロマンティックさと愛らしさがパワーアップしている……と思うが、前回も私は彼の魅力に打ちのめされて、あらゆる妨害も乗り越えて行こうと心に誓って、彼のプロポーズを受けたのだ。
彼は私の手に温かい唇を押し付けて、ゆっくりとその唇を私の肩の方まで持ってきた。肩にも花びらのような唇が押しつけられる。
「ジェニファー、結婚式は明日だ。待てない……」
まただ。
前回もこうだった。私とアンドレア皇太子は密かに先に森の中の小さな教会で式をあげた。例の泉のそばに花で飾られた特設会場が作られて、皇帝と皇后だけが出席していた。これもまたロマンティックだった。
前回に漏れず、今日先にプライベートな式をあげた私たちは、もう待ったなしだった。
私の衣装はオーガンジーをふんだんに使った半透明でシアー感のある、エレガントなウェディングドレス姿のままだ。18歳の私の肩は白く、艶やかに磨かれていて、彼の唇が直に押しつけられるスペースがあるほど、艶っぽい肩が剥き出しのデザインだ。
明日の豪華な結婚式で着る、トレーンが長く、布でできた小さな薔薇が散りばめられたおとぎの国のお姫様のようなドレスではなく、今日の私はプライベートな挙式のためだけにあつらえらた可憐なドレスだった。
私は前回の流れを知っているので、そのつもりで備えていた。ウェディングドレスを着て髪飾りをつけてもらう直前に湯浴みを済ませていたので、落ち着き払っているつもりだった。
それなのに……。
アンドレア皇太子の瞳は熱烈な煌めきを放ち、私は彼に見つめられるだけでとろけてしまいそうだった。
私も皇太子も、明日の豪華な挙式のためのリハーサルで疲れてしまい、昼寝をしていると思われているが、実は若い2人のために完璧に準備された寝室で、今、まさに初夜を迎えていた。
初夜という割にはまだ外は明るかったが……。
彼の指先が私の体をなぞり、ウェディングドレスがするすると脱がされていく。私はこのプライベートな挙式のためのオーガンジーのドレスの下にはコルセットをつけていない。
真新しい、この日のためにあつらえらた美しいレースのドレスは、ジェニファー・ロッツメイトンの人生で輝かしい役割を果たそうとしていた。はらりと床に落ちるさまも、弧を描く放物線を描き、とても美しかった。




