火の星に住まう、大炎海の聖なる灼竜が如く。
私は強く踏み出した。自らが望む未来を手に入れる為に。
地も宙も関係無く、赤い残像を残しながらジグザクに飛び回る。
シンボルゾーンに現れた、数えきれない程の朱の流動の鳥居をくぐり続ける。
その度に自分の全能力が上がっていく。
やがて、次元を超えた神聖な炎の量となり、火の鳥みたく神獣めいた魔圧と化して、それを纏いながら奴へ突撃した。
奴は恐ろしい未来を視たのだろう。
体をひどくうねらせ、必死な動きで避けようとする。
朱光一閃――
祓いの渦が奴を飲み込む。
しかし、奴は分身のように残像を残してギリギリ避けきった。
クソッ……
でも……かすった。
奴の王冠が二つ程、砕けたのを感じた。
即座に後ろから悪意を感じる。
ほぼ同時に私は、刀の向きを自己の背後に向けノールックで突き刺す。
また王冠が潰れる感触がした。今度は四つ。
勿論、奴の攻撃は私には届かなかった。
私の判断と実行の速度が奴を上回ったのだ。
ふと、気が付く。
変えられない未来などないのだと。移ろいゆくこの世界で、絶対の事などないのだと。
私は振り返った。
奴は数メートルの位置で私を睨んでいる。王冠は残り少なくなり、体も少し傷んだ状態で「クルルルルル」と唸り続けている。
先程の魔法陣が眩く輝くのが見えた。急がないと、もうそろそろ不死の魔獣が顕現してしまう。
奴は私を見ながら、ゆらゆらと後方へ動き出した。ヒボシがいる方だ。
「させないっ!!!」
私はシンボルゾーンを囲う神聖な炎を操り、奴とヒボシまでの道を連発するフレアで埋め尽くした。
しかし奴は、寸分狂わず、それらを避けてヒボシの元へと辿り着いた。
「ヒボシーーー!!!」
ヒボシの体にスルスルと絡みつき、威嚇する様に私に大きな口を開ける邪悪な存在。
私の背後には巨大な不死の魔獣の気配が膨れ上がる。
「いやああああぁぁぁっっっ!!!!!!」
ヒボシはポカポカと邪悪な存在を拳で叩く。
それに怒ったように、ヒボシを物凄い勢いで締めあげては、頭に噛みつこうとした。
「やーーーめーーーろーーーおおおぉぉぉっっっ!!!!!」
私は朱の太刀を奴の頭目掛けて渾身の力で放り投げた。
ブシュウウウ!!!!!
それは、今まさに噛みつかんとする奴の顎に深々と刺さった。
だが奴はその状態のまま、酷い雄叫びを上げて再度噛みつこうとする。
ヒボシは白く細い手で奴の首元を持った。
「こないでえええぇぇぇ!!!」
青白い格子状の魔術で奴の首元は瞬時に覆われた。
回復魔術……
次の瞬間――
「ゴォルルルルル」
奴は苦しみ出し、のたうち回る。
シンボルゾーンを囲んでいた結界がグラグラ揺れだした。
闇そのものみたいな真っ黒だった奴の首元は白化しだし、ヒボシに噛みつこうとすら出来ない状態になっている。
呆気にとられる私。
「ラクノッッッ!!!今だよっ!!!私達の運命、変えちゃってぇぇぇーーー!!!」
行かなきゃ。
この子が起こす奇跡はいつだって、良い未来に繋がるんだから。
「まぁーかぁーせぇーてぇー!!!」
ほぼ瞬間移動だった。
奴の顎に突き刺さった朱色の太刀を握り、そのままヒボシの隣で一瞬しゃがんで、奴を太刀に刺したまま、こいのぼりみたい上空に飛ぶ。
そのまま、奴を引きずり朱の流動の鳥居を何十、何百とくぐり続ける。
私の朱の魔圧は限界を突破し、火の星に住む大炎海の聖なる灼竜の如く轟き、けたたましい咆哮をあげるように穢れなき虹色の炎で全てを埋め尽くした。
それを最後に、二つの気配が消えるのを感じた。
恐らく、不死の魔獣も顕現していたのだろう。
だが、この場において、忌まわしきモノなど、なんぴとたりとも存在する事はできなかったのだと思う。




