最終回 真実が眠る島、光の時代。
結界は砕け散り、二つの能力が私の体へと入り込んだ。
あぁやっぱりそうだったんだ、あの邪悪な存在の能力は、一瞬先の未来が任意のタイミングで視られる能力だったんだ。
私は地に着地しながら新たに獲得した能力を試していた。
これ結構疲れるね。ちょっと目の奥が痛くなるし。
少し体力を使い過ぎたのか、いつもの戦闘の後みたいに、また意識が遠くなっていく。
だが……
体力が枯渇を上回る速度で回復しているみたいになり、徐々に意識が元に戻ってきた。
それどころか、戦闘で傷ついた体の痛みすら薄らいでいる。
「ラクノーーー!!!!!!」
ヒボシが走ってきた。大号泣でおかしな女の子走りしてる。
「ラクノラクノラクノーーー!!!凄過ぎる凄過ぎるよぉーーー!!!最強過ぎるよぉーーー!!!生きててよかったよぉーーー!!!もう、今すぐ結婚してよーーー!!!」
ふふっ……熱烈過ぎる。
「賛成。私もヒボシと結婚したい」
私はまだフラフラしながらも微笑んで言った。
「あっ!手、大丈夫!?回復させないとね!」
ヒボシは私の破損した手の方の腕を持ち上げた。
「え???あれ???あれれ???」
ヒボシはチンプンカンプンという顔で私を見ている。
私は元に戻った指を折り曲げて言う。
「私も不老不死なったみたい……ふふっ」
ヒボシは大きく目を見開き叫び出した。
「ずっと一緒にいれるじゃんかぁーーー!!!」
ぴょんぴょんぴょんと跳ね飛んで喜び、何度も抱き着いてくる。
「イタイイタイ、ちょっと落ち着いてヒボシ。帰ったらいくらでもいちゃつけるんだから」
そう、私達には時間はいくらでもある。
「約束ね!今日はもう私のターンだからね!!?」
ターンって何よ?
ヒボシはそう言った後、「あっそうだお茶」と言って、飲み物を渡してくれた。
美味しい。
流石に、あんな炎の中にずっといたから喉が渇いてたんだ。
ふふっ、それもおかしいけど。
あっでも、おかしくないか……
だって私……
一瞬色んな事が視えた。あの、夢の島の記憶も……知らない能力も……
えっ……
何?今の。
「どしたのラクノ?」
「いや、なんかね、他にも能力獲得してる気がするような……というか、呼び覚ましたみたいな……」
私は天を見上げた。気が付けばあの黒く淀んだ雲は消え去り、もうそろそろ夕方になろうとしている。
「これ以上強くなったらラクノもう神様じゃん」
ヒボシはケタケタ笑う。そんな大袈裟な。
……ホントに、大袈裟なのかな?
「そう言うなら、ヒボシだって」
あの大妖魔が総出で倒すような邪竜の力を無効化させたんだから。
「私はただの女の子だよ。リュックの大きい女の子!!」
ヒボシは振り向いてリュックを大きく揺さぶり笑っている。かなり気に入ってるんだね、その格好。かわいいよ。
「取敢えず、疲れたし帰ろっか?」
今は何も考えなくていいや、十分やる事はやったんだから。十分過ぎるくらいに。
でも、巫女の女の子達が助かって本当に良かった。いつか会えるといいね。何処かで幸せに生きなよ?
「うん、帰ろ帰ろ。もう、お腹ペコリーニョマスターだよ」
ヒボシのお腹がグルルと鳴った。まるであの邪悪な存在の唸り声も霞むぐらいの、ブラックホールみたいな音。
「音、大きすぎない!?」
私はお腹を抱えて大笑いする。
「待って、今の無し!変なイメージ持たないでねダーリン?」
「一応恥ずかしいんだ。わたしどんなひぼしでもすきだけどなー」
彫刻の道を抜けながら楽し気に歩く私達。
「じゃあ全部見せちゃおっかなぁー……」
「でた、えっちぃよヒボシ、あんな戦いの後に」
木々も祝福する様にささやかに揺れる。
「全部って、弱い気持ちとかの事だよラクノ?あんな戦いの後なのに、ラクノちゃんはホントえっちぃよ、出会ったすぐからえっちぃかったし」
「ふはははははっ、もうやめよこれ、あたしら最近下ネタ多いって」
この子といるとホント楽しい。出会わせてくれた神様、本当にありがとうございます。
「だね。もっと政治の話とかしなきゃね!」
ヒボシは私の前を楽しそうに歩きながら言った。
「それはパス、アニメとかで」
私はそう言いながら、ヒボシのリュックを持ち上げる。
「あれ?リュック消えた?」
ヒボシは不思議そうにキョロキョロしている。
「磁石星の磁石人間の仕業じゃない?ほら、ヒボシ、方位磁石持ち歩いてるし、よこせーってキレてるのかもよ?」
「えーーーん、磁石持って無いよーーー!!!(二個しか)」
懐かしいなこのやり取り。もう、大分前の事に感じるよ。
あの時辺りから、ずっと幸せだった……
その時――
突然それは起こった。
私とヒボシを囲むように、光の円が現れた。
「なにこれ……」
「え……」
逃げる間も無く私達は、その光に身体が包まれた。
私達を包む光が弾けて消える。
「今の何……?」
ヒボシは眩しさで閉じていた目を開けて言う。
「ここは……」
私はその光景を見て、既に驚愕していた。
そこは……
どこまでも続く穏やかな海に囲まれた孤島。
しめ縄と紙垂でぐるりと囲われている。
「え……怖いよラクノ……ここ何処?」
ヒボシが私に抱き着きながら震えている。
「私の夢に出て来た場所とおんなじ所だ……」
とても清らかな場所で、何一つ邪悪なモノは無い場所。
「じゃあ?夢の世界?」
ヒボシはあちらこちらと観察している。
私は目の前を見上げた。
千年樹で出来ているような特大な鳥居がそこにはあった。
「違うと思う、現実にある場所のはず。感覚がそう言ってるし。よく思い出したらここに来たことだってある気がする……」
「転移したのかな?私達?」
ヒボシが言った。
「かもしれないね……」
「なんでだろ?」
ヒボシはこの場所の清らかなエネルギーに反応してか、次第に落ち着いてきた。
この場所はとても清浄な魔のエネルギーに満ち溢れ、居るだけで心がとても落ち着き、穏やかな幸福が得られる不思議な場所だ。
まるで……
「何かの条件が揃った……とか?」
私は無意識にそう呟いていた。
「あ……そんな感じするかも」
ヒボシも何かを思い出したかのような顔をしている。
私達は鳥居の前にある、島の半分の大きさの伽藍とした神社の本殿のような場所を眺めた。
入る事は許されない。誰も立ち入ってはいけない様な禁足地みたいだ。
でも……私達なら。
「ねぇヒボシ……何を知ったとしても、何があってもずっと一緒にいようね?」
私はヒボシの手をギュっと握る。
「勿論だよラクノ……世界が恥ずかしくって真っ赤になるような二人の愛の歴史紡ぎまくってやろうよっ!」
笑顔で顔を見合わせる。
ありがとう。
そして私達は二人で足並みを揃え、目の前の真実が眠るであろう場所へと足を踏み入れた……
「そういう事か……」
「そういう事だったんだね」
……
「ちょっと……」
「何?」
「恥ずかしい……」
「わかるー!」
「久しぶりだね」
「チュッ」
「うわぁ!」
……
「転移は?」
「戻ったよ、すぐ使える」
……
「この後どうする?」
……
……
「光の時代を……」
「だね!」
……
「愛してる」
「ふふっ」




